なんちゃって外資系 その2 給与編

前話: なんちゃって外資系 その1 まずは英語編
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きらびやかに見える外資系企業。その一方で結果を出せなければ直ぐにクビ。そんなイメージを持たれている外資系企業について。今回は給与編。

本当に外資系企業の給与は日本企業に比べて高いのか?

答えはイエスであり、ノーでもある。

平均給与というのであればイエスである。これは一部の歴史の長い外資系企業を除いて新卒採用を行っておらず、ポジションにあった経験と能力がある人を中途採用しているからだ。

なおかつ専門分野での経験に加えて英語能力も求められる。これで給与レベルがグーンと上がる。

自身の勤めていた米国系通信会社の過半を日本企業に売却するという経験があったが、買い手も一部上場企業であったが、買われる方の平均給与が買う方の平均給与の倍、と言うので正直焦った。

買収された後、何年したら給与水準の調整とか統合という名目の下で大幅な賃下げが予想されたからだ。買収する側は、こういった点もオポチュニティ=利益の機会としてしっかりと計算している。


また外資系の給与について述べる時は先ずその構成について理解する必要があろう。

営業の場合、固定給の割合が少なく、売上などの業績による変動ボーナスが多い。

管理部門の場合はそれ程では無いが、それでも本社の業績などにより金額が変わる変動ボーナスがある。

但し日本の会社の様に無配でも最低限のボーナスが出るということは稀。何故なら報酬委員会で明確な基準が決められ、それを達成できなければゼロもあり得る。よって外資系企業に勤める者は住宅ローンで賞与払い分を組みにくいというデメリットもある。

それに加えて会社によっては、所謂ストックオプションやRSUという原株の付与がポジションに応じて与えられる。ポジションに応じてであるが、上位に行くほど幾何学的に付与される数が増える。後は運次第。株価が上がるか下がるか。


外資系企業の場合、中途採用が主だと言ったが、ある特定のポジションに対する採用なので、通常昇格、プロモーションは極めて限られた場合のみである。

よって採用面接の際に上司になる人がいつ頃定年になりそうか、そのポジションを争う人が他にいるのかを確認する事は非常に重要である。と言うのも、外資系企業の定期昇給はゼロではないものの、物価上昇率などのデターをコンサルから買った物を参照して予算枠を設定する。昨今のデフレ状況では数パーセントの原資を奪い合うというのが実情だ。

よって入社時の給与交渉で出来るだけ高い額を獲得する事が重要になる。


最初に入った外資系企業でこんな事があった。

面接は日本のCFO。上司になる人。それとオペレーションを実質仕切っている管理本部長。

加えて、日本の社長とアジアパシフィックの代表。次いでにと言うので、アジアパシフィックのCFOとも電話で話した。

翌日、アジアパシフィックの代表から家に電話。

「昨日はご苦労様。是非、うちに来て貰いたいと思っているんだが。」

私、「あっ、有難うございます。」

アジアパシフィック代表、「実は予算の問題があって、暫くは次長クラスという事でお願いしたい。出来るだけ直ぐに部長クラスにするから暫くは我慢してくれ。」

日本企業に20年勤めた身としては、日本を超える「アジアパシフィックの代表」の言う事であったので、只々恐縮するばかり。

しかし後から、外資系企業の何たるかを知った後から思い返すと、只々、自分の甘さに呆れ返るばかり。せめて一筆を代表から取るべきで、実際この代表自身それから遠からずして卒業。ただの電話は何のコミットメントにもならなかった。


入社時の交渉。これは兎に角戦いですから、出来るだけ高い条件を獲得するべき。

余りにも条件を釣り上げたら入社のオファーが無くなるのではとの畏れを抱きがちですが、採用したいと方針が決まった後は会社側も多少の譲歩をしても入社させたいと考えている。特に人事は取ってなんぼとの評価。よっぽど隔たりが大きく無ければ譲歩を引き出せるはず。

あと少しいればボーナスが貰えるだとか、ストックオプションがあると言うのもよく聞く話。

採用する方からすると貴方の問題。それも含めて長い目で考えてね。と、言いたい所ですが、それで物別れでは困るので一時金、サインアップボーナスを払う場合がる。

シニアダイレクタークラスになると社有車と駐車場代の負担も条件に含まれてくる。

細かい人だと海外出張の際のファーストクラス、年に一回エグゼクティブ向けの健康診断、確定申告代の会社負担なんかも飛び出してくる。

これらの条件に折り合った所でオファーシートと呼ばれる雇用契約書を貰い、そこにサインをする事で入社が決まる。

カントリーヘッド、所謂、社長クラスになると、これらに加えてリテンションボーナスというものが付く。

簡単に言うと「引止め料」。優秀な社長クラスになるとその採用にもかなりの時間と費用を掛けているので、あっちにもっといい会社があるから移るわ、と言われる訳にはいかない。

と言うわけで、勤続年数に応じて段々高額になるボーナスが加算される。その場合、会社の規模にもよるが、引き止め効果を考えると数億円。支払いの承認をしていて、毎年億ションが買えるのかと、他人事ながら溜息が出た。


ここまで読んで来られた方は、なんだやっぱり外資系の連中はそんなに貰っているのか、と思われるかもしれない。

しかしながら、そんなに甘くはない。

例えば福利厚生。一部を除いてほとんどない。社宅、保養所、財形年金制度、クラブ活動補助等、日本企業では当たり前の様なものが無いか、あっても限定的。

退職金制度が無いという所もある。

日本企業だと退職時に退職金がまとまった金額で支払われ、かつ税制的にも優遇される。これが無いので老後の為の蓄えは自身でしなければならない。

また従業員数、これをヘッドカウントと呼ぶが、その増枠が極めて厳しい。日本企業の様な補助職という概念が無いので、細かな雑用も自身でこなさなくてはならず、仕事の密度もかなり濃い。

それに本社が欧米にある場合には電話会議が早朝、夜間に頻繁にある。

そして何より、日本でのビジネスの趨勢によっては日本撤退ということもあり得るし、そこまで極端で無くとも業務の海外への移動、国内業者へのアウトソーシングにより、ポジションが無くなってしまう怖れもある。

雇用契約はある仕事を遂行できる能力を持っている事が前提なので、このようにポジションが無くなってしまったり、能力が無いという判断になると継続ができない。

これは冷たいとか、非道とかいう問題ではなく、契約の問題だ。退社までの対応は色々有るがそれはまた別の機会にして、別の会社で自分の能力に合ったポジションに着くのが会社にも本人にも良い事。

実際、退社していった方達は、不思議な位簡単に次の職場を見つけて再び働き始める。中には長期間にわたって求職活動を続けている方もいるが。

要は自身の能力がよく分かっていて、プロとしてどこの会社で仕事をするかに拘らずに、どういう仕事をするかの割り切りが出来るかどうかが外資系で働く場合重要になってくる。

これらをよく理解して外資系企業に飛び込むのであれば、高い生涯賃金を獲得する事ができる。

さもなくば日系企業に留まる方が外れは少ないように思われる。


どちらかを選ぶかは貴方次第。


おまけ編、

結局、外資系での給与は幾らぐらいなのか。リクルーティング会社の中には毎年データーを発表しているところがある。ロバート・ハーフなどがそれだ。経理、銀行関連に限られるが、企業によって違う賞与、インセンティブを除いた数字だが概ね下記の通り。

経理課長  6-10万円

経理部長  10-20百万円

CFO  10-30百万円

CEO、社長、 Country Head    10百万円-数億円 大きな企業であれば億円レベルは珍しく無い


これはギャランティ部分のみ。この外で賞与、インセンティブがあるのですから中々魅力的ではありませんか?










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