昭和版/音楽業界用語辞典:

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概要:


 音楽業界では独自の言葉がある。これはその代表的な言葉を網羅した一大辞典である。


 しかし、これらはクラシック系またはジャズのバンド系の人々から発生した言葉であるため、ゲーム系やDJ系等の打ち込み専門ミュージシャンが増えてきた昨今、使われるケースが減っており、文化庁では古語としての保存のため検討委員会を発足させた。


 例では語尾を伸ばす形を中心に表記しているが(例:ブーデー、スーバー等)語尾の長音は外す事も多い(例:ブーデ、スーバ等)。


 また言葉文化の崩壊がささやかれる昨今、これらは更に変化をとげ、さらに短縮形として表現される事もある。例えば「バスに乗る」は本来「スーバーにリーノー」が正しい形態であるが、最近の音大生の間では「スバにリノ」、また更に短縮して「スバリノ」と表現する場合も多く、年配の音楽家達はこれら言葉の乱れに心を痛める今日この頃である。  


 なお発音についての音声による解説は、音楽業界用語講座の元祖である「タモリ」の再発CDに収録されており、併用教材として利用する事を強くお奨めする。


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容姿・形態:


 ・ブーデー : でぶ


 ・ゲーハー : はげ


 ・スーブー : ブス。容姿的の優れない女性に対して使われる。


 ・くりそつ : そっくり。容姿の他にも曲が他の曲にそっくりなどの場合にも使われる。


 ・ろいくー : 黒人または黒人音楽系の総称。

  用例:「ろいくーのノリだね」。反語:ろいしー


 ・ろいしー : 白人または白人の作る音楽の総称。反語:ろいくー



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乗り物:


 ・スーバー : バス


 ・シータク : タクシー


 ・マルクー : 車、乗用車。場合によってタクシーを指すこともある。


 ・リーノー : 乗る。車に乗る事を意味するが、時には女に乗る=性的交渉を持つ、という俗語として使用される事もある。


 ・楽器車・機材車 : 楽器やPA機材等を運ぶ車。たいがいはバンで、後方の窓は黒く塗って目隠ししてあり、レコード会社名やバンド名がはいっている。あちこちに機材を移動しているため、側面はぶつけてボコボコになっているのが普通。



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金銭:


 ・ならび : ミュージシャンの給与は源泉税を取られて渡される。このため、1万円を払う場合、領収書には11、111円と記載し、1、111円は源泉税として税務署に収められる。同じように相手に払う額が3万、5万等の場合には33、333円、55、555円というように同じ数字が並ぶ事になる。このようなケースを「ならび」といい、演奏料の支払い等には「じゃ領収書はならびで」といった言い方をする。


 ・とり : 単純にミュージシャン側が領収する金額。

  用例:「とりの30」(30万円もらえるという事)。録音の「とり」の項も参照。


 ・ラーギャー : ギャラ、演奏料や作曲料等の賃金の事。

  用例:ラーギャーがスイヤー(ギャラが安い)。


 ・すいやー : 安い。報酬の値段が安い、楽器の値段が安かった等、色々な局面にて利用される。


 ・印税 : 曲を作詞・作曲した人(場合によっては編曲した人)(著作権者)や、制作費を出資した人(原盤権者)に支払われる楽曲の使用料。通常は著作権印税の事をさす。ヒットするととてもオイシイが、世の中そう甘くなく印税で生活できる音楽家はごくわずかなのが実態。CDの場合、通常売り上げ(卸価格から諸雑費を引く)の6%の金額を作詞・作曲者・出版社(本の出版とは違い、音楽の著作権を管理する会社)で取り合う。取り分は33%ずつや作詞作曲家で25%ずつ出版社が50%等色々ある。


 ・とっぱらい : レコーディングやコンサート等に参加した演奏者に対して作業終了後にすぐにギャラが支払われる事。たいがいは楽屋・スタジオの出口にインペグ屋(別項参照)が領収書を持って待っており、ミュージシャンはその領収書にサインをしてギャラをもらって帰って来る。


 ・だーたー : 只、無料の意。食事等が無料というケースもあるが、製作費ゼロという場合にも使われる。

  用例 : 「だーたーのしーめー」(無料の食事)、「だーたーのとり」(演奏料の出ないノーギャラ仕事。主に友人関係のインディーズCD制作等の場合に使われる)。



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衣食住:


 ・シーメー : めし。広義に食事の事をさす。


 ・シースー : 寿司


 ・ラーハー : お腹。

  用例:ラーハーがタツヘー(腹が減った。この場合「が」を省略する事もある)。


 ・たつへー : 減った。ラーハ-の項参照。


 ・いーくー : 食べる。

  用例:シースーをイークーにクーイー=寿司を食べに行く。イークーとクーイーの使用法の違いに注意が必要。


 ・まいうー : 主に食事が美味しい事をさすが、演奏が上手いと言った事に使われる事もある。



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数字:


 業界用語、特にクラシック系では数字を音名にして表現することがある。この場合使用されるのはドイツ音名で、CDEFGAHで表される。Aの次がBではなくHになっているのは音楽史上の理由があり詳しくは専門書を参照されたい。 


 上記のCDE~の発音は「ツェー、デー、エー、エフ、ゲー、アー、ハー」となる。ただし英語読みのAがドイツ語読みのEと一緒になってしまうため、これを区別するためにEを「イー」と発音する事も多い。


 上記を利用して、C=1,D=2,E=3というように数字を割り振り、H=7としてお金の金額表現に利用する。


 ・用例:ツェー千ゲー百=1500円。また金銭の単位がはっきりしている場合には千百という数字を抜かす事もある。例えば明らかに1万円くらいの金額とわかっている場合には上記を「ツェーゲー」という。


 場合によっては、これによる勘違いも起こりうる。例えば「今回ギャラ安くてツェーゲーでゴメン!」等と言われた場合、1万5千円もらえると思ったら1500円だった、等という笑えない話も存在する。


 上記の表記では8と9が表現できない。この場合8を「オクターブ」と表現する。例えば「オクターブ千」は8千円を意味する。9については残念ながら表現方法がないため、9と素直に表現する。


 なお、この表現の創始者は東京芸大在学中の山田耕筰氏であった(玉木宏樹氏談)。


 追記:別ルートからの情報で、この表現は近衛管弦楽団から始まった説が登場した。だとすると、近衛管弦楽団のコンマスとかやってたうちの父親が発祥の一人なのか?


 追記2:上記の玉木宏樹氏の著書「猛毒! クラシック入門」には、何故シの音程が B と H に分かれてしまったか? が書かれているので、興味のある人は参照してみると良いだろう。



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異性関係・生理関係:


 ・りーやー : 異性と性的交渉を持つこと。

  用例:りーやーるーすー(性的交渉をする)


 ・コメオー : 女性性器の事。転じて異性と性的交渉を持った場合にも使用される。

  用例:こめおーたーしー(女性と性的交渉を持った)。


 ・コーマン : コメオーと同義。またカルトSFマニアの多い音楽業界では、映画監督ロジャー・コーマンの「原子怪獣と裸女 」といった作品の映画談義と猥談を微妙に混ぜた会話によく登場する言葉でもある。


 ・えーへー : 屁


 ・べんしょん : 小便。

  用例:べんしょんにくーいー(小便に行く)。また始終トイレに行っている人を指してジョージベンションなどというオヤジギャグも開発された。


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