モロッコのマラケシュで「ザ・ワールド」をやった話。

前話: 医学生がなぜか休学してアフリカを旅した話。
次話: 人生初の入院をエジプトで迎えた話。

祭りの街・マラケシュ

ノープランで始まったこのアフリカ放浪、最初に訪れたのはモロッコのマラケシュという街だった。
モロッコでは街が旧市街・新市街に二分されているのが通例で、安宿は大抵、旧市街に位置している。ここマラケシュもその例外でなく、複雑に入り組んだ、ディズニーのアラジンを彷彿させるイスラム路地が迷路のように広がっていた。

夜には橙色の街灯が点々と灯るのだが、これがまた実に良い雰囲気を醸していて、眠りについた路地裏を夜な夜な一人歩きし楽しんだ(一度シェパード犬みたいな野良犬に襲われかけた)。

そんなマラケシュの旧市街中心部には、学校のグラウンド程の大きさの広場がある。そう、かの有名なジャマエル・フナ広場だ。日中は市民の憩いの場で、大道芸人やオレンジジュース屋台が軒を連ねているのだが、夜になるとどこからともなく屋台骨が立ち始め、気づけば毎晩毎晩縁日のような騒ぎになっている。ここは祭りの街なのだ。



出会い、そして『ザ・ワールドinマラケシュ』

西アフリカ縦断を終えたリキさん、ザンビアインターンしていたサクラちゃん、美人研究員の姉さん、そしてムスリムにゲロ掃除させた男・シンちゃん。偶然に偶然が重なり、そんなファンキーな仲間たちとマラケシュで出会い、さらに我々はジャマエルフナ広場でハッピーテロリズムな企画をした。

それが、「ザ・ワールドinマラケシュ」である。

事の発端はリキさんがシンちゃんに見せた、とあるYouTube動画。ニューヨークやロンドン、パリや東京といった都市で突然道行く人がストップし、周りの人々をドッキリサプライズさせる様子をビデオに収める、というものだ。
これ、マラケシュでやりましょう
彼のその一言から全てが始まった。

企画準備開始

宿の屋上のテーブルにはビールとエスカルゴ。リーダーのしんちゃんによるプレゼンが始まった。続いて役割分担や作戦の日程を決めた。

さくらちゃんがファイナンシャルプランナー(会計担当)、りきさんがスペシャルカメラマン(映像担当)、しんちゃんがリーダー(リーダー)、姉さんがセクシーインヴェスター(セクシー投資家)、そして僕がネゴシエーションスペシャリスト(交渉担当)だ。至って本気である。

そして迎えた作戦初日

10時に集合すると、リーダーがアラビア語で企画が書かれた看板と、ビラを100枚用意していた。早速フナ広場の真ん中に腰を下ろし、炎天下、ビラを配り宣伝する。目標は100人。100人が突然止まる様子をりきさんがカフェの屋上から撮影する作戦だ。
途中、集客効果上げようぜ、ってことで僕がギターをとりに宿に戻り、帰ってくると皆の姿が見当たらない・・・と思ったらめちゃくちゃ人に囲まれてた!近くでパフォーマンスしていた音楽家から通りすがりの地元の人までが、広場で1、2番に大きな人だかりをつくっていた。
想像以上の反響にメンバー全員に「これはいけるんじゃないか」と希望の光が差し込んだ。100枚のビラは既に配り終え、しんちゃんはもう100枚コピーしに走った。



まさかの補導

人だかりに向かってビラ配りや企画の説明をしていると、ニュース記者を名乗るモロッコ人がやってきた。

「メディアがきた!」、興奮する僕とリキさん。さっそく記者に着いて行くと、突然横から別のオッサンがでてきて、ただ「来い」という。
「ははーん、こいつも記者かなんかだな、取材くらい受けてやろう」と、オッサンに従う僕とそれをカメラに収めるリキさん。

しかし連れて行かれたのはモロッコ旗の掲げられた建物の中だった。中の人々の様子もなんだかおかしい。リキさんがカメラを没収された瞬間、「あ、警察か」と気づいた。不覚である。
その後はアラビア語訛りの英語でまくしたててくる警察の男とガチ口論を繰り広げた。
オッサン
No!!Listen to me!!
No!!YOU listen to me first!!

どうやらビラに書かれた「明日集まって何かやります!」というアラビア語文面が悪い意味で解釈され、王様によるやや独裁制のモロッコで、それは反政府的な決起か何かと受け取られてしまったようだった。
激しい口論の末、まず何をするにも警察の許可が必要なことがわかった。すごく盛り上がっていた矢先だけにショックが大きいが、タジンを食べながら作戦を練り直す。
ビラや看板を使った宣伝が禁じられたのは大ダメージである。結局、「正攻法でいこう」というリーダーの決断で、警察署を巡る旅が始まった。

たらい回しの6時間...

がしかし、これが難航。ホントに困難を極めた。
まず土曜日だったためか、オフィスが閉まっている。空いている他の部署に行っても許可はもらえず、やっと担当に会えたと思ったらたらい回し。しかも月曜にならないと許可は出せないと言う。結局午後の6時間を無駄にした。
しんちゃんのテンションはだだ下がり。皆に疲労の色が見える。もはや続行は不可能かと思われたその夜、リーダーの口から出た言葉は、
やりましょう、強行です

だった。下手すると警察に捕まるかもしれない。だがここまできて止めるわけにはいかない。月曜まで待てばあるいは許可がおりるかもしれないが、時間は限られている上に、既に多くの人に「明日の4時にフナ広場!」と宣伝してしまっている。引き返すわけにはいかない。そう覚悟を決めた。


ついに作戦決行日

そして翌日、作戦決行日。
ゲボ吐きそう・・・

(しんちゃんの)緊張と疲労はピークに達していた。

2時ころからビラなしでこっそり宣伝を始める。日曜日のためか、心なしか人が多い。りきさんはカフェの屋上を陣取りカメラでその様子を撮影することになった。
前日ほどでないにしろ、20人くらいに声をかけることができた。だが、案外好感触だったにも関わらず、宣伝班は不安を抱えていた。
昨日くるって言った奴らを見かけない・・・
昨日くるって言った奴らを見かけない・・・


もちろん昨日話した全員を覚えているわけではないが、「コイツは絶対くるだろ」的な要人たちの姿が見えない。時間が経つにつれて不安はますます大きくなる。作戦30分前の3:30になったが、まだ人が姿を見せない。



そして遂に4:00

指定の場所に集まったのは、偶然であった日本人4人と、現地人3人、欧米人2人。あまりにも少ない。想定外のケースに戸惑いの色を隠せないメンバー。
「もしかしたらアフリカンタイム的なアレで、時間にルーズなだけかも」
そう思い、いや、そう信じて30分待つが、何も起こらない。
どうするどうする・・・
迷った挙句、リーダーが出した結論は、「集まってもらったメンバーだけでもやろう」だった。ただ、あまりにも人数が少なかったのに加え、屋台の骨組みが予想外に早く広場に出てきたので、全員で大きな輪を作ってストップすることに。
集合場所から広場へ行き、輪になり、近くを通った人も無理矢理混ぜて、リーダーの笛でストップ!かなり目立つのか、通り過ぎる人が皆じろじろ見ていた。
2度目の笛の音でストップは終了。協力してくれた方々にお礼と謝罪。

残念ながら本作戦は想像していたような成功を収めることができなかった。「いける!」と思った瞬間があっただけにショックも大きいが、学んだことも多かった。
失敗した要因は色々あるだろう。警察とのいざこざであったり、モロッコ人への説明不足であったり、etc...
だが、「やるかやらないか」という単純な壁をひとつぶち壊せたこの経験は大きい。これを次に繋げていければそれで良いんじゃないかなと、個人的には思う。




ザ・ワールド計画を終えて

…と、ここまで一連の流れを書き綴ってみたが、なんだか右肩下がりの楽しくなさそうな感じになってしまった。
が、実際はクソ楽しかった!この企画をガチでやろうと思わなければ、毎晩ビール片手に作戦を練ったりはもちろん、フナ広場でチラシを配ったときに、いつもは商売の話しかしないモロッコ人と一緒に大笑いすることもできなかっただろう。

交通の便がよく、ホテルも多い、世界遺産のマラケシュはいわゆる観光都市だ。欧米人ツアー客が30人くらい列を成して歩いてるのも珍しくない。それもあって、最初はあまりマラケシュに長居するつもりはなかった。これから1年アフリカを回る僕は土産を買うわけにもいかないし、そもそもあまり人が多い場所は好きじゃない。
マラケシュに1週間滞在し、「ザ・ワールドinマラケシュ」を実行し、それらを通して僕が見つけたマラケシュ最大の楽しみ方は『フナ広場で何かする』ことだ。
企画の反省会をしたその夜、ギターをかつぎ、フナ広場の真ん中に座って弾き語りをした。「何してるんだ?」と、少しずつ人が集まってくる。ある程度人数が集まったら、綺麗に輪を作らせ、4人で日本語で歌いながら踊り狂った。
「ニッポン!!!ニッポン!!!オッパイ!!!オッパイ!!!」、そんな雑すぎるシャウトにすら、何人かはノってくれて、手拍子や合いの手をくれる。

欧米人なんかからは冷めた目で見られるがそんなの気にならない。ここはお祭りの街マラケシュ。祭りは参加するから楽しいんだ。外野じゃなくて、中に飛び込むこと。
歌だって踊りだってカンフーだってただサンダルで床を叩くだけだって、なんだっていい。必ず人が集まってくる。それがマラケシュ・フナ広場の魅力であり、最大の楽しみ方なんじゃないだろうか。そう感じた。


結論

フナ広場でビラを配る際は要注意です。

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