「お腹の子は、無脳児でした。」~葛藤と感動に包まれた5日間の記録~

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次話: 「お腹の子は、無脳児でした。」最終話 ~妊娠498日の約束~




「大事な話があるから、

電話に出られるようにしておいてね。」と、

妻のはなちゃんからLINEが入った。


昼休み。丁度、店内でチキンクリスプの包み紙を開けるところだった。

「そうかあ、本当にだめだったのか。」と心の中で深くため息をついた。


確かに、はなちゃんは病院に行く前から気にしていた。

「もうちょっとお腹大きくなってもいいころなのに。

ちゃんと育っているか心配。」

1か月くらい前から、何度かそう話していた。


でも、不安になるのは

心配性のはなちゃんにはよくあること。


正直あまり気にしてなかった。

正確には、気にしないようにしていた。



妻の7月7日

脳がないから、産まれても生きられない。



妊娠14週。いつも通り10:30に産婦人科へ。

血圧正常、体重900g増加。

よし。まだプラス1kgもいっていない。

「次からUSB持って来たら

赤ちゃんの映像とってあげられるからね。」

よし。次回は絶対持っていかなきゃ。


エコー始まる。


お。ピコピコ心臓動いてる!

一安心。


無言。

無言。

無言。


あれ?

一人目のそうたろうの時には、

「これが足で、これが手だよ。」

「これが顔ね。」

「今は○○cmだね。」と会話が普通にあったのに。


「あ、これ心臓ですよね?」


無視。


え?無視?

しかも首をかしげながら映像を見ている。


何か異常があったのかな。

だからこんなに無言なのかな。


そうしたら、

「ど、どう?最近はつわりはおさまってきたかなー?」

ギコチナイ棒読みで。

「全然まだなんですよ!先週末も吐いて、けっこう辛かったです。」


「そ、そうなんだー?風邪とかひいてない?」

「風邪?たぶんひいてないです。」


無言。

無言。


「家族はどう?風邪ひいてる人いない?」

「はい。誰もひいてないですよ。」


無言。

無言。


「上の子は、えーっとー、5歳になったのかな?」

「はい。」


「どう?上の子は風邪ひいてない?」

「?はい。別にひいてないです。」


無言。

どうしてこんなに、

周りに風邪をひいてる人がいないか聞くんだろう?

そこ重要なのかな?

かなり不安。


長すぎる。

エコーが長すぎる。


「はい。じゃーー……えーっと……。ね。

あとでね、先生の方からお話がありますので、

待合室の方でお待ちください。」


この意味深な言い方に、

「何かあったんですか?」

と、すごく聞きたかったけど、

聞いたら後悔する気がして、怖くて聞けなかった。


結局、いつもなら渡される

エコー写真をもらえないまま待合室へ。

待つこと1時間以上。


後から来た人たちがどんどん帰っていく。

もしかして、

わざと最後になるように回されてるのかな?と気がついた。


「半田さーん。」


やっと呼ばれて診察室へ行こうとしたら、

看護師さんが「今日は一人で来たのかな?」と聞いてきた。


絶対おかしい。この質問絶対におかしい。

心臓がバクバクしながら、診察室のドアを開けた。


室内は、たくさんのエコー写真が並んでいて、

先生と5人の看護師さんが小声で、

何か深刻そうに話し合っている。


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