ヒーローはどこにいる?

著者: Miyoshi Hirofumi

小さいころからヒーローが好きだった。




それも、最初から“ある程度”強いヒーローが好きだった。


最初は弱くて努力して強くなっていくような成長物語は嫌いだった。





小さいころからヒーローになりたかった。


それは、強くなりたかったわけじゃなくて、たぶん安心したかったんだと思う。


最初から強いなら、どんなことがあっても大丈夫。


ちょっと大変でも、最後はなんとかすることができる。





小さいころはヒーローじゃなかった。





だから、努力して成長するしかなかった。


最初は努力していれば何とか安心していられた。





でも、ヒーローにはなれなかった。


どんなに努力しても安心できなかった。


努力が水の泡になったり、時代遅れになったりした。


人は努力の現れ方で、天気のように顔色を変えた。





ヒーローになることをやめた。


人のためになろうとしたり、社会に大切なことをやろうとした。


夢のようなものを追いかけたりした。


どこかに安心がある気がした。





ヒーローって何なんだろう。




夢や愛や未来や温もりなんて、本当は欲しくはなかった。


それは言い訳なだけ、それはとりあえずの安心なだけ、


合格点を取るために、きれいなシールを貼ってもらうために


老いに抗って、信念をかたくなに守って、人に期待する。


そんなことは、僕にはできなかった。




ヒーローはいなかった。




誰も何もヒーローではなかった。


どこの果てにもヒーローはなかった。


探しつかれて、歩き疲れて、もう合格点ももらえなかった。





僕は僕だった。


そして、僕は僕でしかない。


僕には何もないし、何も得られないかもしれない。


でも、それが、どうした。






俺は俺だな。


それだけがいい。


もう何かに誰かにすがりたくない。


そんなこと本当は望んでいない。


ただ、俺が俺でいたいだけ。





俺はただのヒーローだ。





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