指揮者でもある数学教師が語る『数学と音楽の共通点』(その3~数学者と音楽&音楽家と数学)



前回、前々回と「数学と音楽には共通点がある」とテーマで書いてきましたが、実際、著名な数学者で音楽を愛した人は数多くいます。


数学者と音楽

日本を代表する数学者の一人である広中平祐氏は高校生の頃、音楽家になりたいと思っていたことが広中氏と親交の深い小澤征爾氏との対談の中で語られています。ピアノが上手く、また作曲もしていたとのことで仲間からは、音楽大学に進むものだと思われていたとのことです。しかし広中氏は高校2年生の頃突如として数学に魅了され、憑かれた様に数学の勉強を始め、音楽ではなく数学の道に進みました。

「数学は音楽の様に美しい」

と広中氏は言っています。



またアインシュタインが熱心な音楽愛好家であったとことも広く知られています。あるインタビューで「あなたにとって死とはなんですか?」と問われた際に

「死とはモーツァルトを聴けなくなることだ」

と語ったそうです。


音楽家と数学

身近なところでは私の学生時代の理系の友人たちのなかにも、音楽愛好家は数多くいましたし、お医者さんに楽器が堪能な方が多いのも特筆されて良いことでしょう。メンバーの全員が医者(や医者の卵)だという、アマチュアオーケストラ(全日本医家管弦楽団)というのも存在します。


逆に音楽家で数学好きだという人の例はあまり多くはありません。でもそれはプロの音楽家の場合、幼少時代より音楽の訓練に多くの時間を割いているため数学の本質に触れる機会がないためだと思われます。


実際に私のまわりのプロの音楽家の中には(本人は気づいていませんが)その言動の中に数学のセンスを感じさせる人が少なからずいます。


その中で数学や医学を極めた音楽家の例として次の2人の例は際立っています。


1人は指揮者シノーポリ氏です。シノーポリ氏はフィルハーモニア管弦楽団や、ベルリンドイツオペラの音楽監督を歴任した名指揮者で日本にも多くのファンがいますが、氏は学生時代にマルチェルロ音楽院で作曲を専攻すると同時にパドヴァ大学で精神医学を学び医学の博士号まで持っていました。



また同じく指揮者でスイス・ロマンド管弦楽団などと数々の名録音を残したアンセルメ氏はソルボンヌ大学の数学科に学び後にローザンヌ大学の数学科教授にまでなっています。


美=真実

数学的に発想するというのは言い換えれば論理的に考えるということです。昨今、数学的に考えることが見直されてきているのは価値観が多様化する現代社会において「自分の頭で考える」ことの重要性が見直されてきたからでしょう。


音楽に限らず、文学も映画も絵画も彫刻も…すべての芸術には数学に通じる論理があると私は思います。人は闇雲に感動する動物ではありません。論理からは遠い所にいるようなお笑い芸人の方たちも長く残る人の話術はみなさん本当に見事です。話の中の伏線の張り方、音楽のカデンツに共通するような「緊張と緩和」、そして計算し尽くされた「裏切り」によって笑いという感動を生み出しています。

合理的であるものは美しく、そして、美しいものは合理的なのです

…と言っては言いすぎでしょうか?(∩_∩;)


最後に、19世紀のはじめにイギリスで活躍した詩人ジョン・キーツの言葉を添えておきましょう。

"Beauty is truth, truth beauty."(美は真なり、真は美なり)

~"Ode on a Grecian Urn"『ギリシャの壺に寄す』より~







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