【投稿テスト】シミ。

3 / 5 ページ

『そういえば、私に“ちゃん”付けなくていいよ。

なんか慣れなくて恥ずかしいし。

ユキで良いよ、皆そう呼ぶから』


と言った時。


純くんが突然

何か考え込む様な仕草をした。


『……どうしたの?』


心配になって聞くと、純くんは静かに


『あ、うん……』


と言って、それから


『俺ね、女の子を呼び捨てした事ないから逆にちゃん付けさせて貰えたら嬉しいんだけど。

…って感じの会話をさ

前にも一回した事無い?俺ら』


と言った。


『ん…………?』


確かに私には

同じ様な会話をした記憶があった。


誰と…?

ドコで…?



『ねえユキちゃんさ、

去年の冬、スポーツショップのスノーボードツアーに参加しなかった?』


突然の質問に私は一気に記憶がフラッシュバックした。


『…ああ…!行った…!!!

あれって純くん!?』


その時ようやく

“以前にどこかで会った”という記憶が私たちに戻って来た。


昨年冬、確かに私は友人がバイトする某スポーツショップのスノーボードツアーに参加した。


そこに物凄く上手な男の子がいて

私は感心しながら眺めていたのを覚えている。


食事の時、その人がたまたま近くに座っていたわけだが

その時、名を名乗る程度の自己紹介と、2、3会話を交わした。



“俺女の子を呼び捨てしたことなくて。”


あの時私はそれを聞いて

なんだか可愛い人だなぁと、感じていた。



『なんか…

ベタなドラマみたいだね……』


と言うと

純くんは大きな声で笑った。


『ほんと!ベタ!!

でも事実だからびっくりだよね。』


それから

そのツアーの話やスノーボードの話でさらに盛り上がり

気付くと時刻は深夜0時を超えていた。


『遅くなっちゃってごめんね。

そろそろ帰ろうか』


と言われた瞬間

なんだか急激にテンションが下がった。


…まるで

好きみたいじゃないか…。


でもそんな簡単に

好きになるわけないし…。


私はそんな自分に戸惑いを感じながらも

悟られない様に


『そうだねー。帰ろっか』


と、答えた。




車に乗り、今度は静かに会話を続けていると

すぐに車は待ち合わせた場所へ到着した。


『えっとー、じゃあ、今日はありがとうね。』


と、降りようとすると


純くんがあわてて


『あ!ちょっと待って!』


と言うので

びっくりして振り返ると彼は


『あーー…えーっと

もーちょい…

俺が一本煙草吸う間だけ話し相手してくれない?』


と言った。


『あはは!なにそれ!

いいけど…

でも煙草吸う間って…数分じゃん。

ゆっくり吸わないとスグだよ!』


サラっと可愛げの無い返事をしながらも私は

本当は少し

ドキドキしていた。

著者の伊藤 ドリアンさんに人生相談を申込む

著者の伊藤 ドリアンさんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。