フツーの女子大生だった私の転落の始まりと波乱に満ちた半生の記録 第37話 最終回
ラストシーン 最終回
《ここまでのあらすじ》初めて読む方へ
あることがきっかけでショーパブ「パテオ」でアルバイトをしている大学生の桃子は、幾多の障壁を乗り越え、ついにはナンバーワンの座に上り詰める。桃子はオーナーの川崎に取り入り、強い復讐心と、完全なる頂点に立つため、店を取り仕切っていた玲子をパテオから追い出す。
女王様のようにスタッフ達を意のままに仕切るようになった桃子だが、早くもナンバーワンの座はミユという若いホステスに奪われそうになっていた。焦りと不安が桃子を追い詰め、店では傍若無人さで評判を落とし、彼女は過食嘔吐に陥っていた。
川崎が桃子からミユに乗り換えたことで桃子の転落に決定打が打たれた矢先、ずっと桃子を苦しめてきたあの悪夢が正夢だったことを知る。
逃げ場のない、闇の一本道で突然何者かに追いかけられ襲われる。憎悪の塊のような手に追われ、ついに階段から落ちていく桃子、地の果てまで堕ちていく感覚の中に、どこか、もうこれ以上堕ちることはないのだと安堵する自分がいるのだった。ついに最終回!
やっと…
これでもう終わるんだ。
堕ちるところまで堕ちて
もう、これ以上堕ちることはない…きっと。
…あの夢
正夢だったんだ、やっぱり
地下道へ通じる、闇から闇へと果てなく続くかのような階段
落ちている間、スローモーションみたいに感じた。
激しい痛みが伴ったのは一瞬だけだった。
不思議と恐怖はなかった。
あの黒い憎悪に満ちた手から逃れられたせいか
むしろ安堵感が大きかった。
崩れ落ちるように地面に体を横たえる自分の姿が
なぜか視界に見えた。
地面に体を打ち付けた記憶はなぜか、全くなかった。
私は遠のく意識の中、魂が体から抜けたのだと感じた。
あ…死んだんだ 私
へえ、若くして死んだか
おばさんになる前に死ねて本望かもね…
薄れる意識の中で色んなことにを思ったけど
実際には私は階段から落ちながらもう意識を失っていたのだ。
「予知夢って本当にあるんだって知った」
私は膝を抱えて、控えめに笑った。
「気がついたら病院のベッドの上、にいた?」
私の長い昔話に黙って耳を傾けていた、彼も
さすがに苦いものでも口に入れたかのような顔を向けている。
話しの冒頭辺りでは、やかましく響いていたテレビも
いつのまにか消えていた。
「で、誰か分かったの?その黒い手の正体」
私は首を振った。
「終電もとっくに終わってて
真っ暗で、目撃者もいなかったし」
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