原因不明の肝疾患で肝移植してから約10年, 闘いは今も続く その② 原発性硬化性胆管炎 診断確定

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原発性硬化性胆管炎

ここで先に、後々診断確定する《原発性硬化性胆管炎》について触れておきます。

原発性硬化性胆管炎(PSC:primary sclerosing cholangitis)は、肝臓内外の胆管に炎症が生じ狭窄し、胆汁の流れが滞る(胆汁うっ滞)ことにより様々な症状が発生する疾患です。

主だった症状には、だるさや皮膚のかゆみ, 黄疸がありますが、特に症状のないまま長期間経過する場合も多いです。

・徐々に進行し、胆汁うっ滞から約10年~15年で肝不全に至ります。

・日本の総患者数は約1,200人程度と推計されています。

・原因不明の肝疾患のため、治療は、現在のところ肝移植のみです。

簡単にいうと、胆管が細くなって胆汁が流れにくくなり、通常だと体外へ出される胆汁が溜まってしまうことで不具合が生じる病気です。その原因が不明だけど免疫異常だと考えられています。

私の場合も自覚症状のない期間は長く、最初に健康診断を受けた段階ではもちろんのこと、大学病院での受診が始まるこの時期でも、たまにだるさを感じたり37度ぐらいの微熱が出たりする程度でした。

黄疸もきつく出てくると眼や肌が見た目からして黄色味を帯びてすぐ分かるのですが、当然そんな症状もなく, です。


画像で診断する

大学病院でも血液検査は基本中の基本で、診察の度にしていました。

診断については、おそらくは自己免疫性肝疾患のどれかであろうと推測はできるけど、まだ確定ではないとのことです。そこで、今できることから少しでも探っていこうということで、MRCPという検査をしました。

MRCPは、胆管の様子を画像で診断する検査です。MRIの、目的を絞ったものです。

事前の絶食と液体の造影剤を飲む必要はありますが、時間も15分~20分で終わる、比較的楽な検査です。

(これから先は、どんどん体への負担が大きい検査が入れられることになります)

結果、画像からは特徴的な所見なしということで、診断確定も先送りとなりました。

※この後、3ヶ月~半年毎に同じ検査を受け、徐々にPSC特有の胆管像に変化していきます。


入院して検査する

さらにその後検査を重ねるも、診断が確定しない状況から変化がなく、大学病院での受診も半年を過ぎようとしている頃に、医師から《肝生検》で肝臓の組織を取って、より詳しく調べてみてもいいんじゃないかという話がありました。

今までは血液検査の数値や画像からの間接的な診断だったものが、直接肝臓の組織から詳細な評価・診断ができるということです。

検査することには何の問題もないのですが、ネックとなるのが1週間弱入院しないといけないことです。

検査自体は肝臓に針を刺して組織を取ってくるだけのものなのですが、体の中にまで刺すことになるので、体内で出血するため安静期間として数日は必要になるのだそうです。

この時は8月だったので、結局、お盆の時期に入院・検査することにしました。

このときはまだ自覚症状もなく、自分が重病人であるとも思えず、気楽なものでした。世間的には夏季休暇期間でもありましたが、なんとなく合法的に休んでるような気分です。

プラモデルを山ほど持ち込んで、時間があればパチンパチンしていたぐらいです。


肝生検

検査については、外来時に概略は聞いていましたが、入院初日に詳しい説明を受けました。

検査の方法としては、腹部エコーで肝臓と組織を採取する場所を確認し、体の横(右わき腹)から長い針を刺して採取するのみで、それ自体は数分程度のものです。ただし事前の麻酔や、ストレッチャーでの移動等を含めると、1時間程度はかかります。

長さ30cmはあろうかという針が痛みもなくプスプス入ってくるので、かなりの怖さは感じます。これ以降、肝生検も何度もしていますが、毎回針を入れる前は同じように怖さを感じています。

検査終了後は、止血が確認できるまで4時間~6時間程度はベッド上安静で、姿勢を変えることもほとんどできないので、なかなかの忍耐力が養われます。

麻酔も局所・全身ともにこれから数え切れないほどすることになりますが、このときはまだ歯医者の麻酔ぐらいしか知らず、その関係か、時間が経つにつれ激しい頭痛と発熱があり、翌日まで続きこれが一番苦しかったです。

ともあれ検査は無事終了, 検査結果が分かるまでには2週間ぐらいかかるということで、次回の外来診察で確認, ということになりました。

入院期間は5日間程度でしたが、現在では入院期間もできる限り短く, ということで、検査前日入院~検査翌日異常がなければ退院と、3日程度で済ませられるようになっているようです。


そして診断確定

肝生検での検査結果は、《原発性硬化性胆管炎》で間違いないだろうということでした。

医師から説明がある前にカルテから"primary~"という文字が見えたので大方予測はできたのですが、疾患の特異性や患者の少なさ, またよく似た原発性胆汁性肝硬変とは違い、特定疾患医療費助成の対象でないことなどから、一番避けたかった結果で、それなりの衝撃は受けました。

※特定疾患医療費助成の対象であれば、医療費の一部または全額が公費から負担されます。

※2015年1月から、原発性硬化性胆管炎が特定疾患医療費助成の対象に含まれました。

さて診断が確定した結果ですが、PSCは治療法がありませんので、これ以上悪くならないよう、少しでも現状維持していく他はありません。

さしあたっては、これまでもしてきたエコーやMRCPによる肝臓の状態のチェック, 血液検査を定期的にしていくことになりました。

また、投薬もこの時点まで結局何もしないままでしたが、ウルソという胆汁の流れを良くする薬を始めました。投薬については肝移植するまではずっとそれだけだったと記憶しています(この辺りすこし曖昧です)

このときの外来ではかなり動揺していたはずなのですが、それに反しさすがに大学病院の医師。包むことも隠すこともなく、あくまでも端的に現状の説明に終始していました。


ここからは、血液検査のデータ上で多少のブレはあっても、病状自体は落ち着いた状態が2年程続きました。

この間、自覚症状も特にありませんでした。

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原因不明の肝疾患で肝移植してから約10年, 闘いは今も続く その③ はじめての長期入院

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