絵本は心の拠り所 その2
前話:
絵本は心の拠り所
次話:
絵本は心の拠り所 その3
ただ読むだけ,それだけ
朝読書のやり方,これはとてもシンプルだ。全員が本を持ち寄り,決められた時間,読書に没頭する。“没頭する”のだから,私語はなし。もちろん,立ち歩きもなしだ。 私ははじめから,読書の力を信じたわけではなかった。しかし他に打つ手のない私は,とにかくなにか行動を起こさねばという焦りを感じていたから,とりあえずは朝読書に取り組んでみたわけだ。
説明できない…
効果はなんと,初日からあらわれた。子どもたちが,あのうるさかった子どもたちが,ひとこともことばを発さず,読書に没頭している。私は朝読書の注意項目に〔私語はなし〕と書いてあったことを思い起こした。そうだ,あそこには〔私語はだめ〕とは書いていなかった。朝読書中は,私語なんて出ないんだ。私は新鮮な感動に雪がれていく自分を感じた。 その後数ヶ月間,朝読書の取組は続いた。学級はすっかり落ち着きを取り戻し,季節は秋,研究授業のシーズンに向けて進んでいた。
私はその年,授業研究の一環で,授業を公開することになっていた。学習指導案を作り,同僚に意見を求めた。私は自分の学級経営から朝読書は切り離せないと感じていたから,指導案の〔学級の様子〕の項目に,朝読書のことを記した。
すると早速,同僚たちから質問が飛んできた。
「この,“朝読書”というのはなんだ?」
「なんでこんなものが,指導案に入る?」
私は説明しようとしたが,できなかった。なぜなら,朝読書が効果を上げたのは紛れもない事実だったとしても,その効果はなぜ生まれたのか,そういうアプローチをしたことがなかったからだ。
事実がわかり,涙した私
しかしどういわれようとも,我が学級と朝読書は切り離せない。だからどうしても指導案には載せたい。しかしそのためには,児童の実態への科学的なアプローチと,朝読書に関わり説得力のある調査と考察が必要だ。 そう考えた私は,子どもたちに思い切って尋ねてみることにした。昔のことで悪いが,朝読書が始まった日,なんでみんな静かだったんだ?,と。
衝撃だった。子どもたちから返ってきた答えは,私にガツーンと来た。そしてその後,私は泣いた。己のバカさ加減に涙したのだ。
あなたの親御さんの人生を雑誌にしませんか?

著者の森内 剛さんにメッセージを送る
メッセージを送る
著者の方だけが読めます