昭和版/音楽業界用語辞典:

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概要:


 音楽業界では独自の言葉がある。これはその代表的な言葉を網羅した一大辞典である。


 しかし、これらはクラシック系またはジャズのバンド系の人々から発生した言葉であるため、ゲーム系やDJ系等の打ち込み専門ミュージシャンが増えてきた昨今、使われるケースが減っており、文化庁では古語としての保存のため検討委員会を発足させた。


 例では語尾を伸ばす形を中心に表記しているが(例:ブーデー、スーバー等)語尾の長音は外す事も多い(例:ブーデ、スーバ等)。


 また言葉文化の崩壊がささやかれる昨今、これらは更に変化をとげ、さらに短縮形として表現される事もある。例えば「バスに乗る」は本来「スーバーにリーノー」が正しい形態であるが、最近の音大生の間では「スバにリノ」、また更に短縮して「スバリノ」と表現する場合も多く、年配の音楽家達はこれら言葉の乱れに心を痛める今日この頃である。  


 なお発音についての音声による解説は、音楽業界用語講座の元祖である「タモリ」の再発CDに収録されており、併用教材として利用する事を強くお奨めする。


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容姿・形態:


 ・ブーデー : でぶ


 ・ゲーハー : はげ


 ・スーブー : ブス。容姿的の優れない女性に対して使われる。


 ・くりそつ : そっくり。容姿の他にも曲が他の曲にそっくりなどの場合にも使われる。


 ・ろいくー : 黒人または黒人音楽系の総称。

  用例:「ろいくーのノリだね」。反語:ろいしー


 ・ろいしー : 白人または白人の作る音楽の総称。反語:ろいくー



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乗り物:


 ・スーバー : バス


 ・シータク : タクシー


 ・マルクー : 車、乗用車。場合によってタクシーを指すこともある。


 ・リーノー : 乗る。車に乗る事を意味するが、時には女に乗る=性的交渉を持つ、という俗語として使用される事もある。


 ・楽器車・機材車 : 楽器やPA機材等を運ぶ車。たいがいはバンで、後方の窓は黒く塗って目隠ししてあり、レコード会社名やバンド名がはいっている。あちこちに機材を移動しているため、側面はぶつけてボコボコになっているのが普通。



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金銭:


 ・ならび : ミュージシャンの給与は源泉税を取られて渡される。このため、1万円を払う場合、領収書には11、111円と記載し、1、111円は源泉税として税務署に収められる。同じように相手に払う額が3万、5万等の場合には33、333円、55、555円というように同じ数字が並ぶ事になる。このようなケースを「ならび」といい、演奏料の支払い等には「じゃ領収書はならびで」といった言い方をする。


 ・とり : 単純にミュージシャン側が領収する金額。

  用例:「とりの30」(30万円もらえるという事)。録音の「とり」の項も参照。


 ・ラーギャー : ギャラ、演奏料や作曲料等の賃金の事。

  用例:ラーギャーがスイヤー(ギャラが安い)。


 ・すいやー : 安い。報酬の値段が安い、楽器の値段が安かった等、色々な局面にて利用される。


 ・印税 : 曲を作詞・作曲した人(場合によっては編曲した人)(著作権者)や、制作費を出資した人(原盤権者)に支払われる楽曲の使用料。通常は著作権印税の事をさす。ヒットするととてもオイシイが、世の中そう甘くなく印税で生活できる音楽家はごくわずかなのが実態。CDの場合、通常売り上げ(卸価格から諸雑費を引く)の6%の金額を作詞・作曲者・出版社(本の出版とは違い、音楽の著作権を管理する会社)で取り合う。取り分は33%ずつや作詞作曲家で25%ずつ出版社が50%等色々ある。


 ・とっぱらい : レコーディングやコンサート等に参加した演奏者に対して作業終了後にすぐにギャラが支払われる事。たいがいは楽屋・スタジオの出口にインペグ屋(別項参照)が領収書を持って待っており、ミュージシャンはその領収書にサインをしてギャラをもらって帰って来る。


 ・だーたー : 只、無料の意。食事等が無料というケースもあるが、製作費ゼロという場合にも使われる。

  用例 : 「だーたーのしーめー」(無料の食事)、「だーたーのとり」(演奏料の出ないノーギャラ仕事。主に友人関係のインディーズCD制作等の場合に使われる)。



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衣食住:


 ・シーメー : めし。広義に食事の事をさす。


 ・シースー : 寿司


 ・ラーハー : お腹。

  用例:ラーハーがタツヘー(腹が減った。この場合「が」を省略する事もある)。


 ・たつへー : 減った。ラーハ-の項参照。


 ・いーくー : 食べる。

  用例:シースーをイークーにクーイー=寿司を食べに行く。イークーとクーイーの使用法の違いに注意が必要。


 ・まいうー : 主に食事が美味しい事をさすが、演奏が上手いと言った事に使われる事もある。



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数字:


 業界用語、特にクラシック系では数字を音名にして表現することがある。この場合使用されるのはドイツ音名で、CDEFGAHで表される。Aの次がBではなくHになっているのは音楽史上の理由があり詳しくは専門書を参照されたい。 


 上記のCDE~の発音は「ツェー、デー、エー、エフ、ゲー、アー、ハー」となる。ただし英語読みのAがドイツ語読みのEと一緒になってしまうため、これを区別するためにEを「イー」と発音する事も多い。


 上記を利用して、C=1,D=2,E=3というように数字を割り振り、H=7としてお金の金額表現に利用する。


 ・用例:ツェー千ゲー百=1500円。また金銭の単位がはっきりしている場合には千百という数字を抜かす事もある。例えば明らかに1万円くらいの金額とわかっている場合には上記を「ツェーゲー」という。


 場合によっては、これによる勘違いも起こりうる。例えば「今回ギャラ安くてツェーゲーでゴメン!」等と言われた場合、1万5千円もらえると思ったら1500円だった、等という笑えない話も存在する。


 上記の表記では8と9が表現できない。この場合8を「オクターブ」と表現する。例えば「オクターブ千」は8千円を意味する。9については残念ながら表現方法がないため、9と素直に表現する。


 なお、この表現の創始者は東京芸大在学中の山田耕筰氏であった(玉木宏樹氏談)。


 追記:別ルートからの情報で、この表現は近衛管弦楽団から始まった説が登場した。だとすると、近衛管弦楽団のコンマスとかやってたうちの父親が発祥の一人なのか?


 追記2:上記の玉木宏樹氏の著書「猛毒! クラシック入門」には、何故シの音程が B と H に分かれてしまったか? が書かれているので、興味のある人は参照してみると良いだろう。



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異性関係・生理関係:


 ・りーやー : 異性と性的交渉を持つこと。

  用例:りーやーるーすー(性的交渉をする)


 ・コメオー : 女性性器の事。転じて異性と性的交渉を持った場合にも使用される。

  用例:こめおーたーしー(女性と性的交渉を持った)。


 ・コーマン : コメオーと同義。またカルトSFマニアの多い音楽業界では、映画監督ロジャー・コーマンの「原子怪獣と裸女 」といった作品の映画談義と猥談を微妙に混ぜた会話によく登場する言葉でもある。


 ・えーへー : 屁


 ・べんしょん : 小便。

  用例:べんしょんにくーいー(小便に行く)。また始終トイレに行っている人を指してジョージベンションなどというオヤジギャグも開発された。


 ・ソークー : 大便。

  用例:そーくーたいしー=大便をしたい。


 ・れーたー : 「たれる」の意。主として用便関連の語と共に使われる。

  用例:そーくーれーたー=大便をした。


 ・むいねー : 眠い


 ・かれたつ : 疲れた


 ・なおん : 女性の意


 ・るーすー : 「する」の意。主として異性と性的交渉を行なう事を指す。「りーやー」の項も参照。


 ・たーしー : 「した」の意。「るーすー」の過去形。主として異性との性的交渉を持った事を意味する。


 ・たいしー : 「したい」の意。主として異性との性的交渉を持ちたい希望を表現する時に使用する。

  用例:こめおーたいしー=女性と性的交渉が持ちたい。


 ・じょーしょーぶりやー : 音楽医学用語で処女膜を破る事を意味する。転じて初めて仕事をする、新しい楽器を初めて使うというようなケースでも使用される。



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作業:


 ・とり : 録音する事。またはギャラの取り分。


 ・かき : 作曲または編曲する事。譜面に音符を書く事に由来している。上記の「とり」と組み合わせて「とりの50、かきの30」(録音料50万、作編曲料30万)という風に使用する。


 ・まき : 時間がなくなっている事。テレビ局で収録時間がなくなって来た時に、アシスタントが手をクルクルと回す事に由来する。

  用例:「すんませんマキが入ってます」。またスタジオではミキサールームとスタジオが隔離されているため、スタジオ時間が足りなくなって来た時にディレクターが手をクルクル回して時間が足りなくなった事を示す。さらにテンポフリーで3分間のピアノソロが欲しい等の場合、時計を見ないでノロノロと演奏していたりすると、ミキサールーム側からマキのジェスチャーが入ってテンポを上げるか、そろそろエンディングに入ってくれ、との指示が出る事もある。


 ・ケツカッチン : 仕事の終了時間が予定通り終わる事。または次に仕事が入っているため予定の終了時間に終わらせて欲しい事。

  用例:「すみません、次あるんでケツカッチンで...」。


 ・トラ : エキストラの略。頼まれた時間に別な仕事が入ってしまい、元の仕事に代役を入れたりする場合や、急病で仕事に行かれなくなり別な人を頼む場合等「トラを入れる」というように使用する。


 ・落とし : マルチトラックレコーダーに録音された音を通常のステレオやモノラル(最近ではDVD対応のマルチチャンネルの場合もあり)ミックスする作業の事。ミックスダウン、トラックダウンという言葉から由来する。

  用例:「とりの5日、落としの2日(録音に5日かけミキシングに2日かけるの意)」。


 ・TD(MD) : 上記落としの項目にあるトラックダウンがTD、ミックスダウンがMD。ミニディスクのMDと混同しないためTDというのが一般的。


 ・MA : マルチオーディオの略。正しくはダビング。映像用に録音された音楽や効果音等の多数の音をひとつにまとめあげ、最終的な音付き映像を作る作業を言う。MA専用のスタジオがあり、機材的には音楽録音スタジオにビデオ機材がミックスされた感じ。MAという言葉自体は和製英語で、日本テレビが発祥の地とされている。


 ・リテーク : 録音やりなおしの意。依頼者(クライアント)の意志と違う作品が出来上がってしまった場合に起こる恐怖の事態。リテークが出た場合にはリテーク分のスタジオ代をレコード会社が負担したりするが、予算がない時などは、なんとかミックスを変えただけで逃げられないか?等、色々と工夫がこらされる。時としてこのリテークの出たボツバージョンの方が本チャンより良かったりする事もある。要はクライアント様のご意向次第。


 ・ボツ : 日本語では没。ダメテークの事。ボツテーク、ボツ曲等、色々なケースで利用される。現場の製作者としてはあまり聞きたくない言葉の1つである。CD等で「特別ミックスを2曲収録!」などと上手い事を言っている場合でも実は追加の2曲は「せっかくだからこのボツテーク2曲入れとこうか?」というようないい加減なケースも多く、「未発表音源2曲追加」などと言われて買ってみたらカス曲だった、というような事はよくある事である。


 ・まわす : テープレコーダーが主流だった頃、テープを回して録音(または再生)を開始する事を意味した。

  用例:「じゃ試しに弾いてみるからまわしてみてくれる?」、「じゃまわします」。


 ・コンペ : 英語のコンペティションの略。競争、コンテストの意味。何人かの作曲家や作詞家に曲を発注し、クライアントが気に入ったものが採用される。「今回の曲はコンペなんでよろしく」といった使い方をする。コンペに落ちた曲は即ボツにするのではなく、作詞作曲家のストックとして保存され、似たようなコンペがあるとまた出してみたりする。したがって人によってはコンペ用の曲を何十曲とストックしてあり、相手の要望によってライブラリーから引っ張り出して採用されるまで提出し続ける。音楽のコンビニみたいな事をやってる関係者も少なくない。


 ・ブース : スタジオにある(音響的に)隔離された部屋。ボーカルやピアノ等をブースでバラバラに録音していれば、各パートごとに録り直しが可能。また、ミックスの際にそれぞれ別なエフェクトをかけたりできる。通常ブースというとボーカルを録音できる程度の小さな部屋をさすが、大きなスタジオになるとボーカルブース、ピアノブース、ドラムブース等複数のブースが存在する。人によってはかっこをつけてアイソレーションルーム(隔離された部屋の意)と呼んだりする。

 また幽霊が出るという噂もたいがいブースに出る事になっている。例えば東京タワー近くにある某スタジオのブースは、時々お爺さんが覗きに来る、というので有名。


 ・びーた : 旅の意。音楽ではコンサートツアーを「びーたに出る」、「びーたの仕事で今月はいない」等というように使用する。


 ・びーくー : クビの意。バンドやスタッフをクビになる事。


 ・あたま : 曲の最初の部分や、スタジオ時間の最初等の意。

  用例:「頭から8つ」(曲の最初から8小節目)、「頭からいなくてもいいよ」(スタジオ時間のスタート時点からはいなくても大丈夫)。反語:けつ


 ・けつ : 曲の最後の部分や、スタジオ終了時間の意。

  用例:「けつから4つ目のあたまで抜いて」(曲の最後4小節目の先頭で録音を解除して)、「けつが見えない」(作業終了時間が見えない)。反語:あたま


 ・入れる : 録音ボタンを押して、録音を開始する。

  用例「Bの2つ目から入れて」(Bの2小節目から録音を開始して)。反語:抜く


 ・抜く : 録音モードから抜けて再生モードに入る事。

  用例:「今んとこの3つ前から入れて、3拍半で抜いて」(現在のテープ位置から3小節前から録音し、3拍と8分音符行った所で録音をやめて」。反語:入れる


 ・ゲネプロ(またはゲネ) : 本番と同じ流れで行う通しリハーサルの事。ドイツ語のゲネラルプローベに由来する。テレビ番組等では本番前の最後のリハとなり、出演者は全員本番と同じ衣装を着用してリハを行う。超一流ミュージシャンを頼むと、ゲネプロ10分前に会場に飛び込んで来て、初見でゲネプロをこなし、そのまま生番組の本番に突入する事もあり寿命が縮む。


 ・一発もの : 1つのコードだけで演奏される楽曲。ソウル/ファンク/フュージョンでよく使われる。ベースが中心になる場合にはベース最低音である E を基準にして Em のコードでソロを回したりする。またテレビや映画の劇判では雰囲気だけで行きたい場合「30秒なんで一発もので行きましょうか?」等と言う事もある。


 ・いきふんぱついち : 雰囲気一発の事。ソロやフィーリングを大事にしたレコーディングでは、その場限りの雰囲気を大事にする。そのため、あまり多くを説明せず「そこは全体の雰囲気に合わせて、いきふんぱついちで行っちゃいましょう」と、多少の問題点は無視して一回のテークで OK を出したい場合などに使う。


 ・ : 指揮棒の事、または指揮棒を振る事、指揮棒を振る人を指す事もある。

  用例:「明日は棒はどうすんの?」「棒振りますから、バランス見といてね」

 また、指揮棒を振る事を「棒振り」「振り棒」という事もある(棒振り3年、書き8年の項も参照)。



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あいさつ:


 ・おはよーございます : 時間に関係なく、その日最初に会った人物、行った場所でこのあいさつをする。音楽・芸能界に共通するあいさつであったが、一般人が真似をするケースが増えたため、最近ではこのあいさつをしないケースも目立っている。これに代わる言葉として「ども」とか「まいど」等の簡単なあいさつが使われる場合が多い。


 ・おつかれさま : 仕事が終了した時のあいさつ。おはようございますと同じく、一般人が真似をして使うようになったため、あえて使用を控える音楽関係者は多い。


 ・かれおつまさ : おつかれさま、の音楽業界用語バージョン。略して「かれおつ」と言う場合もある。方言として「さまつかれお」もある。


 ・たーまー : 「また」の意味。スタジオから帰るミュージシャンに「それじゃあ、またね」といった事を伝える時に使う。


 ・しくよろ : よろしく、の意味。「またよろしく」は「たーまーしくよろ」となる。

  たーまーの項も参照。


 ・あーじゃくーぎょ : じゃあまた!、の意味。

 「じゃあ」=「あーじゃ」の理解は容易であるが、「くーぎょ」はヒネリが入っており注意が必要である。

 「また」は本来「たま」と表現されるべきであるが、ここでは「たま=玉=ぎょく」と解釈し、この「ぎょく」を業界用語に変換することにより「ぎょく=くーぎょ」となった。

 音楽業界用語としても古語に分類されると考えられ、現在、文化庁日本語表現検討委員会の小委員会においての検討課題となっている。



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楽器・奏者・関係者:


 ・オリン : バイオリンの略称。


 ・メリン : オリンから派生した言葉。女性のバイオリン奏者をさす。


 ・ローチェー : チェロの事。


 ・ヤノピー : ピアノの略。


 ・タイコ : ドラムの俗称。


 ・パーカス : パーカッションの略称。


 ・ターギー : ギターの意。


 ・アコギ : アコースティックギターの総称。


 ・アコベ : アコースティックベース、ウッドベースの略称。


 ・エレベ : エレクトリックベースの略称。


 ・スーベ : ベースの意。


 ・ペット : トランペットの略称。


 ・パツラー : 「ラッパ」の意。トランペットやトロンボーン等の管楽器全般をさす。


 ・ボーヤ : 機材運びやスタジオアシスタントの総称。主にミュージシャンを目指す若人が有名ミュージシャンのアシスタントとしてボーヤになる。運転免許と体力は必須。また人格面でも明るく快活である事を要求される。日本古来の徒弟制度にもとづく階級では最も下位に位置する存在。

 師匠に殴られて田舎に帰京するボーヤが90%以上を占めるが、中には師匠よりも出世するボーヤもいる。なりたい人は3日くらい徹夜する練習をしておくこと。


 ・インペグ屋 : 人集め屋。作編曲家やディレクターに頼まれたミュージシャンを集める業者。業務として行なうには国に専門の申請が必要。フリーのスタジオ系ミュージシャンになりたい場合には、このインペグ屋のリストに乗らなければ仕事は回って来ない。また、呼ばれて行って良い演奏ができなければ格下げされ、ギャラが安くなるか、ろくな仕事が回ってこなくなるか、お呼びがかからなくなる。

 レコーディングの際(特にメンバーの集まるスタート時と、終了時)には立ち会い、作業終了後にとっぱらい(別項参照)でミュージシャンにギャラを渡す。スタジオのロビーで背広姿の人が一人待っていたらインペグ屋の確立が高い。


 ・ディレクター : 音楽制作の場での現場監督。作業内容はケースバイケースで録音に関する全工程を仕切る場合もあれば、作編曲家にすべてまかせてしまい、現場では食事の心配しかしないケースまで様々である。また作編曲家と共同作業の場合もある。例えばオケパートの仕切り(演奏のダメだしや細かい指示)を作編曲家に任せ、歌入れのダメだしだけを担当する等のケースもある。

 所属先は様々で、レコード会社専属の場合もあれば、特定の仕事に単発で雇われる事もあり、また制作先の会社のスタッフがディレクターとなる場合もある。


 ・ジャーマネ : マネージャーの略。アーティストのスケジュール管理やお世話をする。奴隷のようにこき使われる人もいれば、アーティストを仕切って主導権を握っている人もおり、立場は様々。アーティスト優位の場合には夜のお相手探しまでさせられるケースもある。またアーティストが売れないうちに地方回りの世話などしている間に、ちゃっかりアーティストとできてしまい、結婚引退などというケースもよく見受けられる。


 ・光り物/ヒカリモノ : キラキラとしたシンセサイザー系の音色の事をさす。1980年代後半以降にポリフォニックシンセが一般的に使われるようになってから登場した言葉。音色の雰囲気から「キラキラ系」などと呼ばれる事もある。

 また、ドラムのシンバル系の音をさす事もある。

  用例:「サビの所がちょっと地味だから光り物を足してみましょうか?」


 ・うわもの : 高い音域の音色、またはドラムで上側に配置されているシンバル類の音をさす。

  用例:「うわものがちょっと多い」



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場所・会社:


 ・シナソ : 信濃町ソニースタジオの略。現在は廃止されたが、居住性が高く、スタジオ・TDルーム・マスタリングルーム等、音楽制作の一連の作業を1つのビルでまとめて行なえる場所として注目を集めた。1990年代後半のテレビドラマ「With You」で登場するスタジオがここ。現在は建物ごとなくなった


 ・ロクソ : 六本木ソニースタジオの略。現在は廃止され鯛スタジオという名称になっている。地下1階は六本木ピットイン(ライブハウス)のため、どちらも音、機材搬入で同ビルのテナントともめ事が多かった。ちなみに鯛スタジオはビンテージキーボード(ハモンドやエレピ)が充実しているので個人的にオススメ!(その後、建物ごとなくなりました)


 ・一口坂 : ポニキャン(別項参照)の所有スタジオ(現在は廃止)。その名の通り、千代田区一口坂にあった。複数のスタジオがあり、オーケストラの収録にも対応。スタジオの残響効果を変えるために天井の高さが変えられる機能が付いていた気がするんだが、使った記憶がない。ミュージシャンの待合用ロビーにあるゲーム機の種類が豊富なのでも有名だった。

 漫画「プラスティックドール」(高橋由佳利)のスタジオシーンに出てくるのが、この一口坂スタジオ。知ってる人が見ると「あ、これ一口坂じゃん!」とすぐに分かる辺り、さすがプロの漫画家さんです。

 なお、筆者が1980年代に一口坂でレコーディングしている貴重なビデオは以下を参照の事。

 コーラスピッチ修正の出来ない時代のプロのコーラスレコーディングの技を見よ!


 ・エヌ朝 : テレビ朝日の旧称。元々はNETというテレビ局名だったのがテレビ朝日に変わった経緯がある。テレビ局内に一般貸しをするスタジオがあったため、ミュージシャンの多くはテレビ朝日という名前に改称した後もNET朝日という名称をもちい、受け付けの女の子を困らせて喜んでいた。現在使うと変な顔をされると思うので注意するように。


 ・赤コロ、内コロ : その昔、コロンビアが2ヵ所にスタジオ・事務所を持っていた頃の名称。内コロは内幸町コロンビアの略、赤コロは赤坂コロンビアの略。

 インペグ屋(別項参照)からの電話を間違えて別な場所に行ってしまうケースもあった。現在では社員すらも内コロの存在は知らないと思われるので、ウンチク話として話題にするとウケるかもしれない。ちなみに赤坂も2004年中に引き払い場所を移動した。スタジオ機能はなくなってしまった。


 ・ビアコロ : コロムビアの意。


 ・ニーソ : ソニーの意。


 ・ポニキャン : ポニーキャニオンの意。


 ・リハスタ : リハーサルスタジオの略称。


 ・スタセン : その昔、六本木の防衛庁(現在のミッドタウン)並びにあった日活スタジオセンターの略。



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機械:


 ・マルチ : マルチトラックレコーダー=多チャンネルのレコーダーの総称。この場合4チャンネル以上のトラック数を持つレコーダーをさす。「マルチをまわす」は通常、24または48チャンネルのマルチトラックレコーダーを回して録音する事を意味する。

 初期は磁気テープを使ったアナログマルチ、1980年前後からデジタルデータを磁気テープに記録するデジタルマルチが登場し、近年は廉価なハードディスクレコーダーに取ってかわられた。しかしアナログ時代のテープ独特のサウンドはやっぱり良かったと考える人も多い。


 ・ : ミキシングコンソールの総称。小は8チャンネル程度から、大は96チャンネル程度まで広い意味で使われる。また照明用のコントローラーも同じように呼ばれる。海外ではミキシングコンソールと言わずにボードと呼ぶ事も多い。


 ・SSL、ニーブ : 代表的なミキシングコンソールの名称。SSLはソリッドステートロジックの略。他のスタジオとの互換性からこのどちらかを入れているスタジオは多い。その他の機種としてはフォーカスライトやアドギアー、API等があり、それぞれ個性のある音がするため、特定のコンソールを使用したいためにスタジオを指定する音楽家もいる。


 ・ななろく、さんぱち : アナログテープの走行速度の呼び方。ななろくは毎秒76センチ、さんぱちでは毎秒38センチのテープに音を記録する。テープ幅はマスター用のもので1/4インチか1/2インチ、マルチ(別項参照)で2インチが普通。回転数が早いほど高音域まで綺麗に録音できる。最近ではマルチはデジタルレコーダーやハードディスクレコーダーを使用するケースが多いが、最終段階の2トラックテープでは1/2インチで76センチの速度でアナログテープを回すケースも多い。アナログテープを通すことにより音に温かみが出る、というのがその理由である。


 ・ハーフ(インチ) : 1/2インチの2チャンネル(マスター)アナログテープ(またはテープレコーダー)の事。用例「マスターはハーフにしときたいんですが」。シブイチも参照の事。


 ・シブイチ(6ミリ) : 1/4インチ=6ミリの2チャンネル(マスター)アナログテープ(またはテープレコーダー)の事。アナログテープ全盛期のマスターテープはこのテープ幅が主流だった。現在でもアナログにこだわる場合には利用され「マスターは6ミリでください」などといった言い方をする。


 ・トークバック : 録音スタジオではミキサールームとスタジオ内が音響的に隔離されている。このため、会話をするためにはマイクを通す事になり、これをトークバックという。通常スタジオ側にはコンソールにトークバック用のマイクとスイッチが用意されている。またスタジオ側ではトークバック用にミュージシャンの前にマイクを立て、これを通して会話を行なう。このマイクは録音時にはオフにされる。またドラムやピアノのようにミュージシャンのすぐ近くにマイクがある場合にはこれをトークバック用のマイクとしてあえて会話用マイクを立てない場合もある。またスタジオ側ではミキサーとディレクターの両者が話をするため、ディレクター用のデスクにトークバックのシステムが装着されているケースや、小型の赤外線式トークバックボックス(手のひらに乗る程度のサイズ)を使用する事も多い。


 ・チャンネルシート/キューシート/トラックシート : マルチトラックのレコーダーの各チャンネルに何が録音されているかを記した表。通常テープに録音する場合にはテープの箱にこのシートと譜面、資料等をまとめて入れておく。これが無いと後でミックスをやりなおしたり、CD再発等の時困った事になる場合が多いので面倒でもちゃんと記録しておくことをオススメする。


 ・キューボックス : スタジオでミュージシャンのヘッドフォンに音を返すための小型ミキサー。ボリュームとパンだけが付いており、ヘッドフォンアウトが2~4つくらい付いているのが普通。4チャンネルから6チャンネル程度の物が一般的。機種にもよるが全てのチャンネルがモノラル受けになっているものや、1チャンネルだけ1つのフェーダーでステレオ受けができるようになっているものもある。通常は1~2チャンネルにステレオの仮ミックス(1つ目のフェーダーがステレオになっている場合は1チャンネルのボリュームだけ)、最後のチャンネル(4チャンネル目、または6チャンネル目)にドンカマ(別項参照)が返り、残りのチャンネルにミュージシャンの希望する音を返す。スタジオ内には色々な場所にマイク用のコネクターの他に、このトークバック接続用のコネクターが用意されている。


 ・キュー : キッカケの意味。色々なケースで使用される。例えば繰り返しのリズムパターンから次のフレーズに移るキッカケを誰かが出す場合、「キュー出しをしたら次のパターンからBのフレーズに飛んで」等と言われる。

 またキュルキュル言う音の総称としても使われ、アナログテープを早回しして音を探す場合にもキューという言葉が使われる。


 ・スレート/スレートトーン : アナログテープが主流だった頃、テープに録音された曲と曲の間に次の曲のクレジット(これは音声で「M3のテーク2」といった感じで録音された)と共に50~60Hzの低周波を10~20秒ほど録音していた。デジタル録音では頭出しはボタン1つで可能だがアナログ時代には曲の頭を探す場合、こうして録音された音をテープを早送りや巻き戻し中にヘッドに軽く近付け(完全に密着させるとテープの劣化をまねくので近付けるだけ)、高速で動くテープのキュルキュルという音の中からピーーーっと聞こえる部分を探して頭出しを行なっていた。この低周波の音をスレートトーンと呼んでおり、古いコンソールではトークバックのボタンの他にスレートというボタンが付いている場合もあった。


 ・タイムコード(TC) : レコーディングの際にテープに記録する時間信号。通常SMPTE(シンプティと発音)を記録し、これをタイムコード/シンク信号等と呼ぶ。元々はアメリカの映画・テレビのための同期信号から来ている。日本のテレビ・ビデオでは1秒間を30に区切り1/30の単位を1フレームと呼ぶ。つまり30フレームで1秒となる。ヨーロッパではこれが29フレーム、フィルムでは24フレームとなり、相互の互換性には注意が必要である。通常音楽で使用する際には30フレームのノンドロップ(レコーディングの際にアシスタントにタイムコード記録を頼む場合には「ノンドロップの30で」と指定すればOK)という規格を選んでいれば間違いがないが、音楽にこのSMPTEが使用され始めた80年代にはまだシンク信号発生用のジェネレーターの規格がまちまちだったため混乱が起こる事が多かった。したがって現在でも80年代のテープをリミックスしようとしたりする時に、この問題が起こる事がある。一般的に相性が悪いのはローランドのシンクロナイザーSBX-80とマークオブザユニコーン(MOTU)の初期型MidiTimePiece(MTP)で録音されたものであり、スタート時点ではタイミングが合うのに途中からじょじょにシンクがずれてくる。こういった場合、オリジナルで使用したシンクロナイザーと同型機を持ち込む必要があり、90年代初頭に製造中止となったSBX-80の中古価格が高騰した事がある。

 ちなみに間違ったフレームレートで記録した信号で演奏をさせようとすると1秒毎に演奏タイミングのずれた音が出てくるのですぐに分かる。


 ・よんぱち(3348)、にーよん(3324) : ソニーのデジタルマルチトラックレコーダーの略称。その名の通り3348では48チャンネル、3324では24チャンネルの録音が可能である。3348は3324の後継機にあたり、テープには上位互換性があるため、3324で録音したテープに残り24トラックを追加して録音する事が可能。現在3324はほとんど使用されないが、両機が混在していた時期には混乱を避けるため「24回し(にーよんまわし)」、「48回し(よんぱちまわし)」という言い方で区別をしていた。

 なお3348のテープには技術的に更にチャンネルを増やす余裕があり、3364が出るのでは?という噂が流れた事があるが、結局録音解像度を上げた3348の上位機種、3348HRが発表された。しかしこの機種はほとんど普及しなかった。


 ・マック(Mac または Macintosh) : コンピューターの名称。

 20世紀の時代には、音楽・デザイン業界等、クリエイター業界にしか使われていなかった機種。

 21世紀に入ると、意識高い系と呼ばれる人々が、スタバで使うようになり、純粋にコーヒーを楽しみに来た人たちを奈落の底に突き落とす事で有名になった。


 ・キーペ(ゲート) : 現在使われているゲートの元祖。キーペはキーペックスの略でバレーピープルという会社の製品だった。ご存じのようにゲートはドラムの音にリバーブをかけてゲートで切る事により特殊なドラム音を作り出していた。また同じくドラム音のスネアやタムのかぶりをカットするために使われるわけだが、キーペックスが流行していた頃にはほとんどのチャンネルにゲートをかけるという事が行なわれ、余韻はみんなブッチギリという事も多く、キーペックスだけでラックに並べて装備されているスタジオも多かった。流行に弱いディレクター等は「それキーペかけましょう」となんにでもキーペックスをかけたがりスタジオで顰蹙を買うことも多かった。


 ・ノンドロップの30 : タイムコード(TC)の項を参照


 ・マスター/スレーブ : タイムコードやその他のシンク信号を使って2台の機器(レコーダーやシーケンサー等)を同期させる場合、その親となる機械をマスター、子供となる方がスレーブとなる。レコーダーを複数回してレコーディングする際などには「今日はスレーブ回しありで」といった指定をする。


 ・ドンカマ : 曲を録音する際にミュージシャンの聞くクリック信号の事。簡単なレコーディングの際にはスタジオに常備されたリズムボックスで、他のシーケンサー等とシンクさせて使用する場合にはアレンジャーの作ってきたドラムのカウント音でレコーディングするケースが多い。元々はコルグのリズムボックス「ドンカマチック」が語源となっている。

 レコーディングの際にドンカマの音量を大きく聞いているミュージシャンがいたりすると、その人のクリック音が漏れて録音されてしまう事がある。市販のCD等でも曲の静かな場所で良く聞くとドンカマ漏れが聞こえる事もある。静かな曲でドンカマを使用する際にはドンカマに使う音色に抜けの悪い柔らかい音を使うようにする。また曲中である部分だけ静かになってソロになったりするような場合にはミキサーに頼んで、その場所だけドンカマに送る音量を下げてもらったりする。


 ・クリック : ドンカマの項参照


 ・やおや : ローランドのリズムボックスTR-808の愛称。細かいリズムまでプログラムでき、各リズム音の音色をコントロールできるということもあり、画期的な物だったが発売当時はそれほど話題となる事はなかった。しかし80年代後半からのダンス物ブーム時に音色が面白い、とテクノ系人間に使われるようになり一気にブレークしてしまった。しかし、その時点ですでに製品は製造中止となっており、中古市場価格が大きく跳ね上がった。

 裏技的な使い方としてはステップ数を2にし、2ステップ目にカウベルの音をセットする。次にカウベルの単独アウトの音をスタート・ストップの信号インプットに接続し、テンポを一番早くセットする。さらに1ステップ目にクラップの音をセットし、カウベルの音量を最大にセットしてスタートボタンを押す。するとクラップの音が鳴った次の瞬間に2ステップ目のカウベルの音がTR-808自身を停止させる。これにより、簡易ハンドクラッパーを作る事ができる。

 1980年代にはこの方法で808をハンドクラッパーとして使うケースがあったが、やり過ぎると内部のトランジスターを壊してしまうという事があった。またこれに目を付けた某楽器店が808のハンドクラップ部分のみを抜き出したハンドクラッパーのコピーマシンを作ったが、ローランドに特許侵害として訴えられ製造中止になった。


 ・おかま : テープを入れるトースターのような機械。旧譜の復活音源やリマスタリングによるCD化の際、昔使われていたアナログマスターテープをデジタルに変換する事がある。この場合、テープが古くなっていると経年変化からテープに磁性体を貼りつけているノリがベトベトになり、磁性体がはがれたり、テープがレコーダーに巻き付いてしまったり、というトラブルが起こる事がある。

 こういった場合、テープを一度大型トースター(通称おかま)に入れ、高温にしてノリを固定するという事をする。これを「かまいれ」等と呼んだりする。

 ただしカマ入れしてノリを固定したテープは時間が経つと、今度はノリがパリパリになって磁性体が落ちてしまう事もあり、カマ入れは一種の賭けとなる事もある。


 ・デルマ : 筆記用具の「デルマトグラフ」の略。アナログテープを使ったレコーディングでテープを編集する場合、白のデルマを使って印を付けるのが一般的。 

 2インチのマルチトラックテープを使ってコマーシャル音楽等を録音する場合には、テープ上にかなり長い印を付けてスタート位置を探しやすくしたりしていた。これはまだレコーダーがデジタル管理されていなかった頃、確実にテープの頭出しをするために必須のテクニックだった。 

 デルマで印を付ける理由として「デルマ(特に白色)で付けた印はテープの磁性体に影響を及ぼしにくいから」という説があるが真偽のほどは未確認。


 ・オプチカル(オプティカル) : 光学の意味。その昔、ビデオが普及する以前は、映画の音はフィルムの音声トラックに波の形として磁気ではなく光学的に焼き付けていた。このトラックをオプチカルトラックと呼んでいた。テレビのコマーシャルでもオプチカルが使われる事があった。

 この場合、周波数特性が磁気テープよりも狭くなるため、ミキシング時に「今日はオプチカルで...」という風に頼んでおくと、ミキサーが音を光学処理向けの音質に調整してミックスしてくれた。



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その他:


 ・はこばん(はこ) : キャバレーなどのバンドで、特定の場所でずっと演奏の仕事を続ける場合に使われる。「はこ」は劇場の舞台手前にあるオーケストラボックスから由来している。

  用例:「ここんとこ、はこの仕事が続いちゃって」のように使う。


 ・劇伴 : 劇音楽の伴奏の意味。ここでいう劇音楽とはTV・映画等の曲をさし「劇伴の仕事なんだけどさー、スケジュールあいてる~」といった感じで仕事が来る。通常1つの番組で30~80曲程度の曲数を1~2ヵ月で完成させなければならず、仕事とするにはかなり特殊技術が必要となる。


 ・ざらはい : 灰皿の事。ミュージシャン(特にドラマー)が怒ってボーヤ(別項参照)に投げ付ける事が多い。


 ・たたく(叩き出し) : マルチトラックレコーダーを使ったレコーディングの際、同じフレーズのある場所は2度3度と録音せずに、1度目に録ったフレーズを別のテープレコーダーに移し、それを元のテープの必要な場所に、タイミングを合わせて移動する。この作業を「叩きだし」と呼ぶ。キッチリのタイミングでボタンを勢いよく叩いて音を出す事に由来している。例えば1コーラス目の2コーラス目でサビのバックコーラスが同じだった場合「2コーラス目は叩いちゃって下さい」という風に利用する。叩きだしにはそれ相応のリズム感が必要なため、アシスタントの腕が悪いと生で録り直すよりも、時間がかかってしまう事もある。

 なおソニーの3348(別項参照)の後期モデルでは、この叩きだし機能が標準で装備されるようになり、必要なフレーズをステレオサンプリングして必要な場所に叩きだせるようになった。


 ・ブロン : 風邪薬の一種。アルコール類と一緒に飲むとトベル、と70年代ロックミュージシャンが愛用していた


 ・エンタテインメント : entertainment を日本語にした場合の表記のひとつ。昔はエンターテイメントで通っていたが、発音にこだわりのあるレコードメーカーは請求書の名前が正確にエンタテインメントになっていないと書類を突っ返されるので注意が必要。


 ・噂の真相 : 各種業界の噂を追求する強力な雑誌(現在は廃刊)。全盛期には音楽業界のスッパ抜きネタも多く、同誌で流れた情報を確認しようとレコード会社に行ってみると「社長は逮捕されました」等とネタの確度が高い事に驚かされる事も多かった。


 ・棒振り3年、書き8年 : (棒を振る)指揮は3年くらいやっているとカッコがつくが、書き(作編曲)は8年はやらないとサマにならないという格言。個人的に「棒振り3年、書き8年、売れてるアイツは3ヶ月」というのも作ってみた。


 ・くりびつてんぎょー : びっくり仰天の事。略して、くりびつ、だけでも使う。


 ・アンダースコア : 英語で Under Score。日本では使われないが、いわゆるテレビや映画の BGM の事。テーマ曲に対してこの言葉が使われる。海外の関連文献にはよく登場する言葉である。



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安西 史孝

うる星やつら、Basara、はなまる君、ボンバーマンビーダマン、あらしのよるに、なんかのアニメの音楽を書いてる音楽家。 元 Jasrac 評議委員

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安西 史孝

うる星やつら、Basara、はなまる君、ボンバーマンビーダマン、あらしのよるに、なんかのアニメの音楽を書いてる音楽家。 元 Jasrac 評議委員

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