2014MTBジャパンシリーズダウンヒル第一戦箱館山
「ゼッケン39番、館 正訓(たち まさくに)選手。4分00秒488。暫定35位」
そのアナウンスを聞いたとき、なんの感情もわかない自分を、冷たい目で客観的に見下ろしている自分がいるような気がしました。
5月4日(日)
今回のスケジュールは、5日月曜日が公式練習、6日火曜日が予選、決勝となっています。ゴールデンウイークの後半戦、先ずは滋賀県の会場までの移動が1つの勝負とも言えます。3日の夕方に移動を開始したのですが、どうやらこれが大成功。7時間の行程中、一度も渋滞に遭うことはありませんでした。
この日は、オープンされているコースも、レース本番のモノとは違います。ですが、レースコースのほとんどにも既にコーステープが貼られているようなので、歩いて確認することは可能です。
先ずはコースを歩いて登ります。気になる箇所が数カ所有るので、そこを確認したいのです。
後半はジープトラックではなく、あまり得意ではなかったシングルトラックが復活しています。ここは天気が崩れる予報の明日には、走りにくいセクションになるでしょう。その他数カ所を確認して、走行の準備をします。
カラカラに乾いた路面は、埃と浮き砂利のせいでバイクの方向が定まりません。少しずつペースを上げながら、ラインをテストして行きます。
とはいえ、明日は雨の予報なので、タイトなラインは使えなくなるでしょう。
最近お気に入りのシュワルベのダーティダンをスペアホイールに組み付け、バイクのメンテナンスをして、本日は終了します。
5月5日(月)
朝起きると、地面は濡れています。お昼頃に一番雨足が強くなる予報なので、覚悟を決めて公式練習の一日をスタートします。
まずはドライタイヤでスタート。前輪にマジックマリー、後輪にミニオンRⅡ。フロントの27.5サイズのタイヤがまだまだ選択肢が少ないので、なんとももどかしいのですが、早くマジックマリーに慣れたいですね。
路面も昨日のパフパフから、しっとり湿ってグリップも高まっています。
今日から本番のレースコースを走るのですが、思ったよりも昨日と細かいところが違い、進入方向が定まりません。
時間が経つにつれて雨足が強くなり、前後ダーティダンに交換。ホイールサイズが大きいとはいえ、去年使い慣れたタイヤのせいか、ようやくペースが上がります。後半のシングルトラックはしっかり濡れはじめ、きれいな大回りのラインに進入するのが難しくなって来ました。
この時に新しいラインを探して走り込んだのが、結果的には予選落ちを招いた気がして、自分の切り替えの悪さにちょっとがっかりしています。
13時からエリート選手のタイムを計測する、タイムドセッション。実は、この前に一本走っておこうとスタート地点に向かったのですが、すでにコースはクローズ。タイムドセッションを第一走者で走ることになってしまいました。
雨はかなり強く、ゴーグルに泥が跳ねて前が見えなくなってしまいました。その泥跳ねの間からのぞき込むように走行します。緊張して肩が上がり、呼吸が浅くなってしまいます。可も無く、不可も無くという感じでタイムドセッションを走りきり結果は35位。この時に中途半端な安心が生まれたのかも知れません。
その後も、試走時間がありタイヤはマッドのまま。雨脚は弱まりましたが、明日の予選はマッドだろうと思い、そのままメンテをして終わりました。
5月6日(火)
決勝当日。
朝起きると晴れています。天気が良いのは嬉しい事なのですが、路面の変化が気になります。
予選まではダーティーダンで行き、決勝に残れればドライタイヤも考えて居たのですが、この天気だと乾くのも早いかも知れません。気持ちが落ち着かなくなりました。
この時、思い切ってコースを歩き、実際の路面を確認するべきでしたが、そこに思いが至りませんでした。
朝の試走時間は1時間と短く、そのうち30分は全てのクラスが混走なのでペースを上げることが出来ません。気持ちだけが焦る感じになってしまいました。
二本走ってやはりタイヤをドライに交換。シュワルベ・マジックマリーの滑る感じがどうしても気持ち悪かったので、タイヤのノブを少しカットしてみました。
ドライタイヤを履いてなんとか一本試走できましたが、ノブカットの影響は良い方向に出て、不安感はかなり改善できたと思います。
試走時間が終わり、1時間後の予選に向けてバイクと身体のメンテナンスを行います。トレーナーの山下光子氏(みっちゃん)に手伝って貰いながら、関節の潤滑を良くし筋肉の反射を上げていきます。
ゴンドラに乗り込みスタート地点に向かいます。
今回は開幕戦なのでスタート順は去年のランキングの通り。ゼッケンは39番なのでその辺りに並びます。緊張もなくスタートを待ちます。
前の選手がスタートする直前にゴーグルを着け、順番を待ちます。スタート間隔は30秒。スタート台に上がるとタイマーが視界に入ります。スタートのギアに入っているか確認し、左足をペダルに乗せます。10秒前に電子音が鳴り、5秒前からスタートできます。
スタート台の上で伸び上がり、右足でペダルを探り乗せます。
スタートゲートを飛び出すと、一速シフトアップ。ちょっとうっとうしいコブを抜けるともう一速シフトアップ。初めのS字に繋がるコーナーに進入していきます。思ったより滑りません。
S字を抜けると小さなアップダウンを繰り返す、尾根道の漕ぎセクション。力を使い切らないように呼吸に集中しながら、路面にリズムを合わせて漕ぎ抜けます。
尾根が終わると一気に麓に向けて標高を下げていく、斜度のキツイ区間。27.5に大きくしたフロントホイールのおかげか、去年の様な引っかかるミスをする事も無く、進みます。砂利のジープトラック。タイトなコーナーが続く後半の下り。全てがそこそこにこなせています。
シングルトラックに飛び込み、ちょっとびっくりするほどの声援を受けながら、大きなミスをする事無くシングルトラックを抜けます。最後はゴールまで伸びる直線の漕ぎ。急斜面で踏ん張ってきてがくがくになった脚をなんとか動かしてバイクを少しでも加速させます。
ゴール手前、小さく落ち込んだあとテーブルトップジャンプ。多くの人を怪我させたセクションなので、気をつけながら走り抜けます。
「ゼッケン39番、館 正訓(たち まさくに)選手。4分00秒488。暫定35位」
予選を通過できるのは30人まで。この時点で館兄の開幕戦は終了しました。
最終結果は51位。
何の感情もわいてこない、というのが正直な所でした。今、出来るほぼ全てのことをこなし、ほとんどミスも無く走りきった。その結果が、予選通過の期待も持てないリザルトです。
この自分を受け入れることも上手く出来ない様な、ぽっかりと穴が開いてしまったような感覚でした。
こうやってレポートを書きながら振り返ると、ようやくやれていないこと、改善するべきところが見つかってきて、気持ちが前に向いていることにほっとしています。
次戦の富士見はSPINNING®(スピニング)のカンファレンスに参加するためアメリカに出張中で参加できません。館兄の次戦は雫石大会になります。それまでに、改善できるところをしっかりと変えて、決勝に残れる走りをしたいと思います。
ご協力頂いた皆さんと、応援して頂いている皆さんと、いつもサポートしてくれる山下光子氏に深く感謝します。
協力(敬称略)
Yuris(フレームサポート)
Marsh
重力技研
Drop8
body architect
著者の館 正訓さんに人生相談を申込む
著者の館 正訓さんにメッセージを送る
著者の方だけが読めます