最初で最後の"さがしものがかり"

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恐らく登校中に落としたとのこと。
学校からその子の家までは15分ぐらいの距離。
学校の外のことなので、先生から下校の時にみんなで探しながら帰ろうという結論が下された。

もし僕ではない誰かがみつけたら"名探偵"の名が廃ってしまう。そして、好きになってもらえるチャンスを失ってしまう。

そんな危機感を覚えた僕は"おわりの会"が終わった瞬間に誰よりも先に正門をくぐり、学校を飛び出して女の子の家までの道を逆走していた。
なんとしても見つけ出さないと。動機が不純だろうと僕はただただ必死だった。


全くみつかる気配もなく、気づけば女の子の家の前に着いていた。
途方に暮れて歩いている背中を照らす夕日でできた影はいつもより切なく感じた。

がっくしと肩を落としながらも、もう一度学校の方へ戻りながら溝や草むら、自動販売機の下まで覗いてみたがどこにもキーホルダーはない。


それもそのはず、後日発覚したのですが、女の子が失くしたと言っていたミッキーのキーホルダーは女の子のポーチに入っていたのだ。
登校中にキーホルダーがちぎれてしまい、落ちたキーホルダーを拾い、ポーチにしまっていたのでした。
女の子はそんなことを忘れて大騒動を起こしていたのだ。


みつかるはずのないキーホルダーを探し数時間。
もう誰もが諦めて家に帰っただろう時間も僕は一人でひたすら探していた。

いつの間にか日は沈み、辺りは真っ暗になっていた。
18時を知らせるどこからともなく流れてくる音楽は遠く昔のことのように感じながら、もはや学校の区域外の公園の遊具の下を探している時、眩しい光が僕を照らした。


その光の先に立っていたのはおまわりさんと母親でした。
門限の18時を越えて20時になっても帰ってこない小学4年生の僕を心配して近所の人みんなで探していたそうです。



そうです。


いつの間にか、"名探偵"を気取っていた
"さがしものがかり"の僕自身が




"さがしもの"になっていたのです。






翌日、夢中になり過ぎた僕に、これ以上の迷惑をかけないようにと先生から
"さがしものがかり"解雇命令が下り、僕は自分の係を"なくしてしまいました"。


どんな物でもみつけることができた僕でしたが、
"名探偵"と呼ばれてクラスの人気者になっていたあの頃を越えるなにかを"みつけることができず"に終わってしまった小学4年生の時の"最初で最後のさがしものがかり"の話でした。




夢中になるのはいいけど、自分を見失わないように。





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