秘密の扉 12

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     シンクロニシティ


 それぞれの自宅から高橋凉子と、伊達伸一は同じような時刻に起床し、朝の食事を取り出かけた。伸一は会社へ、凉子は大学へと向かった、ふと、凉子は携帯に手を伸ばし、伸一に電話をかけようと思い立ち、ダイヤルに触れようとした瞬間に、着信音楽が流れ、誰かと思ったら伸一だった。

「おはよう凉子、昨日は一日つきあってくれてありがとう」

「おはよう、伸一楽しかったわ」

「今日の夕方七時に予定はいっている?」

「いいや、予定ないけど」

「だったら、どこかで食事しない」

「いいわよ」

「七時三十分に三宮の改札前でどう」

「それでいいわ」

「じゃあ、また」と言って電話は切れた。

今日は小雨と言うよりも、霧がかった雨で、空を見上げると、                 うっすらと虹が出ていた。虹を見てると、幸せな気分になってきた。

さて、駅まで早足で歩き電車に飛び乗った。

 一方その同時刻の伊達伸一は、駅のホームにいた。頭の中で様々な事を考え、それをメモっていた。・・・・・時間も場所と同じだと思った多くの人が交差しいるのに、顔見知りに会う確率は約束がない限りほぼ皆無、伸一は以前、一ヶ月の間に、電車の中で、駅のホームで、後は商店街を歩いていたときに顔見知りの、鈴川君子にであった。さすがに三回目の時、お互いの予定がなかったので、喫茶店に入って話を、その話の中で君子が、一ヶ月ばかり前に失恋して、誰かに話をしたかったと告白した。話し終わって胸のつかえが吹き飛んだようで、聞いてくれてありがとうといいながら別れた。・・・・

 一方、高橋凉子は電車の中で、偶然に車内で文庫本を読んでいる。高校時代の友人である後藤裕子を見かけ、裕子の肩をたたき

「おはよう」

「驚いた、凉ちゃん」

「ずいぶん久しぶりだね」

「そうね」

「今、何の本を読んでいたの?」

「大河の一滴  五木寛之 著 まあ、人生のエッセイと言うには、教訓に近い内容だね少し読んでみる」と裕子が渡してくれたので、目を通すことに

 私はこれまでに二度、自殺を考えたことがある。最初は中学二年生のときで、二度目は作家としてはたらきはじめたあとのことだった。どちらの場合も、かなり真剣に、具体的な方法まで研究した記憶がある。

本人にとっては相当にせっぱつまった心境だったのだろう。だが、現在、私はこうして生きている。

 当時のことを思い返してみると、どうしてあれほどまでに自分を追いつめたのだろうと、不思議な氣がしないでもない。

しかし、私はその経験を決してばかげたことだなどとは考えてはいない。むしろ、自分の人生にとって、ごく自然で、ふつうのことのような気もしてくるのだ・・・・・・・・という内容だ

小説とはひと味違う文章に、凉子は魅了された。

裕子は「この本は高い評価を受けているけど、映画の方はさっぱり内容がいまいちだったみたいよ、エッセイを映画にと自体、無理があると思う。」









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