絵本は心の拠り所 その2

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ただ読むだけ,それだけ

 朝読書のやり方,これはとてもシンプルだ。全員が本を持ち寄り,決められた時間,読書に没頭する。“没頭する”のだから,私語はなし。もちろん,立ち歩きもなしだ。

 私ははじめから,読書の力を信じたわけではなかった。しかし他に打つ手のない私は,とにかくなにか行動を起こさねばという焦りを感じていたから,とりあえずは朝読書に取り組んでみたわけだ。


説明できない…

 効果はなんと,初日からあらわれた。子どもたちが,あのうるさかった子どもたちが,ひとこともことばを発さず,読書に没頭している。私は朝読書の注意項目に〔私語はなし〕と書いてあったことを思い起こした。そうだ,あそこには〔私語はだめ〕とは書いていなかった。朝読書中は,私語なんて出ないんだ。私は新鮮な感動に雪がれていく自分を感じた。


 その後数ヶ月間,朝読書の取組は続いた。学級はすっかり落ち着きを取り戻し,季節は秋,研究授業のシーズンに向けて進んでいた。

 私はその年,授業研究の一環で,授業を公開することになっていた。学習指導案を作り,同僚に意見を求めた。私は自分の学級経営から朝読書は切り離せないと感じていたから,指導案の〔学級の様子〕の項目に,朝読書のことを記した。

 すると早速,同僚たちから質問が飛んできた。

「この,“朝読書”というのはなんだ?」

「なんでこんなものが,指導案に入る?」

 私は説明しようとしたが,できなかった。なぜなら,朝読書が効果を上げたのは紛れもない事実だったとしても,その効果はなぜ生まれたのか,そういうアプローチをしたことがなかったからだ。


事実がわかり,涙した私

 しかしどういわれようとも,我が学級と朝読書は切り離せない。だからどうしても指導案には載せたい。しかしそのためには,児童の実態への科学的なアプローチと,朝読書に関わり説得力のある調査と考察が必要だ。

 そう考えた私は,子どもたちに思い切って尋ねてみることにした。昔のことで悪いが,朝読書が始まった日,なんでみんな静かだったんだ?,と。


 衝撃だった。子どもたちから返ってきた答えは,私にガツーンと来た。そしてその後,私は泣いた。己のバカさ加減に涙したのだ。



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