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自律的学習をするAIによる、過酷な労働現場を救うための挑戦。前人未踏の社会インフライノベーションを起こした1年間

著者: 株式会社グリッド

AIが世間をにぎわす様になってから数年。

様々なAIに関するサービスが登場しています。個人の生活に身近なところでは顔認証や音声でヒアリングするAI、産業界では工場での不良品異常検出と、少しずつ私たちの生活においてAIという技術が実用化されてきています。


しかし、これらの活用事例におけるAIは私たちが培ってきた経験の中から回答を導き出している為、人間が考えもしなかった全く新しい解を生み出すことはできません。


それがAIの限界でしょうか?私たちが本当にAIに期待することは何でしょうか?


私たちがAIに本来求めていること。

それは人間が導き出したことのない、未知の最適解をAIがもたらすことではないでしょうか。

人間が出来ることをAIに置き換えることではなく、人間が容易には思いつかない領域、人間が計算するには多くの時間を費やしてしまう領域。それらの答えをAIが瞬時に導き出す。

そんな人間の経験を超えてAIがより良い方法を見つけ出すことができたら。


私たちグリッドが挑戦しているのは、まさに“AIだからこそできる”ことです。

人が培ってきた経験をもとに、AIがさらに磨きをかけて最適な方法を見つけ出す。

そんなAIに求めることのできる新たな領域を開拓しています。

自ら学ぶAIで社会インフラを変える

グリッドは、人間にとって未知の最適解を導き出すA Iを実現するために、二つの最新テクノロジーを融合させます。

デジタルツインという現実世界をデジタル上につくりだす技術、そしてその中でAIが自ら考えてベストな方法を見つけ出し学習する深層強化学習という技術です。

しかし、深層強化学習で自ら学習するAIはこれまで、ゲームや自動運転などでは活用されていましたがビジネスルールを多くもつ実社会での活用は複雑すぎて殆ど前例がありませんでした。グリッドは、この深層強化学習にデジタルツインという技術を組み合わせることで、実社会での活用の可能性を切り開きました。



この前人未踏の領域にグリッドが挑んだ1年をPJチームの宮本よりご紹介したいと思います。


産業界のほとんどの業態では、計画業務が行われており、計画業務のない企業はほぼないと言えます。また、計画業務の多くは日々変化する複数の要素を考慮しながら、目的に併せた最適な計画を選び出すという多大な時間と労力がかかり、専門性の高い仕事です。

しかも、導き出した方法が真に最適なものであるかも不確かです。


そのような計画業務の現場では、ベテランの方たちが築きあげた経験と勘に基づいた職人技で計画を立案しています。

その為、技術・ノウハウを継承することは難しく、若手の育成が課題の1つとなっています。また、計画を導き出すために膨大な時間と労力が費やされ、考慮する要素がわずかでも変化すると一からまた時間をかけて考え直さなければならないという精神的にも肉体的にも非常に負荷がかかる業務です。選ばれし職人にしか成せない業務であるからこそ、その人にかかる負担は相当なものだと言えます。


グリッドのお客様である出光興産株式会社で行っている、石油製品輸送のための配船計画策定においても、まさに上記の課題がありました。

熟練の担当者が長年かけて蓄積した船舶に関する情報・毎日関係各所からアップデートされる生産量・需要予測情報・天候情報・その他の様々な情報をもとに、全国の油槽所や需要家へ石油製品を安全かつ安定供給させつつ、効率的な配船計画の策定と修正を日々行っていました。

それでも、気象・海象状況の急変や災害、突発的な事象により策定した配船計画を一から作り直すことも多々ありました。

私たちの生活に必要不可欠なエネルギーを安全かつ安定供給するために、配船計画業務の担当者、そして輸送に携わる海運会社や現場の乗組員は、24時間365日終わりのない業務を日々こなしていたのです。


難題として誰もが断った業界初の挑戦へ

「なんとかして変革を図ることができないだろうか」そんな想いで、出光興産様から、「現状を打破するために石油業界でも前例のない、AIによる計画業務の自動化ができないか」とグリッドにお声がけをいただいたのが2年前です。


プロジェクトのご担当の方はあらゆる企業に声をかけましたが、そんな難題は引き受けられないと断られたそうです。その中で手を挙げたのがグリッドでした。


誰もチャレンジしないのならやるしかない。

今まで多くの社会インフラでのAI開発を手掛けてきた実績から成功に対する自信もありつつ、一方で誰も成しえたことのない試みを成功させなければならないというプレッシャーも重くのしかかりました。

「業界初の挑戦を成功させることが出来るのか?」当時の心境をグリッドのPJチームはそう振り返ります。


A Iによる計画業務の自動化には現実の海上輸送状況をデジタル上に作り出すこと、そして熟練の計画業務担当者が計画策定時に頭の中で考えるポイントをAIに落とし込むことが必要です。

配船計画策定業務に特有の知識(ドメイン・ナレッジ)を数式化し、さらにAIが自ら学んで最適解を見つけられるように設計していかなければなりません。さらに今回の配船計画は、総当たりすると10の800乗通りという途方もない組み合わせになります。

まさに、新しい領域に踏み出すに相応しい高い壁が幾つも立ちはだかっていました。


結果が出ない・・・膨らむ不安

グリッドのPJチームは海上輸送の知識を必死で学び、獲得したドメイン・ナレッジをもとに配船計画策定業務をAI化する為に試行錯誤する日々が続きました。

出光興産の担当者の方々も、PJチームに根気よく丁寧に様々なノウハウを教えてくださいました。


自律的学習するAIの学びの場は完璧に海上輸送の世界が再現されたデジタルツイン上です。

港の地理的情報などの物理情報から船の速度や、ポンプの吸い込み量など輸送に関する50を超えるビジネスルールを反映させていきます。

作り直しを重ね緻密に再現されたデジタルツインですが、自律的に学習するAIは、短期間で成果を出せるものではありません。

最適解を導き出すために、AIは何度も何度もトライ&エラーを繰り返し、そしてある日グッと学習成果を見せるのです。


半年たっても、まだ充分な結果は出ない。

時間が掛かるだけに当然、先方の担当者も大丈夫なのか、本当に成功するのかと不安な想いは膨らんでいったと思います。


AIを正しい方向で学習させるための設計に不備はないのか。

熟練の担当者が策定する際に考慮している要素で、見逃しているものはもうないのか。

もっと良い計算方法があるのではないのか。


ドメイン知識のヒアリングをもとにAIが正しく学べるよう考慮すべき項目の細かいチューニングを重ねていきました。


そして、2020年6月。

遂にAIが一定の成果を見せたのです。

開発を開始してから1年でした。


約1ヶ月分の配船計画をたったの数分で算出、そしてこれまでのオペレーションと比較して20%もの輸送コスト改善※1を達成することが出来ました。

未知の領域に一歩足を踏み入れた瞬間でした。

「AI配船イメージ」


グリッドには、全社員が大切にしている「インフラ ライフ イノベーション」というスローガンがあります。

社会インフラにA Iテクノロジーでイノベーションを起こし、人々の生活をより良くする。

その為には、どんな苦労も挑戦も厭いません。

誰もが断った業界初の挑戦である今回のPJも、私たちの技術、そして何より信念によって成果を出すことが出来ました。



配船計画の本導入まであと1年程かかる見込みです。

本導入に向けた新たな挑戦が待ち構えていますが、私たちグリッドは、「インフラ ライフ イノベーション」を胸にさらに前進して参ります。


※1 輸送コスト改善値は、実証実験に用いた出光興産のパソコン環境での最大改善値を記載しております。計画策定時間は、パソコンスペックや計算環境、設定条件によって変動はありますが、最大速度を記載しております。


株式会社グリッドHP

https://gridpredict.jp/


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