死ぬくらいでも、辞められない話

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そして1月。

会社である大きなイベント事業があり、その準備と当日運営に奔走した。

それこそ不眠不休でくたくたになりながら仕事をして、その最終日の帰り。

その大きなイベント会場の、大きなゴミ捨て場を通ったとき、私は当日自分たちが行ったイベントのごみの山を見ることになった。

プラスチックや発泡スチロール、弁当の残りとかが、本当に大きな山になって積まれていた。

それを見たとき、何か言葉では言えない、失笑が生まれた。

何だ、結局残ったのはゴミの山か。

これだけのものを作るために、自分はこれをやる価値はあるのか。

何か変だ、そう思った。

あるとき、終電終わりで帰って、着の身着のままでベッドで寝てしまい、朝急いでシャワーを浴びているとき、涙が勝手に流れてきた。

そのことに失笑しながら、もう限界だな、そう思った。

6 退職

辞めると決めてからは早かった。

上司には少し止められたが、すぐに納得された。

同僚からもほとんど声もかけてもらえなかった。

辞めるのも時間の問題だと思われてたのかもしれない。

辞めることに不安はもちろんあった。

不安だらけだった。

でも、辞めるしかない、それもはっきりしていた。

退職日、職場のひとりひとりに挨拶するとき、何か銅像に向かって話しているような気持ちだった。

これで終わる、そのための儀式、それを終わらせることでも必死だった。

仕事をやめたら、まず驚いたのは、体の不調が3日で全ておさまったこと。

その後の、ぽっかりした2週間は幸せだった。

もう朝、あの会社に行かなくていい、自分の好きに時間を使えるだけで、泣きたくなるくらい嬉しかった。

その後は、もちろんこれからどうなるだろうという不安は襲ってきた。

でも、今思えば、やっと正常な思考や意識が戻ってきたのだと思う。

7 生きる

「辞めることも、辞めないことも、同じ決断には変わりはない。」

自分が仕事を辞めようか相談したとき、仲間が言ってくれた言葉だ。

そのとおりだと思う。

辞めることも、辞めないことも違いはない。

どちらにしろ、その決断を背負って生きていかなくてはならない。

そこに優劣も、間違いもない。

今、あの会社を辞めたことに後悔はない。

今の自分でも勤められないと思う。

でも、そのことを良かったとか、正しかったとか、そんな風に決めるつもりもない。

会社のことを悪くいうつもりもない。

ただ、私には無理だったし、会社側もどうしようもなかった。

会社には迷惑だけだったかもしれないが、私には大切な経験になった。

仕事が原因で自死してしまうことは不幸なことだとは思う。

そうなってしまう可能性はどんな人間にもあるし、ほんのタイミングで起こってしまうと思う。

それを検証することは大事だし、原因があればそれを改善することは大切だ。

そして、自殺者にはその人なりのドラマがあった、それをきちんと尊重することは、何よりも大事だと思う。

「本当に決めたときには、迷いなんて起こらないものだよ。」

相談した仲間がもうひとつ話していた言葉。

私はあの広告会社を辞めることを決めて、今生きている。

会社を辞めた後にもつらいことや、苦しいことはいっぱいあった。

傷は増えた代わりに、私は今ここであのことを書くことができた。

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