ドアパンチの修理代を全額支払って貰えなかったので少額訴訟してみた(16)

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いよいよ結審です。法廷へ全員が戻りました。最後に予想外の出来事がありました。


全員着席すると、裁判官からの説明が始まりました。


「今回の少額訴訟に関しては、司法委員の助言により双方が和解に合意したということですので、被告から和解金の1万5千円を支払うことで結審となります。この結論に関する異議の申し立ては行えません。また原告はこれ以上の請求も行えない点は御了承していますね?」


私も相手側も、無言で頷く。


「では、和解金の支払いはこの場で現金で行うという希望ですので、被告から原告へお支払い頂き、原告は金額を御確認下さい」


相手側より封筒を手渡され「失礼します」と金額を確認して「間違い有りません」と答えました。


「以上で、本日の審理については全て終了となります。お疲れ様でした」


事務的にあっさりと終了となりました。その後、書記の方から和解調書の送付や未使用の切手についての説明などを受けて「では、皆様退席頂いて構いません」と言われました。出入口は被告側が近かったので、自然と相手側が最初に退席されて私は資料の片付けなどをしていたので少し出遅れる形になりました。結果的に法廷は被告意外の全員が残っている状態になったところで、再び裁判官が口を開きました。


「いやぁ、アナタが勝って、と言うか実質的にですが勝訴されて良かったですよ」


「え!?それは負けそうだったという事なのですか?」と思わず聞き返してしまいました。


「私はね、『請求を棄却する』という判決を出そうとしてたんですよ」

「それで司法委員の方は和解を勧められたんですか?でも、証拠などを見ても私の請求は正当なものと証明できていたと思っていたのですが」

「アナタが正しいのは分かってるんですよ。ただね、被告の領収書とアナタの証拠の請求書は日付が違うでしょ。証拠に矛盾がある以上、裁判所の判断としては請求が100%正しいものとは言えないという判断をせざるを得ないんですよ」

「でも、被告も自分で『4万円の支払いで良いとは言われてない』と答えてましたよね?」

「そうなんですけどね、結局ディーラーの担当者から説明も聞けないですし、事実の証明が完全ではないので。とは言え、アナタの説明が正しいのは分かってるんですよ、なので実質的に勝訴となって裁判官としてではなく、個人的には良かったと思ってるんです」

「つまり、書面上の日付の矛盾を説明出来るか、ディーラーの担当者から事情が聞けていれば良かったと言うことですか?」

「そうですね、それが出来れば間違いなかったですね。ただ担当者の方は辞められてしまったんですよね?なぜ辞められてしまったんでしょうか?」

「私も辞めましたというハガキを頂いただけなので、そこまでは分からないです」

「そうですか、その担当者がもうちょっと慎重に事を進めていれば良かったかとは思いますけどね。まあ、でも良かったですよ」

「そうですか、分かりました。色々とありがとう御座いました」


審理が終わってからの裁判官はとても気さくな雰囲気でした。それにしても棄却されそうだったとは全くの予想外でした。審理の最初の頃に聞かれた「日付に関する質問」にそんなにも重要な意味があったとは思いもつきませんでした。


色々と話し込んでいたので、相手側よりかなり遅れて退廷したのですが、法廷を出てしばらく歩くと相手側の方が私が出てくるのを待っていました。

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