僕の名前も忘れ、100万人に1人の難病を患った妻と僕の物語

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妻を家に置いて、仕事場にいけるのか。

自分は人間として本当に最低。

一緒に生活していけるのかな。


いろんな感情が湧いて出てきた。



とりあえず、

妻をストレスから解放させるため、

いろんな場所に行った。



二人で初めて行ったデートの場所に行ったり、

ここでこういう話をして、ここでこんな約束をした。

このお店のこれが君は好きで、君はこういうのが得意だった。

家の周りをお散歩して、ここは知ってる?ここは覚えてる?

など、二人が何をしていてどうやって今にたどり着いたのかを妻に教えていった。



そして、二人のLINEなども見返したり、

良くお互い手紙も書いていたので、それも全部振り返った。

LINEなんて、2年以上も振り返っていた。




妻は全く僕の事を覚えていない。

僕のことが好きなのかどうかもわからない。



それでも、今まで喧嘩したりしたけど、

二人が好きでこうやって一緒にいること。

有難いことに子供もいること。

を話し、一緒に生活をしていると

2,3日後には、妻の対応は変わっていった。




最初は他人に接するような感じで、よそよそしかったのが

だんだんと「僕のことを信用してくれている」そう感じるようになった。

話し方、行動、しぐさ、声のトーンからそんな感じがした。



嬉しかった。


そして何より、

神様がもう一度初心に戻らせるために、

わざと起こした出来事なのかなと

プラスに思えるようになった。



この時から、「もう無理に記憶は戻らなくてもいいかな。」

そう思えるようになっていた。



今までの思い出は僕の中にしまっておいて、

これから新しい妻と一緒に思い出を作っていけばいい。

それからは以前よりも気持ちが寸分楽になった。



そして、

妻も、記憶が戻ることが怖いと言っていた。

なにか別の自分に戻るんじゃないかと。

今の記憶がまた無くなってしまうんじゃないかと。


何よりもう一度あのころの二人の気持ちに戻れたことがなくなっちゃうんじゃないかと。





それでも翌日朝起きると、どこか期待して聞いてしまう。

「何か思い出した?」

そして妻はいつも首を横に振る。



まぁいっかとは思いつつも、どこか諦めきれていない自分がいた。

LINEを読ませたりして、記憶を呼び戻そうとさせている自分がいた。







そして、

記憶を無くして5日ほど経った日

妻が過呼吸になった。



記憶を無くしてからも、

LINEを読んだり、写真を見返したり過去の記憶を戻そうとしているときに、

ストレスとなった原因に触れたりすると過呼吸になっていた。



過呼吸になりながら、パニックとなり暴れだす。


必死に「大丈夫。大丈夫。」と言ってなだめるが、

暴れまわって何度も殴られた。

が、それでも僕は落ち着かせてなだめる。



今回は、記憶を無くしてから3回目くらいの過呼吸だったと思う。

同じようにして、10分ほどかけてなだめる。

そして意識を失ったかのように寝る。呼吸はある。



その時ポロっと小さい声で

「ずっと一緒にいたい。」と言ってくれた。



いつも過呼吸になると、

「もう嫌!どこか行って!」などネガティブな言葉ばかりだったのが、

今回はプラスの言葉が出た。


なにか変ったかな?と思った。



トイレから戻ってくると妻が起きていた。

「あ、起きた?」と声をかけると

ビクッとし「あれ帰ってたの?」という意味不明な

僕にとっては期待のする言葉を言ってくれる。


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