18歳で初めて大失敗をした。暗い気持ちで立ち食いうどん屋に入った。注文してないおでんがでてきた。美味しかった。○○がたっぷりと入っていた。僕は強くなった。(前編)

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 そこで、僕は覚悟した。


 もうどーせダメなんだ。誤魔化せないんだ。


 もう本気で勝負するしかない。本気で努力して、本物の実力をつけて、自分を高めてやる。そのために、超絶ストイックに過ごしてみせるんだ…!


 とにかくストイックな一年にするんだ。友達もいらない。絶対に遅刻しない。休まない。予習復習も必ずやる。地道で、愚直な、弛まぬ努力をする。そして、絶対に合格してみせる。


 ただ、それだけじゃどこまでストイックにできるかわからないから、偏差値80を取ることを具体的な目標にした。これが取れるくらいにストイックになるんだ。これくらい取れなきゃダメだ。偏差値80って受験界の神様みたいなレベルじゃん?そしたら運が悪くても受かると思う。運さえも凌駕する実力。それが偏差値80だ。そんなことを考えた。


そして、予備校は北九州市の代ゼミ小倉校にした。自分の地元から通うには電車を2回乗り継ぎ、往復で約4時間かかる。浪人生用の寮はあったが入らない。友だちと馴れ合いたくなかったから。しんどくても絶対に休まずストイックに通うんだ。




そんな決意と覚悟で、僕の浪人生活ははじまった。





決意とは裏腹に、暗い気持ちで小倉城の堀をゆらゆらと泳ぐカメを眺める日々。



 やっぱりしんどかった。



 そもそも5時起きで通うのだけでもしんどいし、勉強なんて本気でしたこともなかったからそれもしんどかったし、なにより、受験に失敗したことのショックが大き過ぎてダメになっていた。今までは負けることも実力不足もなんとなく誤魔化せたけど、浪人は一年間もみんなより遅れるわけだし、誤魔化しきれない。失敗したやつに言い訳もなにもないわけだ。


 疲れきった状態で家に帰ると相変わらず家族がいじってくる。


兄ちゃん
「あれ?お前まだ家におるん?神戸におるんやなかったん?え?落ちたん!?残念www」

うるせー!!大学受験したことない兄ちゃんにはわかんないだろ!どーせ兄ちゃんが神大受けたって受からないに決まってる!

父さん
「おや?直哉くん、いつもお勤めご苦労様です!」

やめろ!おれが予備校から帰ってくるといつも言ってくるやつ。ま、無視するだけだけど。イラっとする。笑いを取って返すくらいの余裕はまだなかった。


 家ではみんなから罵倒され、外では勉強と遠距離移動とに疲れ、心も身体も疲れ果てていた。


 なんとなく、人生にも疲れていたのかもしれない。


 そんな毎日が嫌になり、予備校の授業がないときは近くのリバーウォークや小倉城を散歩し、よく堀にためてある池をゆらゆらと泳ぐカメを眺めてボケーとしていた。なにがストイックだ!


「はぁー。。。いいよなーカメは。ゆらゆら泳いでるだけでさー。苦労することもないんだろうなー。はーあ、猫として可愛くて優しいお姉さんに飼われたいよぉ」

 まずカメに謝りたい。堀の中とはいえ、自然界で暮らすのはそれなりに苦労があるはずだ。しかも、カメ良いよなーっていいながら猫って。

 そんな中でボケーっとカメ眺めてて突然、

可愛いお姉さん
「カメ、好きなんですか?」

と可愛いお姉さんから話しかけられ、悩みを聞いてもらえたのは良い思い出。笑


 そんなことはさておき、この時期、いろんなことを考えてかなり病んでいた。


 だって、友達だと思ってた高校のみんなはみんなもう受験って世界から卒業して、華やかな大学生。勉強に苦しむことなく新しい日々を楽しんでいる姿が容易に想像できた。自由って素晴らしいデス。

 それに比べて僕はまだ受験の世界から抜け出せずにいる。プライドもクソもない。浪人生とか、なんか負のイメージ。ださい。いい大学に入って、すごいねー!って言われるはずだったのになー。

 そんな感覚に浸れば、友達はもはや友達ではなかった。違う世界の住人になっていた。受験のことなんてスッカリ忘れてるんだろうなって。もう一度センター試験を受けることなんてもう一生考えないんだろうなって。僕が落ちたことも一瞬気に留めてからスルーしていくんだろうなって。


 でもどんな愚痴を吐こうがなにがあろうが、僕は勉強しないといけない。ストイックにするって決めたんだ。だから勉強する。


 こんな感じで肉体的にも精神的にも疲れきって家に帰る毎日だった。


 そして、予備校に通い始めて三週間くらい経った頃かな?


 僕は、小倉駅の3、4番ホームで帰りの電車を待っていた。

「お腹へった。お昼ご飯もおにぎり二個しか買う余裕なくてめっちゃお腹へった。けど、帰ったら晩飯ある。うーーーん我慢か。つらっ。」

 時間は夕方6時半。最寄り駅まで帰ろうと思うと、このくらいの時間帯が終電になる。お腹空かせながらボケーッと電車を待ちながら、ふと、周りをみてみると、同じホームに立ち食いうどん屋さんがあることに気づいた。そこには、おでんやうどんなどの看板がある中、おにぎり1個60円って書いてあった!

 お金がない浪人生におにぎり一個60円は激熱!と思って、早速入り、入口の券売機でおにぎり一個60円の食券を買い、おばちゃんに食券を渡す。


「はい。」
おばちゃん
「はいよ!」

 愛想の良いおばちゃんが早速大きな炊飯器をあけ、熱々のごはんを握り始める。

 おにぎりが一つ、たくあんとともにお皿に乗ってでてきた。

 食べる。それがすっごい美味しい。ただ握っただけなのに!笑

 そしたら、目の前にもう一つお皿がでてきた。

おばちゃん
「はい。これも食べり。煮込みすぎて売り物にならんのよ〜。」

 出てきたのは、ちょっとだけ煮込みすぎてて、でも全然売り物になるようなおでんだった。すぐに「煮込み過ぎて」というのが、思いやりの一言だとわかった。


え!?おばちゃん、ありがとう!

 そして、そのおでんを一口食べたら、それがなんとめっちゃくちゃ美味しい!なんでかわからないけど、あのおでんより美味しいおでんはこの世に存在しないといまでも思えるくらいに美味しい!コンビニのおでんで満足していた自分にとって衝撃だった。最高に美味しい。

 電車が出発しそうだったから、ちょっと急ぎめに食べて、おばちゃんに

「美味しかったごちそうさま!!!」

 って言ってでて電車にのった。びっくりしたけど、とっても嬉しかった。なんでこんな僕におでんくれたのかな?貧しそうに見えたのかな?でもとりあえず、本当に本当にとっても美味しかった!



 これが、僕とこの立ち食いうどんのおばちゃんとの出会い。



 この出会いが僕の人生を大きく変えていくことになるとはもちろん全く気づいていなかった。

(後半へ続きます!是非、読んでくださいね⭐️)

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