【投稿テスト】シミ。

5 / 5 ページ


『……暇なら誘ってって言ったじゃん。

ごはん行こ』


『……え?』


まさかそんな言葉が返って来ると思ってなかったので

私の頭の中は真っ白になった。


『……昨日も行ったよ?』


嬉しい癖に探る様な言い方をするのは、多分私の癖なんだろう。


『昨日も行ったね。……今日も行こう。』


『良いの?』


『うん。なんかユキちゃん声が沈んでるよ。…行く?』


なんとなく、気を遣わせてしまったかなと思ったけれど

それが本当に嬉しくて私は


『うん』


と返事をした。


『でもラーメンね!』


『うん!』




それから

昨日と同じ様に待ち合わせをして、私達はラーメン屋へ行った。


カウンター席で並んでラーメンを食べる姿は全然色気の無いものだったかもしれないが

私はすごく満足していた。


なんとなく


『うちは夜誰もいない事多くて。慣れてるんだけどやっぱ寂しいよね。』


と言うと

純くんはしばらく黙って


それから


『明日は何食べようか。』


と言った。


『明日も!?』


大笑いしながら私は




確実に

この人の存在が自分の中で大きなものになり始める、予感のようなものを感じていた。





―それからというもの

私達は

ほぼ毎日待ち合わせして食事をした。


時々映画のレイトショーへ行ったり

カラオケへ行ったり


毎日毎日。

どれだけ一緒にいても足りない。


別れた瞬間に会いたくなる。


もう


さすがに自覚していた。


私は

たった10日程の短期間で

あっという間に


純くんを好きになってしまっていた。



好きになる…

というのは幸せな事だが

それに比例する様に

相手の気持ちが気になってくる。


友人に相談したら


『そんだけ会ってて何が不安なの……。

もう純くんだってあんたの事好きでしょ……。』


と、呆れながら言われたのだが、その時の私はそれでも不安だった。


それほど

失いたくない、という気持ちが強かったんだと思う。


だからこそ

自分から好きだなんて

とても言えなかった。



しかしある日

私達の関係は大きく変化する。




それは

私の職場(洋服屋です)で毎年恒例のバーベキュー大会が行われた8月の末。


純くんと出会って半月あまりが過ぎた

夏の、終わり。







著者の伊藤 ドリアンさんに人生相談を申込む

著者の伊藤 ドリアンさんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。