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環境授業で、未来を変えるきっかけを後押し!【鎌倉リサイクリエーションプロジェクト】

著者: 株式会社カヤック

2017年よりカヤックが参画してきた【鎌倉リサイクリエーションプロジェクト】。「使ったら、捨てる。このあたりまえを変えたい」をコンセプトに、花王株式会社が行ってきたアップサイクル活動の一環だ。回収した使用済みつめかえパックを再生樹脂ブロックに加工し、創作活動を行う。2019年からは鎌倉市立御成小学校で「環境授業」をスタート。市民・学校・行政・企業が一丸となった、ゴミからはじまる地域創造の歩みを追った。

 ■創造の力で、循環型社会を目指す

 

ーーはじめに、【リサイクリエーション】の意味や仕組みについて教えていただけますか。

 

松本

【リサイクリエーション】は造語で、「リサイクル」と「クリエーション」をかけ合わせたものです。リサイクルというと汚いもの、ゴミを集めることを思い浮かべますが、クリエーションの力を借りて、みんなが楽しく集めることができる取り組みにしたいという思いがありました。


 お話を伺った、花王株式会社/研究開発部門包装技術研究所 上席主任研究員・松本泰正さん

 

ーー製品リサイクルへの啓発の一つなのですね。

 

松本

特に、このプロジェクトで回収しているつめかえパックは、複数の原材料でできているため再利用が難しい。経済的・コスト的には見合わないリサイクルなのですが、創造の力で「新たな価値」に変換していくための活動なんです。

再利用しやすい素材の研究も進めていますが、まずは回収を習慣付けていただけるよう、メーカー主導で取り組んできました。

 

ーー【リサイクリエーション】を、鎌倉でカヤックと共に始めたきっかけは?

 

松本

まず、鎌倉はもともと環境への意識やリサイクル率も高い地域。さらに、観光資源があり歴史的にも有名で、情報発信力が高いことが理由の一つだと聞いています。

2017年に、回収したつめかえパックを樹脂ブロックに加工して、実物大の江ノ電を作るイベントを行いました。イベント開催に当たって、鎌倉のことをよく知り、ITにも強いと紹介いただいたのがカヤックさんです。

 

西植

カヤック側も、鎌倉で行われる環境への取り組みなので、ぜひやりたいと参画したそうです。僕は偶然にも当時、その実物大の江ノ電を施工した会社に勤めていたんです。そのためリサイクリエーションのことは以前から知っていて、面白い取り組みだな、と思っていました。その後カヤックに転職し、そもそものご縁もあってこのプロジェクトチームに入りました。

 

カヤックの鎌倉リサイクリエーションプロジェクトチーム

左からプロデューサー・西植弘、ディレクター・白鳥えみな、ディレクター・落合春花

 

白鳥

私がチーム入りしたのも、カヤックに転職してきたばかりの頃でした。生まれも育ちも逗子で環境問題に対する興味もあったので、この案件に入れるのがすごく嬉しかったです。社歴と同じ2年位、この案件に携わっています。

 

落合

私は1年前位から参加しています。鎌倉在住で、もともとSDGsに興味があったので、西植さんが声をかけてくれたのがきっかけです。以来、カヤックではこの三人でプランニングやディレクションを担当しています。

 

ーー【鎌倉リサイクリエーションプロジェクト】のゴールとして設定しているものはあるのですか?

 

松本

花王のステートメントにもなっている大きなゴールが、「使ったら、捨てる。このあたりまえを変えたい」。あたりまえのこととして、リサイクルして循環される社会にしたい。そうして、リサイクリエーションそのものが必要なくなって消えてしまう、それが最終ゴールなのかもしれません。ただ、それはだいぶ先のことですので、日々何を目指すのかは毎月ディスカッションさせてもらっています。

 

西植

カマコン※や、NPOなど様々なメンバーともミーティングをしながら、基本的に我々が軸になって実働しています。将来的には、回収作業も市民や地域が自律的に動いていくことが理想。今は、活動自体の認知をより高めて、回収率を上げていくにはどうするかの議論を重ねているところです。


(※カマコン:鎌倉のまちをよくしたい、と地域内外の人が集まりディスカッションを行う場)


アップサイクルの仕組み、花王RecyCreation(リサイクリエーション)Facebook


■大人が逆に教育された? 盛り上がる環境授業

 

ーー【鎌倉リサイクリエーションプロジェクト】では、どのような活動を行ってきたのですか?

 

松本

2017年に第一弾として、リサイクルして加工したブロックで実物大の江ノ電を作るイベントを実施しました。まずは、鎌倉市民の皆さまに活動を認知してもらうためです。

つめかえパックの回収ボックスは、カヤックさんの本社をはじめ、鎌倉市立小・中学校の全校25校、公立保育園など6園、および江ノ電鎌倉駅など3カ所の、計34カ所に設置しました。


×

【鎌倉リサイクリエーションプロジェクト】第一弾の様子。鎌倉企業、市民団体、様々な人がタッグを組んだ異色の取り組みとなった

 

 

松本

そして、2019年からの第二弾は地域に根ざした活動を行いたいと思い、環境教育という形になりました。

 

ーー教育的なアプローチを選ばれた理由はあるのですか?

 

松本

「使い終わったつめかえパック」パックは一般廃棄物なので、ボランティアなどで勝手に集めることが法律的にできないんですね。行政となんども議論するなかで、教育目的で学校で集めるならよいということになった。その制限の中で我々が活動していくには、環境教育という切り口が適していると考えました。

 

ーー環境教育とはどのようなものか教えてください。

 

松本

小学校4年生のカリキュラムに「ごみのゆくえ」という授業がある。それに絡めた形で、【リサイクリエーション】を通じて環境問題について考えてもらう活動です。2019年から鎌倉市立御成小学校で「環境授業」を実施してきました。

通常、環境教育は一コマの授業で終わってしまう。でも御成小学校さんからは通年でやりたいと言っていただけました。

 

ーー通年ですとじっくり取り組めますね。授業では、具体的にどのようなことをされたのですか?

 

松本

一回目は、【リサイクリエーション】を知ってもらうための、花王社員による座学。回収ボックスはすでに設置してありましたので、二学期の二回目は、どのようにして学内で回収を広めるのか、子どもたちが自分で企画し行動する期間になりました。最後に、実際にやったことを発表してもらう場を設け、弊社やカヤックさんなどのリサイクリエーションチームや、鎌倉市役所のかたも出席しました。

 

白鳥

私たちは主に授業を後ろで見守り、ディスカッションのフォローをしました。1クラスを7、8人に分け、そこに大人が一人付くんです。子どもたちは本当に素直だし、面白がって取り組んでいる様子を生で見て、学ぶところが多かった。同じテーマで大人だけのミーティングをしても、問いかけに対する取り組みかたが全然違う。もともと「【リサイクリエーション】は楽しまないと続かない」と花王さんからも伺っていたので、子どもたちを見て初心にかえることが多かったです。

 

西植

子どもたちのチェックが結構厳しくて、「環境について授業しているのに、ペットボトルの飲みものを飲んでいる」と指摘を受けたりしました。普段から水筒を持たなきゃ、なんて襟を正されました、笑。質問も鋭く大人がヒヤヒヤする場面もあって、忖度なしでしたね。

 未来の環境のために何ができるのか。たくさんのアイデアが飛び交う教室

 

 

松本

さらに、子どもたちから、市役所やスーパーなど学外でも回収活動をしてみたい、との声が上がったんです。熱心な姿を実際に見た市役所のかたが快諾してくれて、学校の外での活動にまで発展していきました。鎌倉FMに出演して広報をしたり、ポスターを書いてくれたりして。我々もそこまでできるとは想定外でしたね。

 

西植

最後に学外での活動が決まって、これは絶対に動画で残したほうがいい、と提案させてもらいました。いい笑顔を近くで写したいけれど、著作権や肖像権の問題もあるので、気は使いましたね。急なアイデアでバタバタしたけれど、いい映像を残せたなと満足しています。

 

×

カヤック制作動画、花王 RecyCreation リサイクリエーション 鎌倉市立御成小学校環境教育


 

ーー環境授業で心がけたことや、印象的だったことはありますか?

 

西植

僕たち大人が押し付けるのではなく、子どもたちで考えて自発的に動いてもらうようにしていましたね。先生たちの熱量も高かった。

 

松本

先生たちとは十回以上、事前にミーティングしました。いろいろなアイデアを出してくれたり、生徒のやりたいことは全て実現したいと熱いリクエストも。大変ではあったのですが、ここまでの熱量は予想外でありがたかったです。

 

白鳥

出演したご縁もあって、鎌倉FMさんから学外活動の動画をホームページのバナーに掲載させてください、とおしゃっていただけて嬉しかったですね。回収に取り組む子どもたちを見て、みんな好意的になってくださって。まちの人たちにも、子どもたちの姿が響いたというか。

 

落合

私は、この6年生の授業の時は参加していなかったのですが、その後の4年生の授業では、テクニカルメンバー兼講師をさせていただきました。やはり子どもたちの熱意が強かった。中にはSDGsに関して興味を持ち、家に帰ってから個人的に資料を作ってくれた子もいました。直接子どもたちのもとへ行って何かを伝える、という価値をすごく感じました。

 

松本

あと、口にプラスチックが入っているクジラを紙粘土で作った子どもがいて、すごく感動したんです。以前、由比ヶ浜にシロナガスクジラの赤ちゃんが打ち上げられ、それを見て感じたことを表現したそうです。ある先生がおっしゃっていたのですが、発表や作文などの言葉による表現が苦手な子もいる。問題意識には様々な表現の仕方があるので、言葉以外の表現も大切に受け止めたい、と感じました。

 

2018年「第9回花王国際こども環境絵画コンテスト」の入賞作品「ごみを食べるクジラ」をモチーフに、つめかえパックから再加工した「おかえりブロック」で再現した

■ジブンゴト化で地域課題を身近に

 

ーー他の地域でも実施された花王さんの【リサイクリエーション】ですが、鎌倉で行ってみていかがでしたか?

 

松本

環境意識の高い団体や、志の同じ人同士がつながる場がたくさんあるという印象です。海が近いこともあって、子どもたちも海洋プラスチック問題をすでによく理解している。【リサイクリエーション】とも結び付けて考えてくれるので、活動しやすかったですね。

 

ーー市民一人一人にアクションを求めるプロジェクト。地域の中に入りこみ呼びかけていく難しさはあったのでしょうか。

 

松本

ありがたいことに、皆さん顔が広いんですよね。カヤックさんと駅前や商店街を一緒に歩くと、いろんな人から声をかけられている。今年の目標でもあるのですが、地域の人たちともっと知り合えば、やれることがさらに広がると思っています。

 

江ノ島駅に「おかえりブロック」で作ったベンチを設置する鎌倉リサイクリエーションメンバー。地域との強いつながりをバネに、今後も活動を広げる

 

ーーカヤックとご一緒されて、何か印象的なことはありましたか。

 

松本

皆さんのブレストのスキルが高く、ファシリテーションの部分も参考にさせてもらっていました。また、久しぶりにカヤックさんのホームページを拝見したのですが、「何をやるかより誰とやるか」という部分はすごく刺さりました。誰とやるかは本当に重要だと思いました。

 

ーー今後のリサイクリエーションの展望や、達成したい未来ついて教えてください。

 

松本

今は、中々大きなイベントもできない。認知度もまだまだ低く、鎌倉市民全体にどうやって広げていくかを話し合っているところです。コロナがニューノーマルになった状況で、今までとは違う認知度の向上を試行錯誤しています。

 

西植

メンバーでずっと会話を続けているところなのですが、環境授業をいい意味でカジュアルにし、パッケージ化してみたい。例えば、オンラインのカリキュラムにしていき、場所も御成小学校に限定せず行えたらいいですね。

 

落合

鎌倉市の小学校にチラシを配布したところ、御成小学校以外からも環境授業を取り入れたいと声がかかりました。これを機に、環境問題を身近に感じられる子どもたちがもっと増えたらいいなと思っています。

 

白鳥

今、環境授業が企画イベントのようになってしまっているんですね。一過性ではなく、継続した回収活動を市民生活の中に落としこみ、ジブンゴト化できるよう、これからも地道に働きかけていきたいです。

 

西植

今後の活動としては、2021年5月30日の「ゴミゼロの日」に行う【ゴミフェス】を企画しています。たまたま、カマコンの発表で「生ゴミを減らしたい」「マイボトルを推奨したい」「リサイクリエーション」という3つの環境系企画のプレゼンがあったんです。最後にやなさん(カヤック社長)の一言で「三者で、フェスやっちゃいなよ」という話になって。すでに実行委員会も立ち上がって、話が進んでいるところです。

 

落合

【ゴミフェス】では、コミュニティ通貨「まちのコイン」も使えるように話し合っていますよね。

 

松本

カヤックさんはいつも面白いことを仕掛ける会社、意思決定の仕方もユニークですよね! 私もカマコンに参加していたのですが、地域の人がオンラインで集まり、イベントやプロジェクトがスピーディーに発生していく様子を目の当たりにして、鎌倉ならでは、カヤックさんならではだな、と実感しました。

【ゴミフェス】では「まちのコイン」との連動も仕掛けていきたいですし、志の近いかたがたとつながる場としてうまく機能してくれるといい。顔合わせができない状況を乗り越えるアイデアとして、とても期待しています。

 

 

 ーーーーーーーー

「誰とやるか、どこでやるか」を重視するカヤックならではの、地域との強い結びつき。さらに、カマコンをはじめとしたよりよいまちを目指す社会資本は、未来への大きな資産です。SDGs未来都市にも選定された鎌倉から、「使ったら、捨ててしまうあたりまえ」を変えていく活動を、今後も多彩なアイデアと行動力で支えていきます。

 

取材・文 二木薫

 




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