母を自宅で看取り天涯孤独になった瞬間の話。⑫ 別れ、そして支え
家に一旦お骨を持って行く帰り道、おみさんの運転する車の助手席で俺は無言で泣いていた。
ただ、まっすぐを見つめながら涙だけがこぼれる。
おみさんはそれに気づくが、黙って前を向いて運転してくれた。
家に着き一段落したらすぐに納骨をしなくてはならない。
墓前に飾る御花を用意してる最中、チャイムがなる。
なんと家にヒロがきた。
昨日まで東京にいたはずなのに、なんでいるの??
驚く俺を見ながらヒロは「きちゃった」と笑った。
ただただうれしくて、うれしくて。
もう泣けて泣けて仕方なかった。
いくら感謝の言葉を掛けても足りない。
全ての想いを込めて一言だけ伝えたい。
ありがとう。。。
ヒロも一緒に墓へ納骨に行って、葬儀に参加した皆でのホテルで会食の席を用意した。
といっても10人程度だ。
当然喪主が食事代を持つ。
何日かぶりに温泉にも入り、身も心も休めた。
癒される。
全てを洗い流してくれるようだ。
全てを・・・
葬式などでもろもろ掛かる費用は母が死ぬ前、すでに自分で用意していた。
死んだ後の自分の始末まで考えて死んでいったのだ。
俺が困らないように、どこまでも気を遣って。
母の生き様とはなんなんだろう。
あまりにも多くのことを教えてくれ、凄すぎて見えなくなる。
でも、単純なことだよな。
母は死ぬまで俺を愛してくれたのだ。
ただただそれが全てなのだろう。
会食が終了した後、家に帰ったら札幌の親戚と祖母は荷物の片づけを始めた。
俺は疲れきってるので明日からにしたかったが、ちょとづつでもやらないと確かにいつまでも終わらない。
1週間後にはこの家を引き払わなくてはならないから、ものすごい量の荷物を整理しなくてはならない。
持っていくもの、捨てるもの、売るものetc・・・
とりあえず捨てるものを整理する。
ヒロはずっと一緒にいてくれ、「助けるために来たんだ、気にするな」と率先して働いてくれた。
あまりにもやることが多い。
これからを思うと、一人では絶対出来ない。
しばらく一緒に家にも泊まってくれるという。
いてくれるだけでもどれほど心強いか。
熱い友情にただただ感謝して、その日久しぶりの眠りにつく。
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