繊維産地の残糸や残反がもったいない! 愛知県三河地方の小さなお店が地場の工場を巻き込んでアップサイクルのブランドを作りました。
※MOTTAiiNAの七変化スヌードポンチョ、カカトすべすべ極暖ソックス、おなかあったかコットンレギンスの商品概要および購入方法は公式オンラインショップのページをご覧ください。
はじめまして。私たちは愛知県三河湾のほとりにある小さなアパレルブランド「渦-uzu-」です。三河は昔から繊維産業が盛んな地域です。私たちもできるだけ地場の素材を使って衣服や小物を企画製作し、販売しています。
夫の祖母が住んでいた広い平屋を改装した店を夫婦2人でスタートしたのが2016年。現在はお店の隣の実家で同居する夫の両親と3人の子どもたち、他4名のスタッフにも支えられ、慌ただしくも楽しい日々を過ごしています。
<画像真ん中の2人の夫婦で創業しました。夫:青木淳は、音響効果会社の元サラリーマン、妻:青木愛は元理科教師。趣味のダンスが縁で知り合いました。両サイドスタッフのみんなは近所にお住まいです。>
私たちは開業当初から「不要になったものをアイディアと感性で価値ある面白い商品に変えよう」というテーマを掲げて、微力ながら様々な取り組みをしてきました。
近所で廃業した機屋(はたや。織物工場のことです)さんを訪ねたときのこと。まだ十分に使える生地が倉庫に山積みされていました。産廃業者の方に引き取ってもらうと総額で40万円以上もかかるそうです。
アパレル業界では翌シーズンの流行を予測して原料を確保して色を染め、縫製などして製品にしてお店に並べます。工場では常時不足なく生産するために余裕を持って糸や生地をストックしなければなりません。でも、売れ筋製品の変化が早い現代では、売れ残りや作り残しが生じます。品質に何の問題もないのに在庫となってしまう大量の糸(残糸)や生地(残反)。倉庫スペースには限りがあるので、最終的には捨てるしかないのです。
<渦-uzu-が引き取らせてもらった生地やハギレ。これでもごく一部です。>
今まで有効利用した残反はざっと1万メートル
高品質の糸や生地が捨てられてしまうのはもったいない!
私たちは手作業で染色、縫製などの加工をしています。お客様に喜んでもらえるようなデザインと使いやすさは追求していますが、世の中の「トレンド」や「流行色」などはあまり意識していません。人気商品でも基本的に売り切れ御免とさせていただいているので、大きなロットで素材を仕入れる必要もありません。
日々、三河地域の繊維関連工場を訪ね歩いている私たち。廃棄されてしまいそうな生地のうちで使えそうものを引き取って、洋服やカバン、小物に加工して販売してきました。その中には商品がヒットして300メートルもの生地を使い切ったこともあります。今まで有効利用した残反をざっくり計算してみると、1万メートルを超えていることがわかりました。
私たちはこれまでコットンなど天然繊維を草木染めして商品作りをしてきましたが、ポリエステルなどの化学繊維を否定しているわけでありません。高い技術を使って作られた糸や生地もたくさんあり、捨てられてしまうのはもったいないと思い続けてきました。
この考えに賛同してくれたのが、うちの店から車で10分ほどの場所にある石川メリヤス有限会社です。60年近くの歴史を持つニット工場で、最新の編み機も揃えて様々なニット小物を生産しています。ストックしている糸の種類も豊富だろうと思って倉庫を見せてもらったところ、私たちの予想を超える量だったのです。
<私たちと同じ愛知県西尾市内にある石川メリヤスの倉庫を見せてもらったのは今年6月下旬ことでした。>
<各倉庫には糸がいっぱい! 同じ組成の糸でも色違いがたくさんあります。その場でも使い道などを少し説明してもらいました。>
「安かろう悪かろう」ではリサイクルもアップサイクルも続かない
デザインも使い心地も良い商品を適正価格で提供したい
余っている糸を使うからと言って「安かろう悪かろう」の商品を作るつもりはありません。デザインにも使い勝手にもこだわり、適正価格で販売します。それが持続可能なアップサイクルのあり方だと思うからです。糸の提供だけでなく編立工程も担ってくれる石川メリヤスの三代目社長である大宮裕美さんとも意見が一致しました。
良い商品作りには、まずは糸の特性を教えてもらうことから始めなければなりません。石川メリヤスの在庫表を見せていただき、どの糸でどんな編み方でどのようなニット製品を作った実績があり、使い心地はどうだったのかを聞き取りました。
石川メリヤスから提案してもらったのが「サーミックセレクト」という糸。アクリル80%、ナイロン15%、ウール5%という組成で、軽くてしなやかで暖かい特性があります。石川メリヤスではファッション用手袋の素材として使っているそうです。
この糸を触らせてもらいながら私たちが思いついたのは、昨シーズンもヒットした商品であるスヌードポンチョです。前回はニットではなく織物の生地で作ったため、やや分厚いという欠点もありました。サーミックセレクトで編んでもらうことで軽くて伸び縮みもする暖かいポンチョになるはずです。
<石川メリヤスの会議室にて。既存商品をいろいろ触らせてもらい、どの糸でどんな製品を作っているのかを学びました。>
<サーミックセレクトの色見本。石川メリヤスの倉庫で比較的在庫が多いものをチェック(黄色いマスキングテープ)し、色の組み合わせを考えました。>
「これは色のトーンが合わなくて変。こちらの色だと在庫がない!」
色見本と在庫表をにらみしながら試作を繰り返した製品作り
実際のモノづくりはここからが大変でした。石川メリヤスにいくつかのニット生地を試作してもらい、どんなデザインと機能ならば私たちのお客様に喜ばれるのかをイメージしました。それは「他とは違うけれどシンプルで使いやすい商品」です。結果として、ツートンカラーのポンチョを様々な色の組み合わせで出していくことしました。
サーミックセレクトは石川メリヤスでも他の製品作りに使われています。すべて私たちが自由に使わせていただくことはできません。どの色は何キロぐらいあるのかを教えてもらい、在庫し過ぎてしまった色の中でツートンのバランスや配色を考えました。
色見本に付いている数本の糸と在庫表と常ににらめっこです。スタッフたちと「これは色のトーンが合わなくて変。こっちの色だと在庫がない」など苦戦しながら決めていきました。
石川メリヤスにもすり合わせのために何度も通わせてもらい、試作を繰り返していただきました。辛抱強く付き合ってくれた担当者の尾崎美奈さんにはとても感謝しています。
試行錯誤を経て生まれた「七変化スヌードポンチョ」(商品のプレスリリースはこちら)。3つのボタンを使うことで、マフラーやストール、膝掛けなど、7つの使用方法ができるアイテムです。色の組み合わせで12種類あり、早くも売り切れてしまった色もあります。
<7つの使い方ができるスヌードポンチョ。糸の在庫状況によってカラーの組み合わせが決まり、売り切れたら終了です。>
商品企画、加工、販売までを一貫して地元でやっている店だからできること
行き場を失っている「もったいない」原料をアイディアと感性で「面白い」商品に変える
繊維産地である三河地域で行き場を失っている「もったいない」糸や生地を、渦-uzu-のアイディアと感性で「面白い」に変える――。私たちはこの取り組みをMOTTAiiNA(モッタイイナ)と名付けました。
渦を開店してから5年が経とうとしています。ありがたいことに製作量も大幅に増え、近所の繊維関連工場とのお付き合いも多くなりました。「あそこならいい残糸があるかも」という情報も入りやすく、実際の品質や在庫量を確認してすり合わせを行うために何度でも足を運べます。
商品のデザインから加工、販売までを一貫して行っていること。地場の繊維産業とのネットワークがあること。MOTTAiiNAは両者を生かせるアップサイクルの仕組みです。スヌードポンチョの他に、「カカトすべすべ極暖ソックス」と「おなかあったかコットンレギンス」も石川メリヤスと共同開発しました。どちらも好評を博しています。私たちが生まれ育ったこの地域から、全国のみなさまに喜んで使っていただける「ちょっといいこと」を発信していきたいと思っています。
<MOTTAiiNAの商品は当社の公式オンラインショップにて販売中です。>
<MOTTAiiNAのカカトすべすべ極暖ソックス。通常規格よりウールを10%ほど多く混ぜてしまった糸を使った二重編み構造の贅沢な靴下です。>
<石川メリヤスの倉庫に眠っていたダークネイビーの残糸を使った「おなかあったかコットンレギンス」。お腹と腰まわりがしっかりカバーされ、伸縮性も抜群です。>
【渦~uzu~】
所在地:〒444-0403愛知県西尾市一色町松木島榎31番地
代表者:青木淳
設立:2016年5月
URL:https://uzu-japan.com/
問い合わせ:https://read.uzu-japan.com/feature/p12990/
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