アナログなイベント業界をバージョンアップしたい!イベントのDX化を加速させる新サービス『イベシル』の開発秘話とは?
リアルイベントはデジタル広告に比べ効果を数値化しづらく、人手に頼った来場者数計測や、アンケートによる来場者情報の取得など、アナログな手法での効果計測であったことが長年の課題でした。
そんな中、ひとりの若手社員がイベントの効果測定の課題に取り組み、イベントDX化を促進する新サービス『イベシル』の開発を牽引しました。
開発の裏側には、どのような想いや取り組みがあったのか、サービス開発者に話を聞きました。
原口 寛大
(株式会社 博展 マーケティング部 コンテンツマーケティング課長)
「このサービスを通じて、イベントの価値を再定義して、高めていきたい。」と語る。
リアルイベントの効果を可視化したい
ーーサービスを開発しようと思ったきっかけは何だったんでしょうか?
原口 元々、大学で建築人間工学を学んでいたこともあり、人々の動きを科学することが好きだったんです。卒論では、歩きスマホの危険性を検証するために回避行動について実験し、分析してました。
新卒で博展に入社し、最初の3年間は営業として主に展示会に出展するクライアントのサポートをすることになったのですが、多くのイベントを経験する中で、成果レポートがデジタル広告に比べて充実していないなという意識がずっとありました。
イベントの効果指標としては、人力での来場者数測定や名刺の獲得数、紙のアンケートやサンプル配布数、といったもので測っていることが多いのですが、それだけでは本当に成果があったのか判断がつきづらく、かつ今後に活かせる再現性があまりないのではと疑問に思っていました。
せっかく、イベントに人を集めてその場でしかできない体験をしてもらっているのに、一連のマーケティング活動において数で比較すると評価しにくい、そしてイベント業界としても評価しやすい結果を提示できていない。
それで実は、他の業界へ行ってみたいという思いが持ち上がり、転職しようとしていました(笑)。
ーーどうして、プロジェクトに携わることになったのでしょうか?
その頃、ある化粧品メーカーさんの全国11会場を周るという結構大きなプロジェクトがあったのですが、数万人の方々に体験いただくこれまでにない規模だったこともあり、同期がそのイベントの評価をどのように可視化するかに困っていたため、何か新しい手法を試せるのではとの思いから手を挙げ、ディレクションをすることになりました。
▼携わった化粧品メーカーのイベントの様子
そのプロジェクトがきっかけで、社内では「原口はアンケート分析ができるらしい」という認識が生まれ、色々なプロジェクトに関わるようになりました。
また、ちょうど会社としても部門横断の”イベントの効果測定プロジェクト”が立ち上がったタイミングで、そのメンバーに加わりながら、営業からプランニングチームへと部署異動をしたりと、本格的に効果検証に携わっていくことになったんです。
ーーどのように効果検証に取り組んでいったのでしょうか。
まずはイベントの来場者数や滞在時間の計測から始めようと考え、パートナーになりうる企業を探しに、セミナーや展示会に積極的に参加して情報を集めました。
カメラによるAI解析や赤外線センサーなど、ありとあらゆる手法について情報を収集しましたが、それぞれ一長一短があり、最初は迷走していました。
例えばカメラを多く設置すると、来場者に違和感を与えてしまい、イベントの体験の質を下げてしまう…など。体験の質を損なわず、有益なデータを得るためにはいくつもの障壁がありました。
当時はプランナーとして通常の提案もする傍らだったので、中々時間も取れず苦労をしました。
その後、ようやくBeaconを活用したデータ取得を行うパートナーと出会い、テストとして何件かのイベントで情報を取得して分析を実施することになりました。
そこで得られたデータをもとに、イベントのデータマーケティング化の事業を考案し、2019年の秋に社内の事業提案制度に応募したところ、大賞をいただくことができました。
そして、事業化に向けて本格的に動き始めることになったんです。
▼社内の事業提案制度の最終プレゼンの様子
ただ、その事業提案では、クライアントの様々なイベントにBeaconを設置し、データを蓄積していくことが前提になっていたのですが、検証していくうちに、これはあまり現実的ではないのではないかと思うようになりました。
▼提案時の構想イメージ
当時のプランでは、イベント内での行動情報しか取れず、Beaconを設置できるイベント数も限られているため、事後のマーケティングに活かせるような情報にするためには、かなりの労力とコストがかかってしまうという壁にぶつかりました。
ーーそこから、今のようなサービスに至った経緯とは?
壁を乗り越えるために、様々な社外のセミナーを受けていたところ、現在のパートナーであるunerryさんのプレゼンを聞いて「これだ!」と思ったのを覚えています。
unerryさんは、商業施設や店舗向けの解析サービスを展開されていたのですが、Beacon等によって取得した位置情報と日本最大級のリアル行動データプラットフォームを掛け合わせることで、来店者数の計測だけではなく、その属性や行動嗜好性などを分析、推計ができるという内容でした。
セミナー後すぐにコンタクトを取って詳しい話を聞き、2019年12月のイベントで試しに実験してみようという話になりました。
匿名性を担保しながら、イベント来場者の性別、年代や行動傾向というペルソナを推定してレポートを作成し報告したところ、その内容がクライアントにも非常に評価いただけました。
そこで、unerryさんに「よりマーケティングに活用ができるイベント向けの商材を共同で開発できないか」という提案をしたところ、共に開発していくことに可能性を感じてもらい、提案を快諾していただきました。
これまでのデータ分析では、どのような場所に多く訪問しているかというような行動傾向の分析だったのですが、そこからさらに来場者をペルソナ化し、普段どのような趣味嗜好をもつ人なのか、具体的な仮説が立てられるような内容にしてもらいました。
▼レポートイメージ
そして、これらのデータを活用することで「マーケティング活動におけるイベント自体の在り方、目的を変えられないか」と考えるようになりました。
ーーイベント自体の目的を変えるとは?
これまでイベントは、企業のマーケティング活動の中でもいちばん盛り上がるタイミングで実施されることが多かったのですが、逆にイベント自体を施策の最初に持ってくることで、”テストマーケティングの場”として実施し、そこで取得できたデータをその後のプロモーションに活かすような形にできないかと考えるようになりました。
▼参考イメージ
また、今後はリアルな生活者のデータから得られた仮説を、継続的なマーケティング施策へ活用したり、プロダクトを改良したりと、イベントを”点”ではなく”線”として活用できないかと考えています。
ーー開発にコロナの影響はありましたか?
実は、2020年6月頃にサービスをリリースする予定だったのですが、今回のコロナ禍の影響で、”イベント”に関するサービスについて、アピールしにくい状況となってしまいました。
そこで、unerryさんとは10月をターゲットに準備をしっかり進めようという話になりました。ただ、本当にそれまでにイベント市場が回復しているのか、イベントの在り方そのものが変わってしまうのではないかという思いもありました。
そこで、withコロナの時代にイベントを実施するためには、リアルタイムな混雑情報の開示が必要になるだろうとの考えから、カスタマイズ混雑マップをイベント用に追加開発をしました。
10月に商業施設で行ったイベントでも導入していただき、クライアントである施設側も来場者も、安心できるようにサポートをすることができました。
ーー今後の展開はどのように考えていますか?
生活者の趣向がより多様化している中、リアルで得られる情報が起点になるように、より位置情報やペルソナ分析の精度をあげていきたいと考えています。
例えば、商業施設に行く人は、同じ商業施設と言っても、お台場、渋谷、銀座など場所や施設によって志向性や生活内容が大きく異なるはず。どのような人が行くのか、その類型・分析の精度をあげていきたいと考えています。
そして、その情報を全体のマーケティング活動にフィードバックしていくことで、イベント自体の価値を市場において見直されるように発信していきたいと思っています。
そうすることで、デジタル広告等に比べるとリーチできる数が圧倒的に少ないという課題に対して、直接的に体験価値を提供できるイベントならではのメリットが発揮できるのではないかと考えています。
▼10月に開催した2社共同セミナーの様子(アーカイブはこちら)
写真左:株式会社unerry Beacon Bank 事業部 カスタマーサクセス
星 雄大氏
▼株式会社博展について
設立 : 1970年3月2日
URL : https://www.hakuten.co.jp
所在地 : 〒104-0045 東京都中央区築地1-13-14 NBF 東銀座スクエア9F
事業内容 : 「Communication Design®」を理念に、「Experience Marketing」を事業領域とした、コンタクトポイントにおけるコミュニケーション開発及び統合型マーケティングソリューションの提供を行っております。
Think EXperienceサイト:https://www.think-experience.com
▼お問合せ先について
株式会社 博展
経営企画部 広報担当 村松 加奈江
E‐Mail:ir@hakuten.co.jp
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