原因不明の肝疾患で肝移植してから約10年, 闘いは今も続く その①「結構悪いな」から始まった
2001年、当時28歳。
何がきっかけということもなく、気まぐれで受診した健康診断で肝臓の異常が発覚。
このときは、《原発性硬化性胆管炎》という原因不明で治療法のない慢性肝疾患で、わずか4年後に肝移植, 今に至るまで20回以上の入院を繰り返すことになるとは、想像だにしませんでした。
健康診断は、街の診療所のようなところで受けました。問診と血液検査をして、あとレントゲンぐらいは撮っていたかもしれません。
そもそもが『異常ありません』という言葉で安心できればいいかな, ぐらいの考えで、ちょうど仕事も忙しい時期に入っており、検査結果を聞けたのは3ヶ月ほど経ってからでした。
その時の予診で
とか聞かれて、へんなこと聞くなぁとか思ったのを覚えています。
『結構悪いな』
診察室に入り、医師からの一言めが
『異常ありません』じゃなく『結構悪いな』。
血液検査の数値から肝臓が良くないことが分かり、もっと詳しく調べていかないといけないと言われました。
肝臓に関してのほぼ全ての検査項目が正常範囲外であるものの、急激な悪化ではなく正常値を少し外すような微妙な異常具合だとか。
本人は、肝臓なんて全く気にもしていなかったので頭の中は
です。
その後は、定期的に血液検査を受けて原因を探ることに。
何度検査しても異常は異常。
しかし原因として考えられる可能性の高いものから順番につぶしていくも、ウィルス肝炎ではないし、肝がんでも薬物性肝障害でもない。脂肪肝やアルコール性の肝機能障害でもない。
また、肝臓部のエコーでも、若干ながら肝臓が腫れぼったい様子はあり、何かしらの肝機能障害があるのは間違いないと。
(色々結果も見せてもらいながら説明を受けるのですが、エコーをはじめ、画像診断の結果はいまだに今ひとつ見方が分かりません)
これらの経過を踏まえて、可能性としては非常に低いが、他に原因が見つからないからという前置きを付けて説明を受けたのが《自己免疫性肝疾患》です。
この時点で、健康診断から半年ぐらいです。
自己免疫性肝疾患
月1回ぐらいのペースだったと記憶していますが、引き続き血液検査やエコー検査を行い、検査を重ねるごとに《自己免疫性肝疾患》の可能性は高くなってきました。
《免疫》とは、簡単にいうと病原体などを異物として認識して攻撃しやっつけようとする仕組みなのですが、その免疫機能がおかしくなり、自分の肝臓に対し過剰に反応することで起こる肝疾患が、《自己免疫性肝疾患》です。
(ですので、攻撃の対象が肝臓以外だったり、全身に及ぶ疾患もあり、総じて「自己免疫性疾患」と呼ばれています。)
では、この時点でどのような治療をしていたのか, なのですが、何もしていません。
検査ばかりです。
のんびりしたもんだなぁと思いつつも、診断がはっきりするまでは変なこともできないのかなと理解していました。
ただ、日が経つに連れ、徐々にではあるけれども検査結果にも悪化がみられるということで、肝臓病に広く使われている薬ぐらいは使い始めてもいいかな, という話も出てはきました。
ここまであたりが最初に健康診断を受けた診療所での受診で、この後は、自己免疫性肝疾患を専門としている大学病院での受診・検査へ移行することになります。
大学病院へ
これまでの経過を鑑みて、より専門的な医療機関できっちりと検査して診断を確定させるために、大学病院へ行くことに。
大学病院での受診には紹介状が必要とのことで、これまで診てもらっていた診療所の医師に用意してもらいました。
後から分かることなのですが、この医師はこの大学病院の勤務医で、診療所と提携している関係で外来を受け持っていたようです。おまけにこの大学病院が自己免疫性肝疾患の研究をしていて、これまでの経過や検査結果もかなり正確に伝わっていたようです。
(普段同じところで仕事をしている医師同士で紹介状っていうのもなんだかおかしな感じですが、慣例的にそうなっているのでしょう)
初回の受診の際に、やはり自己免疫性の疾患の可能性が高いということで・・
・自己免疫性肝炎(AIH:autoimmune hepatitis)
・原発性胆汁性肝硬変(PBC:primary biliary cirrhosis)
・原発性硬化性胆管炎(PSC:primary sclerosing cholangitis)
大きく分けてこの3つの病気があって、それぞれ症状は違うけどどれも免疫の異常により起こるもので、珍しい症例であること, 原因不明の難病で治療法もなく予後不良(=回復は望めない)であると説明されました。
自力で調べてみる
今でこそ、患者が手に取れる資料やデータなどの情報も多少はあるものの、この当時は医療者が使うための学術的な資料ぐらいしかなく、ごく一部ですが、そういった資料も渡されました。
ただその資料なのですが、医療者のためのものなので、端的に要点が書かれています。原因不明・予後不良・○年生存率・肝移植・・データも絶望的な数値が並んでいます。
そのストレートな記述にさすがに不安を感じ、インターネットで検索をしてみたりもしました。しかし元々情報が少ないうえに、まだインターネットもそれ程普及していない時代。病名で検索しても数百件程度のヒットで、多くは病院で渡された資料と同じような内容でした。
※2015年4月時点では、約46,300件という検索結果で、これだけみても患者を取り巻く環境は大きく変化したのだなと思います。
こうして、何ともいえない不安を抱きつつ、大学病院で受診・検査を続けることになりました。
ちょっと記憶が曖昧なのですが、ここまでで初めての診察から1年弱だったと思います。
この後、様々な検査を通じ、《原発性硬化性胆管炎》の診断が確定します。
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