癌で胃袋を失い生きる希望を失いかけた男が、一夜にして元気を取り戻した物語
聞いているのだろうか、
とても丁寧に手術のこと、
術後のことを話してくれた。
「胃の下3分の2を切除することになります。」
「転移の可能性もあるので、まわりのリンパ節も取ります。」
「リンパ節に転移しているかどうかは、取った後に検査してみないと分かりません。」
(意外と非科学的なんだな~・・・)
「お腹に4か所の穴を開けて行う腹腔鏡手術と開腹手術の2種類ありますが、
患者さんが選ぶことはできません。」
「正確なデータを取るために、くじ引きで決めています。」
(おいおい、くじ引きか~?!)
「難しい手術ではありません。」
「いずれの方法でも、もう数え切れないほど行っていますので、心配はいりません。」
「ステージIBだと、5年後の生存確率は、84%ですが、
これは、高齢の方も含まれていますので、
あなたの年齢で癌の再発で亡くなる確率は、かなり下がります。」
(84%ということは、16%死ぬのか・・・)
(確率が下がるって、どのくらいなんだ・・・)
「セカンドオピニオンも聞くことができます。」
この時点で、話し始めてから1時間は超えていた。
その間、仕切りなしに電話がかかっていた。
分刻みで動いているような感じだった。
「何か、質問はありますか?」
「どのくらいで退院できますか?」
「1週間です。」
「すぐに仕事に復帰できますか?」
「ええ、大丈夫ですよ。」
「私だったら、次の日から仕事させられます。」
横に座っている妻からは、
「早く手術するって、言って」
という催促のオーラが出ていた。
(しかし実際、逆の立場だったらどうだろう・・・)
(妻が癌になって、 目の前の医者に
手術すればほとんど治ると言われたら・・・)
手術しないで治すなんて
「馬鹿なこと言ってんじゃねえ」って、言いそうだ・・・)
「3分の2を取っても、3分の1は残るんだな・・・」
「そう、そうよ。
胃を取ってもしばらくすると腸が胃の役割をするっていうし、大丈夫よ。」
結局決めたのは、
目の前にいるお医者さんの態度だった。
信頼できそうだった。
言葉の端々に、
手術への自信が感じられた。
(仮に執刀医が、あの若い内科医だったら、サインしてないだろうな・・・)
「本当は、3か月先までスケジュールが埋まっていますが、
あなたの場合は、早い方がいいでしょう。」
「12月13日なら、なんとか時間が空けられそうです。」
「この日に決めましょう。」
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