口下手童貞少年、ナンバーワンホストになる ① 決意編
「でもあれ、絶対ナンパ待ちだよ。」
窓越しのむなしい会話だった。
欲しくて欲しくてたまらないトランペットを、ガラス越しに見つめるドイツの少年の様なボーイズ。
ナンパする勇気もなく、
ただ1パーセントの確率の逆ナンを期待して…
もしくは、
ドS+ド淫乱な女が裸でダイハードみたいに車のフロントガラスを突き破って飛び込んでくる様なハプニングを期待して・・・。
そう……期待しているだけだった。
ドラマの様な展開もなく、そしてもちろんフロントガラスも無事なまま、何事もなく夜は更けていった……。
実家の近くには庄内川という金八先生のオープニングに出てくるような大きい川が流れていた。
たまにたまり場から帰宅する時の、
深夜0時過ぎに、よく川の堤防に原付を止めて川の流れをただただ眺めていた。
「俺、何やってんだろ・・・。」
ため息と同時にでる言葉であった。
彼女もいない。
ケンカも強いわけじゃない。
何か特技があるわけでもない。
ルックスも中の中・・・
いや、そこは中の上と言っておきたい。
毎日毎日、たまり場と家の往復。
やる事といったら麻雀か街をぶらぶらするのみ・・・。
女を週替わりで入れ替え、女のおっぱいを揉みながらアメ車を乗りまわす…
といった中学生・高校生の頃に自分が思い描いていた18歳とは、
正反対の生活に埋もれそうになっていた。
「こんな生活がずっと続くのかな…。」
もう18歳のちょっぴり大人の階段を上りかけている少年だったので涙はでなかった。
しかし、心は涙を流していた様に思う。
「ちきしょう!」
深夜1時の静けさの中、
川は返事もせず、
ただいつもと同じ方向へ流れていくだけだった。
やりたい事も無いまま徐々に季節も涼しくなってきて、彼女という響きを求めるようになっていた。
「あ~、イチャイチャしてぇ!」
と一人でつぶやいてしまう程、
病み始めていた。
そんな頃、
水面下でメガトン級のプロジェクトが進行していた・・・
いつもの様にたまり場に集まっていた時だった
「ヘッ、ヘッ、ヘルス行かない?」
M君からの衝撃の発言だった。
ヘッ、ヘッ、ヘルスですか!?
あの甘い時間をお金で買う事ができるという?
一歩間違えば奈落の底へと落ちていくといわれる?
ヘタしたら尻の毛までもすべて抜かれてしまう様な危険な状態へと誘われてしまうという・・・
そうHEALTH!!!
たまり場が大騒ぎになった!
ハチの巣をつついた様な騒ぎだ!
「まっ、まっ、まじで?」
「びょ、病気とか大丈夫かな?」
「ヤ○ザとかでてきたらどうする?」
「それよりも高い金払ってブサイクがでてきたら・・・」
18歳のボーイズ+ちょっぴり田舎者達だった・・・。
いや!!
まだ社会へと飛び立ち始めたばかりのボーイズにとっては、そういったジャンルの世間知らずは当然の事であろう。
一方、私と言えば、
少し前に短期のアルバイトをこなしていた。
短期の夏季のアルバイトだったので期間は終了してまたニートへと戻っていた。
つまり時間、日にちともに行けない日などない。
・・資金も潤沢だ。
「いっ、いっ、行く!?」
ボーイズ!インザヘルス!!!
その日から程なくしてボーイズは動いた。
結局その話から決起したボーイズは3名!
私、いいだしっぺのM、以外とエロいIである。
3名のレジスタンス。
革命の舞台は名古屋某所の店名Pである。
もちろん入念にリサーチをしたすえのPである。
なけなしのお金をはたいて行くのだから、やはりブサイクは避けたい所である。
Pへ向かう道中……
やけに車内の空気がピリついている……
やはりみんな緊張しているのか…
もちろん私自身も緊張していた。
車で走る事30分。Pへ到着した。
名古屋駅から徒歩10分程の好立地である。
Pへ入店直前に衝撃の発言があった、
「誰から・・・・選ぶ・・・?」
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