【投稿テスト】シミ。2
ひとり百面相になりながら、ハンドルを握る。
私自身、長く付き合った元彼と別れてだいぶ経つ。
恋愛始めの感覚なんて
正直思い出せない。
だから
これが何なのか、よくわからない。
………はず、だ。
***
翌日。
仕事から帰ると、家には誰もいなかった。
よくある事だし、慣れている。
でも、なんとなくその日は落ち着かなかった。
昨日が楽しかっただけに、余計寂しさを感じてしまう。
しばらくテレビを見ながらぼーっとしていると
ふいに、携帯が鳴った。
【メール受信:ナンパ】
名前登録変更するの忘れてた……と、込み上げる笑いを抑えながらメールを開くと
【今閉店しました。もう少しで帰れる…。】
という何事でもない内容だったので、私はほほえましく思いながら【お疲れ!】と返信した。
すると、その10分後。
【着信:ナンパ】
……まあ用事なんか無いんだけど……。
何してたの?
電話を取るといきなり勢いよく話し始めた純くん。
私の寂しさは一気に吹き飛んでしまった。
ごはん行こ
まさかそんな言葉が返って来ると思ってなかったので
私の頭の中は真っ白になった。
嬉しい癖に探る様な言い方をするのは、きっと私の癖なんだろう。
なんとなく、気を遣わせてしまったかなと思ったけれど
そんな気遣いも本当に嬉しくて、私は大きく頷いた。
***
それから
昨日と同じ様に待ち合わせをして、私達はラーメン屋へ行った。
カウンター席で並んでラーメンを食べる姿は全然色気の無いものだったかもしれないけれど
私はすごく満足していた。
ふと、そんなことをぼやいてしまった私に
純くんは少しの間沈黙して、それからまた、笑顔を向ける。
大笑いしながら私は
確実に
この人の存在が自分の中で大きなものになり始める、予感のようなものを感じていた。
***
それからというもの
私達は、ほぼ毎日待ち合わせして食事するようになった。
時々映画のレイトショーへ行ったり
カラオケへ行ったり
毎日毎日。
どれだけ一緒にいても足りない。
別れた瞬間に会いたくなる。
もう
さすがに自覚していた。
私は
たった10日程の短期間で
純くんを好きになってしまった、ということを。
***
人を好きになる、というのは幸せな事だけど
幸せと同じくらいに、不安もつのるものだ。
失いたくない、という気持ちが強いほどに。
だから
自分から好きだなんて、とても言えなかった。
しかしある日
私達の関係は大きく変化する。
それは
私の職場で毎年恒例のバーベキュー大会が行われた8月の末。
純くんと出会って半月あまりが過ぎた
夏の、終わり。
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