「お腹の子は、無脳児でした。」~葛藤と感動に包まれた5日間の記録~

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次話: 「お腹の子は、無脳児でした。」最終話 ~妊娠498日の約束~

受け入れる整理ができていたので、

薄情なほど、落ち着いて見えるのかもしれない。


産婦人科では、待てど暮せど呼ばれる気配がない。

さすがにいらいらしてくる。

「サービス業なら潰れているな」と思った。


結局2時間。ようやく説明が始まる。


人柄は良いが不器用そうな院長が、

気を使いながら、まわりくどく説明してくれる。


正直頭に入ってこない。


次第に説明に収集がつかなくなり、

「んーーー。

まー要は脳がないのよ。」と収束。


着陸前の飛行機が上空で旋回を続け、

あげく最後は直滑降で着陸。

そんな感じだった。


次に助産師の加藤さんが登場。

院長を押しのけ「ゴッドハンド」

と呼ばれるカリスマ助産師。


頼りがいが溢れ出ているほど、言葉が強い。

「今回の事はもうほんとに仕方がない!」

目を見て、キッパリ言い切ってくれた。


たくさんの嬉し涙や悔し涙、

罪悪感の涙に触れた人だからこその

「厚み」だと感じた。


きっと、この言葉の強さも加藤さんの

「施術」なんだと思う。



妻の7月8日

「忘れものを取りに、お空に戻って行っちゃった。」



さらに加藤さんは、こう言ってくれた。


「私はね、お母さんは

映像として残さなくていいと思ってる。


でもそのかわり、

お父さんには必ず赤ちゃんに会ってもらう。

それでいいと思う。


お母さんは、前に進まなければいけないの!

映像として残してしまうと、

いつまでも引きずって、

次の妊娠に進めないから。」


まだ恐怖心が強くて不安で、

赤ちゃんに会う勇気のない自分を

肯定してもらえて、涙が出た。


今回のことを、そうたろうに

何て伝えたらいいのかも相談をした。


「5歳の子なんて、

ファンタジーの世界で生きてるんだから、

そのままファンタジーで返してあげればいいんだよ!

赤ちゃんお空に帰っちゃったよ。って。

それでいいんだよ。」


そんな単純な事も思いつかなかった。


危うく、「赤ちゃん死んじゃったよ。」

と伝えてしまうところだった。


入院は、

はんちゃんが私の精神的な負担を考えてくれて、

今週お願いすることに決まった。


帰ってそうたろうのお迎えに行った。


保育園の帰り道、そうたろうは

「今日病院行ったんでしょー?

赤ちゃん元気だったー?」

と嬉しそうに聞いてきた。


それだけで泣きそうになる。

ごめんね、そうたろう。という思いでいっぱい。

「おうち帰ったら説明してあげるね。」

と言って、涙をグッとこらえた。


家に帰って、

そうたろうを正面に座らせて、

「赤ちゃんね」と話始めると、

やっぱり涙が溢れてきた。


「どうしたの?」


「赤ちゃんね、なんか忘れものしたんだって。

だから、忘れものを取りに

お空に戻って行っちゃった。」


「何忘れたの?」


「ね。なんだろうね。

それは先生もわからないんだって。」


「じゃーもう、はなのお腹に赤ちゃんいないの?」


「うん。」



ガラガラガラ。



突然窓を開けて、

ベランダに出るそうたろう。



「赤ちゃん、もうこのお空にいる?」


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