母を自宅で看取り天涯孤独になった瞬間の話。⑪ その後

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2003年9月10日 1時30分~  After time


息を引き取った瞬間今まで堪えていた涙が一気に溢れた。
声を上げて泣いた。
自分でもびっくりするぐらいすぐに泣けた。
この瞬間の感情は一言で容易に表現できる。


「絶望」

祖母が起きてきたので一緒に「ご苦労様、お疲れさん」と声をかけあいながら母の体を拭いた。
祖母も急に元気がなくなっていた。
訪問看護ステーションには連絡だけして、担当医には朝に来てもらうことにした。
別にすぐに来てもらう必要がないので、このまま最後に一晩母と一緒に時間を過ごしたくて。
電話を切ったら、母が生前死んだら着せて欲しいと希望していた着物を祖母の家に取りに行く。
母と祖母の最後の2人きりの時間を作ってあげたくて。
そして自分も一人になりたくて。
祖母の家に着物を取りに行ったその帰りの車の中でヒロに電話をした。
ヒロが電話に出た途端もう堪えきれず、何も話せないまま泣いて泣いて泣いて泣いて泣いて泣いて、泣いた。
人生における全ての悲しみを一気に受けたかのように号泣した。
声を上げ、子供のようにわんわんといつまでもいつまでもいつまでも泣いた・・・
ヒロも一緒に電話口の向こうで泣いてくれた。
それを受けてまた号泣する。
周囲を気にすることなくいつまでも・・・
30分以上2人で泣き続けていたら、少しすっきりしてまたがんばらなくちゃと思えた。
そして何より、俺は決して一人じゃないんだと勇気が湧いた。
帰ってから今後の予定を祖母と話し合った。
生前の母の意向を汲んで身内だけで密葬することに決めていた。
喪主は俺だ。
頭も体も興奮しすぎて眠れる気配はない。
とりあえず体を綺麗にしたくて、まずはシャワーを浴びた。
お湯と共に色んな感情を洗い流す。
気持ちを引き締める。
しかし、ふと気を緩むと涙がこぼれる。
思った以上にかなり動揺しているのがわかる。
ふらふらするが、倒れるわけにはいかない。
朝6時まで待って、母が自分で作った「死んだ後連絡をとって欲しい人リスト」に従い電話をした。
丁寧に母の死を伝えようと心がけた。
皆それぞれ母の死を悲しんでくれた。
密葬ということを伝えると母の友人はすぐにご理解してくれたが、本当に残念そうで寂しげだった。
もう自分がきちんとしないとだれも助けてくれない。
だから、失礼のないように心がけた。
朝早くからあちこちにばたばたと連絡し、一段落するとまず担当医がきた。
担当医も一応死亡確認したが、死亡診断書には俺が看取った1時30分で記載してくれた。

それが、自分のこれまでを認めてもらえたようで嬉しかった。
訪問看護ステーションの所長さんもすぐに来てくれ、冷蔵庫に置いてあったモルヒネなどの薬品類を整理して持って行ってくれた。
とても悲しんでくれ、優しい言葉をかけてくれたのが、うれしい。
母の友人のおみさんがきて、母と祖母の側についていてくれた。
「喪主は動くもんじゃない、こまごまと動くのは出来るだけあたしがやるから」と言ってくれ、言葉どおりなにかと動いてくれた。

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