口下手童貞少年、ナンバーワンホストになる ⑰ ボケる!2 編
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>気付けば、もう12月になっていた。
店が暇で、6時頃に営業が終わった時は
店の外はまだ暗かった。
まだ外が暗い間に営業が終わる日が私は好きだった。
暗い方が本当はダサイという現実を隠してくれるような、
非現実的な気がしていたからかもしれない。
12月になった頃には私はナンバーから外れており、
少しの売上はあるが、
ナンバー圏外のダメホストであった。
だが逆にプレッシャーがないポジションの方が落ち着いた。
それが本当の自分の正当な順位に感じていたからであろう。
私は、N美と付き合う様になってからは、
週に3~4日は仕事が終わるとN美の家に行くようになっていた。
N美は一人暮らしをしており、
N美の家はBからタクシーで10分程度の距離だった。
N美の家は5階建のマンションで、
外観はやはり高級な雰囲気を醸し出していた。
部屋は17畳程度の1ルームで、
中は以外と汚かった。
ブランド物のカバンが数種類も無造作に転がっているような状態だった。
キッチンは料理をしている痕跡はなく、
本人も料理はしないと公言していた。
部屋は遮光カーテンが閉め切られており、朝でも暗く、
N美が夜型人間だという事がすぐわかった。
窓際にダブルベッドが置いてあり、
N美の家に行き慣れた頃には、
以前そのベッドで彼氏と二人で寝ていたのかと思うと、
そんなくだらない事に嫉妬していた。
部屋の内装自体は綺麗で一人で住むには十分すぎる広さだった。
そんなN美の家に行くのが、
情けないことに緊張したので、
きっちり酔っ払ってから電話をかけ、
仕事が終わったら酔った勢いでN美の家にという流れだった。
そして、だいたい夜22時頃に寮に戻り、
着替え、出勤という生活だった。
その頃は浮かれていた。
給料も携帯代金を払ったら5万ぐらいしか残らない様な相変わらずぶりだったが、
N美がいた。
その頃は給料がほとんどなくても大丈夫であった。
女性にお金を使う事がないからだ。
別に車がなくてもいい、
頑張ってコンパをする必要もない、
彼女もいるし毎日がもともとコンパみたいなものだ。
通常の人がキャバクラやヘルスで使う遊興費を使う必要がない。
彼女が一人暮らしだからホテル代もいらない。
ご飯はお客さんや先輩、そしてたまにN美が食べさせてくれる。
まぁ、それにしてもお金がそれだけなくても満足していたということは、
ホストとしての志もそれだけ適当だったのだろう・・・。
N美は付き合ってみると、
頭の回転が速く、普段の恰好からは想像できないぐらい、
インドアなライフスタイルだった。
N美「私、性格悪いよ。」
と言い切るぐらいの女性であったが、
不思議と私には優しく、
それがまた特別感を感じさせ、
そんな事をすっぱり言い切る所も
私にはとても魅力的に感じた。
N美と付き合っているという事自体が、
まだ私には夢みたいだった。
舞い上がっていた。
そんな生活をしていながらも、年が明けた。
年末は、N美も私も実家に戻り、
年明けからはまたN美の家で一緒に過ごした。
普段はBの定休日が火曜日だけという状態だったので、
数日でも、ずっと一緒に入れるのが、嬉しくてしょうがなかった。
年始の雪が降る深夜0時過ぎに、
二人でチェーンの安い定食屋にご飯を食べに行った。
年始の深夜0時過ぎ・・・
外に全く人はいない。
なぜ雪が降ると音がなくなるのか・・・。
一年で、一番音がない時期であろう。
信号の変わる音が聞こえる程だった・・・
著者の健二 井出さんに人生相談を申込む
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