出張整体師はみた! 老紳士のご要望

前話: 出張整体師はみた! ドクターのお客様
次話: 出張整体師はみた! 捨てられない物
夜の深い時間には珍しい年配の男性からのご依頼がございました。
とあるベイエリアのマンションからでございます。

到着いたしますと、
70歳前後位で非常に目力の強い笑顔をたやさないご主人
が、玄関を開けて迎えて下さいました。
奥様とお二人で交代でお受けいただくとの事です。

最初は奥様で、すでにベッドでお待ちになっていらっしゃって
おりいました。
50歳代位の極々普通の奥様でございます。
いつも通りに、簡単に不調箇所等についてお聞きしてから施術を
開始させていただきました。
しかしながら、いつもと違う違和感を感じます。

施術をさせていただいているベッドの片隅にご主人がずっと腰掛けて、
相変わらず目力の強い笑みを浮かべているのです。
不思議に思いながらも、施術に支障のある位置ではないので、
そのまま続けておりました。
時折、普通の世間話を挟む、そんな感じで・・・

中盤頃に肩周りの施術をさせていただいていた頃です。
ご主人が奥様の腰の横の辺りに移動しました。
そして唐突に奥様の臀部、分かりやすく言うとお尻全体鷲掴みにして

「ここを揉んでやってくださいよーっ!
こうやってーっ!
お前これが気持ちいいんだよなーっ!!」

と一段と強めた目力の笑みでおっしゃっています。
奥様は

「ちょっとやめてよ!!」
と強く拒否しています。小生は内心非常に驚いていましたが、
なんとか顔色を変えずに通常の施術をつづけておりました。
奥様に拒否されて、一旦は引き下がったご主人ですが、
少しばかりの間を開けて、脇腹であったり耳であったりと
似たような事をして、奥様に拒否されて引き下がる・・・
これを懲りずに続けていらっしゃっておりました。

数回繰り返した後、今度は体勢を変えて仰向けの
奥様の腋辺りから胸に手をつっこんで。

「ここもいいんだろ!ここもやってやってくださいよーっ!」
とはちきれんばかり笑顔でおっしゃいます。
しかし、

「やめてって言ってるでしょ!!!」」
と、さすがに本気で怒った奥様の強烈な平手打ちでご主人
ベッドから転落してしまいました。
「ケチ。いいじゃねえか・・」
何がケチなのかは分かりませんでしたが、
ご主人はニヤニヤしながら寝室から
退室してしまいました。
奥様が

「本当にすみません。」
と小生にお詫びされたのに対して、悟られないように笑いをかみ殺して
「いえいえ」
としかお答えできなかったアドリブの効かなさが悔やまれます。
数十分後、ご主人の番でございます。
リビングに出したお布団でとの事でした。
少々の不安を感じましたが、通常通り簡単な質問から施術に入りました。

少し経った頃に気が付いたのですが、部屋の片隅にハンガーにかかった
白衣が吊るされております。
同業、類似業者でお客様としてお呼びいただく方も時にはいらっしゃいます。
しかし、先ほどの奥様の番の時の出来事からは、とてもそうは思えません。
非常に気になりながらも、なかなかお聞きする踏ん切りがつきません。
本当の所はどうなのか?想像もできないようなとんでもない事情が
おありなのか?
「白衣がございますが、医療関係のお仕事をされていらっしゃるんですか?」
迷いに迷った挙句、結局普通すぎる質問をしておりました。
「あーあれね。□×駅の近くで歯医者をしてるんだよ。」
施術をお受けになってリラックスしてきたご主人はおっしゃいました。
「なるほど!歯医者さんだからあーいう感じで・・・」
とは一切思うはずもございませんでしたが、特に嘘をついたり、
からかっている様な様子もございません。
□×駅の近くに小生が以前に住んでいた事があったのもあり、
その後は、その周辺の世間話をさせていただきながらの施術となりました。
その後も危惧していた不安も杞憂に終わり、無事終了致しました。
初回が強烈で、もしかしたら、ご要望に半分お答えできていないかも
しれないと思っておりましたが、お引越しになられるまでの数年間、
定期的に呼んで下さいました。
一回目こそ驚かされましたが、二回目以降は、非常に穏やかでいらして、
ご主人のお好きな、深夜に放送される古い映画をご覧になりながら施術を
お受けになっていらっしゃいました。
堅いと思われているお仕事の方でも、色々である
と、また一つ勉強させていただきました。


※ここまでお読みいただきまして、誠にありがとうございます。
読んでよかったと思っていただけましたら、このページと共に、初回の
にも「読んでよかった」を押していただけれると嬉しいです。
大変恐縮ではございますが、どうぞ宜しくお願い致します。
また、出版等のお問い合わせは
足利忠宛にお願いいたします。

続きのストーリーはこちら!

出張整体師はみた! 捨てられない物

著者の足利 忠さんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。