天国のおじいちゃんに向けて歌う認知症のおばあちゃんの話

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訪問営業で出会った元気なおばあちゃん

僕は今年から訪問営業の仕事をしています。
元々、人見知りで臆病な性格なので訪問営業には抵抗があり、全く好きにはなれなかったのですが、今年の秋に出会った一人のおばあちゃんのおかげで訪問営業をやっていて良かったなと思えた僕にとって良い思い出の話です。


すっかり寒くなってきた11月の半ば、滋賀県の彦根市でいつも通りに地図を片手に一軒家の訪問営業をしていました。
在宅状況も良くなく、営業どころか誰とも会う事もできなかった昼過ぎ、少し肩を落として住宅街を歩いていると、玄関先に綺麗な花が植えられた鉢が並べられている綺麗な家をみつけました。
家自体もすごい大事にされてるんやろうなと思う程綺麗に掃除されてあったり、リフォームしてあるような感じでした。
『どんな人が住んでるんやろうか。』
なんて思いながらインターホンを押したのですが、2回鳴らしても誰も出てこない。
けど、耳を澄ましてみると話し声が聴こえてくる。よく聴いてみるとテレビの音でした。
『誰かがいてる。』
家の前の綺麗な花といい、周りの家に比べ一際綺麗で大きな家だったので住んでいる人に会ってみたかったので、鍵がかかってなかった玄関のドアを開けて
「すいませーん!」と叫んでみると、

「はーい!」
と奥から元気な返事が聞こえた後、少しすると、小走りでおばあちゃんが出てきてくれました。
玄関まで来るとすかさず僕は挨拶をし、営業をはじめました。

訪問営業ですんなり話を聞いてくれる人はほんの一部の人で、最初から心を開いて聞いてくれる人なんてまずいない。
しかし、そのおばあちゃんはすごくニコニコしていて時折うなずきながら快く話を聞いてくれた。
さすがにおかしいと思ったので、一度世間話をしておばあちゃんから何か話してもらおうと思いました。

最近急に寒くなりましたねー。
おばあちゃん
そうね。玄関は寒いでしょ。中にストーブあるから入りなさい。

おばあちゃんは小走りで奥に入っていきました。
さすがにいきなり家にあがるのには抵抗があったのですが、おばあちゃんが戻ってくる気配がなかったので、渋々お邪魔させていただきました。



何度も繰り返される話

『もしかしたらボケてるのかな?いや、すごい元気なおばあちゃんやし、そんなわけないか。』
そんなことを考えながらおばあちゃんに誘導されリビングのイスに座らせてもらい、話の続きを話そうとすると

おばあちゃん
この家は私一人なの。息子は少し離れた所に住んでいて孫もいるのよ。
え?そうなんですかー。
おばあちゃんから自分の話をはじめてくれました。
家の中も綺麗に整理されてあるし、部屋も多くて一人暮らししているようには見えなくて一人暮らししていることにびっくりしました。
話し続けるおばあちゃんの話を聞いてるとおばあちゃんは今年92歳だそうで。
それにもっとびっくりしました。
さっきも小走りしていたし、まず見た目が92歳には見えない。テーブルの上にはウイッグとマスカラ、口紅、ファンデーションと立て鏡が置いてあったので、ついさっきまで化粧もしていたんだと思いました。

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