【22】痛みと温度が同居した日 ~求めたモノは与えたかったモノ~
行先はどこですか
どこまでの切符を買っていますか
目的地までは この金額が必要ですよ
荷物は 別料金必要です もっていないのですか
途中 トランジットするなら 予め教えておいてくださいね
それから 手に持っているモノはなんですか
身分証明は必ず みせてくださいね
うるさいヤツ
この人には見えないのだろうか 手をつないでいる子供の姿が
身一つで なぜ乗ってはいけないの
わたしが私である為に どんな証明が必要なのですか
わたしが思ったソレは きっと 娘も思ったことだろうか。
なぜ そのままの彼女を認めることができなかったのか
なぜ 条件を付けなければいけなかったのか
なぜ こんなにも毎日が退屈に感じられたのか
なにを 必死に守りたかったのか
やれることは やったし
毎日の色々はちゃんとこなしていました。
お部屋はいつもきれいだったし そして食事もちゃんと作ってた
外にも一緒に散歩に出たし 手もつないだ
でも どうしてだろう
何かが違うって思った
こんなにも近くにいるのに
まるで わたしには無関係に思えたのです
無機質に思えて仕方なかった
わたしが手をつないでいるこの子は 一体・・・・。
わかっているんです
どうしたら そこから抜けられるのか
でも 抜けようとしないのは何故なのか
それと向き合うのが怖かったように思います。
そんなあるトキ 友人からの電話が鳴った。
「元気?」
わたしは笑って「元気だよ」って答えた。
その一声だけを聴いて
友人は「明日、行く」そう一言だけ言って電話を切った
翌日、友人はほんとうに遊びに来てくれました
昔からよく遊んでいた友人
わたしが心を許している数少ない大切な人
友人が海を見たいと言うので
娘を連れ、3人で江の島の方へと車を走らせました
友人は子供と遊ぶのが上手だって知っていて
バックミラーには
わたしの娘と楽しそうに遊ぶ姿が映った
そして 娘の高い笑い声が響いていました
こんな風に笑うんだ、この子
ほっとしました 心からホッとしたのを覚えてる
わたしにできないことを 代わりにやってくれた友人に感謝しました
海に着く頃には 娘は遊び疲れて寝ていまい
もう日が沈みかけていて 真っ赤な空がそこにはあった
友人は車から降りると その足で 塀にのぼり
両手を鳥のように大きく広げ 深呼吸をし そして腰かけた
さっきまでとは別人の友人がそこにはいた
ただ 沈黙し ただ そこにいた
やっぱり 画になるなって思ったのを今でも鮮明に覚えている
どれくらいの時間 そこにいたのか
沈黙は永遠に感じられました
海の風はすこしばかりひんやりしていて
でも 温度を感じられる赤い空と 目の前に見える景色に救われた
この人のすごさは 何も語らずとも与える人だと思ったこと
何の理由も 何の証明も わたしに必要としない
そして 海に連れ出してくれた
その背中を見ながら
なんだか色々が恥ずかしくなって 悔しくなって
まだ できるって思って
色々が痛みになってわたしに迫ってきた
わたしの目には涙が 自然とあふれていました
着ていたパーカーのフードを深くかぶり
俯いて声にならないように必死だった
友人は気づいていても 決して振り返らず 海を眺めていました
そういう人だって知っているからこそ 余計に涙があふれた
わたしが求めていたモノはこれだった
そして私が求めたことは 与えたいモノであることに 気づいたのです
それはとても 人の温度を感じられ やさしさいっぱいで
コトバでなど表すことのできない 愛だった
生きていて本当に良かったって思い
こんな友人がいる自分を誇りに思いました
これがわたしの人生で3度目の痛みと温度が同居した日
生きる力を借りたから
生きている内に返さなきゃ ってそう誓った日でもありました
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