日本茶きみくらの茶師が「炭火仕上げのお茶づくり」に挑む
「日本茶きみくら」はお茶の有数な生産地である静岡県掛川市にあるお茶専門店です。お茶という日本文化とともに四季の移ろいや日々の暮らしを豊かにしていく楽しみや新たな価値をみつけていきたいと思っています。
今回は古い茶工場にあった焙炉(ホイロ)との出会いをきっかけにきみくらの茶師が挑戦した手作業での火入れによる「炭火の茶」のお茶づくりをご紹介します。
茶師・髙橋橋嘉伸
プロフィール
1988年静岡県袋井市生まれ。
料理人の父に影響を受け調理専門学校へ。卒業後ホテルにて日本料理を担当。22歳で丸山製茶へ入社後、お茶の製造工程を一から学び茶師となる。2015年第9回同一荒茶仕上協議会で最高金賞を受賞。料理経験を活かしペアリングメニューの開発や手揉みのお茶づくりにも取り組む。
使い込まれた「焙炉」との出会い
わたしたち地元掛川でも昔ながらの茶部屋が取り壊されたり、古い茶工場が廃業する度に古い道具たちが行き場を失っていきます。
引き取り先として声をかけられ現場を見に行くと、昔ながらの道具は現代の製造では価値を発揮しずらいものの、やはり人が手先や全身を使って扱うのにはとてもよく考えられ、丁寧に扱われてきたことが分かります。
茶業に関わる多くの先人の努力や工夫により、このような道具たちは機能美を併せ持ち、長い時間をかけ洗練されてきたことが伝わってくるのです。
お茶づくりに用いる道具として焙炉の名前や存在を知ってはいるものの実際に扱ったことはありませんでした。しかし、お茶の伝統的な製法の探求に熱心な社長の意向もあり、これまで会社で引き取ってきた焙炉を使った本格的な火入れに挑戦したいと思うようになりました。
いままでのお茶の仕上げは機械を使用しているため茶師の高橋をはじめ、全員が全く知識も経験もない状態からスタートしました。
どのような炭を使えばよいのか?原料の茶葉はどれがよいのか?様々な疑問が湧いてきます。そのたびに調べたり、人に聞いたりしながら準備をすすめることとなりました。
五感を駆使し、茶葉との会話を楽しむ
ようやく準備を整え迎えた炭火焙炉を使った火入れの初日。
まだまだ疑問はたくさんありますがこういったものは自ら考え身体を動かさなければ分かりません。
まず炭をおこし、焙炉の内部に移します。そこに和紙を張った台を置くとしばらくして和紙が熱でぴんと貼ってきました。
和紙の上に原料となる茶葉を3kgほど広げます。火入れは弱火から始まり、最初は様子をみながら手と鼻と目で注意深く、五感を使って常に茶葉を感じながら温度調節をしていきます。
炭火を使った火入れの最大の特徴は、常に茶と向き合いながらの作業になるため些細な変化を見逃すことなく茶師としても理想的な火入れに近づくことが可能になる点だと思います。
じんわり熱が入り茶温が上昇してくると、まるで汗をかいているかのように全体に湿り気がでてきます。ほどよい水分量になると内側から茶のよい香りが漂い始めます。
そこからさらに火入れを進め、香りが最高潮に達したところで火から離し冷却します。この工程も非常に重要です。
茶温が高いまま茶葉が重なる状態にするとムレた臭いが発生してしまう場合があり、せっかく引き出した茶の香りを一気に損ねてしまうためです。
当日は初めての試みでしたが、まさに茶葉と会話しているような感覚で刻々と変化する微妙な香りや色艶、手触りなど繊細な違いに気を配りながらこの僅かなお茶だけに集中して仕上げる2時間は、これまで経験したことのない楽しい時間でした。
一期一会の限定茶、感性を注ぎ込む炭火の茶
この炭火による火入れは、お茶づくりにおける火入れ方法の根源だと思います。身体を動かし炭火を使って屋内で作業するので、当然ながら細かな火入れ度合いも完全に均一ではなく、炭の香りも茶葉に移ります。
現代の基準で品質管理をした設備ではこれらの要素がマイナスの捉え方をされる事があるかもしれませんが、昔はこれが普通のことだったのだと思います。
仕上げたお茶を飲みながらタイムスリップしたような感覚に陥りました。
機械ではできない、感覚の一切を集中して取り組む一期一会のお茶づくり。
日本茶きみくらでは限定200箱ずつの製造をしています。
炭火の茶を夜に楽しむ SUMIBI LOUNGE様子をお伝えします。▼
【関連URL】
日本茶きみくら https://kimikura.co.jp/
炭火の茶参照元 https://kimikura.online/user_data/feature/006
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きみくら株式会社 広報担当:鈴木
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