Chapter2.女に捧ぐ

著者: 高津 諒
女のことばかり考えている
起きて、女、食べて、女、寝て、女
つまり過去 未来でも今でもない
刹那、一人だと気付く
切なげな彼女たちの表情が廻る
俺のせいじゃない 紡ぐはずがほつれた糸
こぼれた水は いつか水面に輝くだろう

みんなどこいった
俺はここにいる 変わってねーよ
変わったのは季節だけ
もう傷つく部分すらねーかもね
形を成さなくなっちまった
あいつは酒の勢い まいっちまった
掴んだと思ったら いつか雛は飛び去る
残された者は 巣作りしたてのベッドにうずくまる
悲しみ、つらさ、傷ついたと感じても
涙は出ない 絶対に
ただ、優しくされると 誰かの胸に抱かれると
涙が流れちまう 確実に
繋がりを求めても 運命の糸とやらは 目には見えず
思考の奥に息づく記憶 耳を澄ませば吐息を感じ 
空っぽの天井に 愛した姿を浮かべ 独り毒づく
おまえは一体誰だ 何が欲しかったんだ ってね
かしづく冬の匂い 首をもたげた春の色
泣き叫べば戻ってくるのかな 流れた過去は
そんな事する男じゃねーからさ 元々出来るわけもない
だから グラスに酒を満たして 乾杯してくれないかな
互いに 空っぽの身体持ち寄って
飲みすぎちゃったって 知るかよ

愚か者って言うけどな
人は皆 愚かな一面を持ってるもんさ
結婚しつつ 他にうつつを抜かす奴
職に就きつつ ただ漫然と過ごす奴
野心がありつつ 余計な事に首突っ込む奴
ファーストフードばっか食べる奴
誰かを犠牲にし 生き永らえる奴
ならさ
俺のたった一つの 愚かな行いくらい
大目に見てくれないか
代償は毎日払ってんだからさ
お前ら 俺の大家でもなんでもないんだからよ
ふと電話を眺めると 彼女たちのアカウント
コンタクトはやめたんだ 目が痛むから
潤ってるから 俺の目は いつの日からか
眼鏡にかかった奴はいたかい 君たちは
男を自由にほっとける女が偉大って 言うだろ
ならば 確かに偉大だよ お前たち
振られる事に傷つくよりも 振られた自分に傷ついた
ああ、俺が愛した女どもよ
悪い事したね 俺のせいだろうな
知ってんだ 俺は 俺自身に傷つけられたって
いつか 愚か者が 虹を描くだろう 輝く水面の上に
つまり、ここでいう女って 女の事じゃないんだ

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