【第九話】『旅の洗礼』〜死に場所を探して11日間歩き続けたら、どんなものよりも大切な宝物を見付けた話〜
止まっていた景色が動き出す。
曲が終わるごとに、確実に時間が過ぎ、
前へ進んでいる実感がして、嬉しかった。
しばらくして、笹子駅に着く。
やはり、1日目のゴールを大月にして正解だった。
周りには何にも無い。
宿はもちろん、ご飯屋さんや、コンビニさえも無い。
「ちゃんと計画的にやらなきゃな。」
と、思うのが当たり前だが、
僕は、
「超ラッキー!」
「やっぱり僕、持ってるなー!」
と呑気なことを考えていた。
我ながら、自分のアホさに驚愕するが、
このアホさが無ければ、この旅はもちろんのこと、
僕の人生において、貴重な経験は何一つ出来ていない。
僕はこう思う。
人生において、大きな決断をする時は、
知識や知恵なんて大して必要じゃない。
そこに飛び込むアホみたいな動機が大半を占める。
10代の頃は、モテたいがために色んなことをやってきた。
足が速けりゃカッコいいから、陸上やって、
スケボー出来たらカッコいいから、スケボーやって、
背が高いとカッコいいから、バスケやって、
バンドやってたら、カッコいいから、バンドやって、
ダンス出来たらカッコいいから、ブレイクダンスやって、
ピアノ弾けたらカッコいいから、ピアノやって、
自分がカッコいいと思うあらゆることをやってきた。
カッコいいことが出来たら、絶対にカッコよくなれると思った。
だから、カッコいいと思うことをやり続けてきた。
それは27歳になった今でも変わらない。
「モテたい!」
というアホみたいな理由で、色んなことが出来るようになったのだ。
どんなに知識や技術を持っていたって、
飛び込む勇気がなければ何も始まらない。
だったら、先に飛び込んじゃえばいい。
知識や技術は後から必ず付いてくる。
まずは、アホみたいな動機から全てが変わる。
全てが始まると思う。
ちょっと話が逸れちゃいましたね。
実際に僕がモテたかどうかは、ご想像にお任せします。笑
旅の洗礼②初めてのトンネル…
しかし、やっぱり計画は大切だ。
笹子。
そう、あの大事故のあった笹子トンネルの笹子だ。
この旅で初めての大きなトンネル。
しかし、事故のあった笹子トンネルは、中央自動車道の高速道路のトンネル。
国道20号線を通る笹子トンネルは、新笹子トンネルと言って、
全くの別物なのだ。
別物だと知らなかったため、ちゃんと通れるのかどうか事前に少し調べていた。
「笹子トンネル 歩き」
と検索すると、何とも恐ろしい情報ばかりだった。
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