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コロナ禍で潰れかかった鎌倉のカフェが、行列のできる人気店になったわけ。古民家を再生したヴィーガン(完全菜食)カフェ「COTONOHA(コトノハ)」の成功ストーリー

著者: COTONOHA

古民家ヴィーガンカフェCOTONOHAは、“はじめてのvegan。たまにはお野菜”をキャッチコピーに、コロナパンデミックで緊急事態宣言が出される最中の2021年2月に北鎌倉初(自社調べ)のヴィーガンカフェとして舵を切りました。

順調に進み常連客も増える中、2022年6月にはその古民家が再開発で取り壊しになり、現在の長谷の古民家で今年4月15日に再スタート。決して順風満帆とはいえなかったCOTONOHAですが、今では国内外・老若男女多種多様な方々に愛される、おいしさと幸せを届けるカフェとして不動の人気カフェとなっています。

料理したことのない主婦がカフェをオープンするまで

オーナーの野中芳絵は三児の母。三世代同居の家庭で主婦と子育てをしながら、おしゃれとファッション好きの趣味が興じて、自宅近くで海外からニット糸を輸入するお店「gigi knitting Kitakamakura」を経営。編み物やニットが”古臭い”というイメージを覆したいと、最先端のニットを集めたお店を作りました。


一方で、生まれ育った北鎌倉の自宅近くで、赤ちゃんからおばあちゃんまで近所の人たちが気軽に寄れるカフェをやりたい!と思い、ふらっと立ち寄った不動産屋で見つけた昭和のこじんまりとした古民家物件に、ここだと直観で即決したそうです。お化け屋敷みたいな古い空き家を、持ち主の思い出と愛をも昇華させるべく見違えるような素敵なカフェに生まれ変わらせました。

(写真:建て壊しとなった旧店舗の北鎌倉の古民家)

しかし、主婦と言っても家事は母親任せで、特に料理に関してはまったくというほど作ったことがなかったため、地元の有名店の元料理長を迎え、スタート。

しかし初めての飲食店、なかなか軌道に乗せることはできずにいるところに、コロナパンデミックが追い打ちをかけお店を閉めることになりました。

ベジフードプロデューサー・千葉芽弓さんとの出逢い

2020年12月の年の瀬のこと。

せっかく古民家再生し生まれ変わらせた素敵なカフェがあるのに、八方ふさがりでどうしてよいかわからずにいた時、知人であり現在野中の右腕となるスタッフに、千葉さんを紹介されます。

健康・環境・多様性対応等の社会問題の解決のためにどこのレストランでもベジタリアン対応をと、2014年から普及啓蒙活動やコンサルティングをしてきた千葉さんからの、鎌倉野菜の魅力を生かした完全なヴィーガンカフェへの転向の提案を、当初は疑心暗鬼でありながらも、元来の人と違うことをしたい!という革命家精神を持つ野中は、信じてやってみようとなります。

年明けから急ピッチで再スタートへ向けてコンサルティングと打ち合わせ・試作を繰り返し、吉日の2月8日をXデーに決め、試作試食でメニューを固めていきます。


看板メニューのできるまで

千葉さんからのコンセプトとメニュー提案。完全なヴィーガンにすることへの不安は否めませんでした。野中はお肉も好きだしヴィーガンのことはよくわからない。しかし、提案されたメニューを試食してみると、Veganでない人が食べて美味しいと思う料理で、鎌倉野菜の彩りが最大限に生かされ、提供されたときに悦びがある美しさやかわいらしさがありました。

千葉さんのポリシーでもある提供された時の“Wow”という感動、まずは見て感動しさらに食べて感動し、食べ終わったあとにしっくりと心地よく幸せに満たされるお料理を提供することの大切さや、無添加・無化学調味料で自然な調味料や油、食材にも嘘がないこと、手間暇愛情かけて作ることが、必ずリピーターやファンが増えるということなどを学んで、忠実に再現していきました。

なぜなら、料理を知らない野中にとって、言われることに疑う余地もなく信じてやるしかなく、もしかして料理をたくさんしてきていたら、手間を惜しんで楽をしようと加工品や電子レンジを使ったりしたかもしれません。

「ヴィーガン=無添加無化調なのだと信じ込んでいましたから」と笑いながら話されます。

当初は新体制で主軸シェフとしてお願いしようとしていた友人は途中でリタイアし、2人体制になったときは不安も覚えたそうですが、その時点でもすでに沢山のお客様がリピートして通ってくれるお店となっていたため、お客様の喜ぶ笑顔が支えとなり、屈すること・ブレることなくそのクオリティを貫いて作り、堅実に提供し続けました。

一番人気の看板メニュー「グラスアートサラダのブッダプレート」は鎌倉の海をイメージしたサンドアートをモチーフにしたグラスに入ったサラダのついたブッダボウル。彩りの美しい鎌倉野菜はその彩りを最大限に生かすことができ、ブランディングの武器になると千葉さんに背中を押されました。

野菜はレンバイという鎌倉駅近くの市場に、自ら買い出しに行き、お米は千葉さんの友人の育てる佐賀の光吉農産の無農薬米の五分づき米に黒米を混ぜて炊いています。

大豆ミートの唐揚げは、野菜のヘタや端材をつかってしっかり臭みを消し、消化分解しやすく下処理も丁寧に行うことも習った通りに行うため、おいしい唐揚げと評判です。

オートミールを使った独自レシピの肉団子も大人気です。

他にもテンペストという全粒大豆の発酵食品の肉そぼろ風や、卵もどき、ラペやマリネ、素揚げ野菜をはじめ季節の野菜の惣菜をたっぷり、味のバリエーションを豊かに飽きない味の工夫をしています。


ひじきや根菜を入れたオリジナルのカレープレートも人気です。


コロナ禍であったこともあり、COTONOHAでお野菜をたっぷりおいしく食べて1日分の栄養を摂ってもらいたいという思いもあり、テイクアウトや季節行事に寄り添う恵方巻やおせち料理なども作り、外出規制の最中に地元の方をはじめ人々に寄り添うカフェとして着実にファンを増やしてきました。


6月限定、紫陽花を愛でる観光客で賑わう長谷で提供した紫陽花膳も大好評でした。


ランチ後の午後の時間は、自家製ナチュラルスイーツのアフタヌーンティーと薬草BARでお好きなハーブや薬膳食材、薬草をブレンドして好きなだけカフェタイムを楽しんでゆったり過ごしてもらえるようにしています。

生命力のある旬の新鮮なお野菜たっぷりの、食べてほっとするお料理。お腹いっぱいでも苦しくなく消化負担のないCOTONOHAのお料理で幸せを感じていただきたいと、日々願っています。

家族が原動力。すべてが人のご縁と助けから

北鎌倉店舗の立ち退き

ヴィーガンへの転向だけでなく、北鎌倉の古民家取り壊しを機に、藤沢でのまり乳腺外科のシェアキッチンでの間借り営業、foodtruckの購入、長谷への移転、すべてが人のご縁が運んでくれました。

そこにあるのが野中自身が愛と人の繋がりを大切にする姿勢。コミュニケーションを大切にフットワーク軽く足を運んで縁をつないだり、忙しくても怠らない頑張る姿を見て、お客様が声をかけてくれたり紹介してくれたりしてトントン拍子に進んできました。


COTONOHAは調理から接客まで2人で切り盛りしています。

野中の右腕となり二人三脚でCOTONOHAを切り盛りするPugh Manamiさん。もともとデザイナーズブランドで働いていたManamiさんは、アンティークと古着リメイクの店をgigi knittingの一角で運営していました。野中にとってなくてはならない存在で言葉に出さずとも常に手を差し伸べCOTONOHAを作り上げています。ご主人がイギリス人であるため、英語も堪能で外国人のお客様の対応・料理説明もお手の物。

二人のタッグで、カフェでの料理提供だけでなく大量のお弁当までを作ったり、時にはケータリングもしたり、すべてを回していることには驚きです。

ヴィーガン料理は手間がかかる、と言われますが、COTONOHAを訪れると、たくさんの仕込みにも疲れた顔をひとつも見せずに笑顔で接客までもこなすパワーウィメンたちの姿に皆が元気をもらえることでしょう。

野中のモチベーションは、「まず何よりも子供たちがいつも笑顔で楽しく過ごせること。」家族の絆こそが一番の原動力です。ご先祖への感謝も大切にしています。

そして、古民家を使わせていただくにはそこに愛されて迎え入れてもらうことも大切だと、場を清めて愛を注ぐことも忘れません。北鎌倉も長谷も両方の古民家の壁の珪藻土も野中本人が塗り、隅々まで愛情をかけて作り上げています。


持続可能であること~COTONOHAのサスティナブルな取り組みと社会貢献~

COTONOHAの軸とする4つの柱をご紹介します。

1.ヴィーガン、うそのない料理

家畜による環境負荷や、家畜のえさのために人間の食料が奪われる一方世界で増える飢餓問題、食の欧米化による健康問題を減らすことへのアクションや、アレルギーやポリシーなど食の多様性に対応等の、SDGsへのアクションが可能になっています。

COTONOHAの嘘のない自然な料理を食べることで。野菜や食物繊維不足の解消のお役に立ち、心身の健やかさお手伝いになりたいと思っています。

2. 空き家やリサイクル家具の活用、地域活性

全国の空き家率は20%にもなると言われ、今後も増々増えると言われながらも新しいマンションがどんどん建設されています。長期放置されている空き家は、治安面や衛生面など問題も大きく、何よりもったいない。小規模使い道の少ない昭和の庶民の民家を生まれ変わらせ、新たな価値を作るモデルケースとして北鎌倉、長谷ともに体現しています。

また、人の流入を作ることで、街の価値を揚げ地域活性化につながります。

3.地産地消

自家農園の無農薬で育てる野菜や、地元の農家さんの鎌倉野菜を中心に使うことで、輸送にかかる環境負荷やコストを削減や生産者支援になるとともに、鮮度の高い採れたての野菜のおいしさと、生命力を五臓六腑に届けることができます。

自家農園では、半年ほど前からお店で使うお野菜たちを義父と夫が無農薬で育てるようになり、一部まかなえるようになり、Farm to Tableも実現させています。

4.息の長い愛されるお店作り

飲食店は次々とオープンしますが、開店から2年以内にその5割強が閉店すると言われています。サスティナビリティからヴィーガンやプラントベースの料理を出すお店も増えていますが、継続することは並大抵なことではありません。

長く愛され続けるお店として継続することは無駄をなくし、人々の心のオアシスになれます。

毎日イートイン・テイクアウトで売り切ることで、食材を無駄なく使い切ることでフードロスをなくすことに。

お店でお料理を残す人はほとんどいないそうです。おいしく食べきればゴミも減るしいいことだらけですね。


■愛されるお店を作るポイントをプロデューサーの千葉さんに聞きました。

「まずは初志貫徹、スクラップ&ビルドで明確な方向転換をする時を除いては、コンセプトと軸は絶対にブラさないことです。そして継続に大切なのは〝三方よし〟であること。三方よしとは、「お客様」「お店の従業員」「社会」の3つすべてがHAPPYであることです。そのどれが欠けてもバランスは崩れます。

ここ2年程、SDGsの流れやインバウンドの急増から、ヴィーガンの認知は上がり、ヴィーガンメニューを出すお店や商品は随分増加。企業をはじめ様々な新規参入が増えていますが、高加工品が多いです。命の糧となり心身が喜ぶ、安心して飽きずに食べられ、また食べたいと思える季節に合った”自然な料理”を提供することの大切さを必ず伝えています。

なぜなら、自然界の生き物である私たち人間は旬のものやその土地に合った食べ物を食べることで生命力を養うことができます。そして世界に誇る、期待値の高い健康的な日本食は、世界基準を見ても必ずもっと価値が上がるでしょうし、これからはより食の安全性やお客様のニーズに寄り添うことが求められていくに違いないと思うからです。

改めて外食の価値が見直される今、皆が納得し笑顔になることをして愛され、また行きたいお店になるように。

そのためにプロとして、信頼関係を何よりも大切にすること。そして客観的な視点で寄り添い、時代のトレンドと潮目を見てアドバイスとサポートをし、持続可能にしていくことが役目だと思っています。

”儲けよう“以上に”喜んでもらおう“と頑張るCOTONOHAは、私の描く模範的なカフェとして頑張ってくれていて、私も誇りです。」

COTONOHAの未来について

将来のビジョンについて尋ねると、

「娘とは将来、ドッグカフェを一緒にやりたいと話しています。

また、COTONOHAには外国人観光客のお客様も多く、喜びの声もたくさん頂くこともあり、観光客の多い鎌倉だからこそ外国人の団体客向けにバイキング形式で多くのお客様が一度に入れるような施設もできたらいいなと。バス1台到着してみんながすぐ食べられるような場所があれば喜ばれるだろうなと思っています。

1人ではできないことも、協力者がいれば叶うと夢を描いています。

キッチンカーも今は余力がなく動かせていませんが、今後はもっと稼働していきたいです。」

野中を見ていると、きっと夢は夢でなく近い将来実現させるのだろうな、と思えます。

飲食店でありがちな目の前のことに疲弊しきる、というのではなく、常に夢を描いて大きなビジョンを掲げるポジティブさ、消して順風満帆とはいえなかったCOTONOHAが変化を転機に飛躍してきた軌跡が、食材高騰で飲食店経営はとても厳しい今、同業の方々の元気と勇気になれたらと思います。

COTONOHA

所在地:神奈川県鎌倉市長谷2丁目10−34

℡:0467-25-5508

営業時間:11:00~17:00

定休日:水・木曜日

Instagram:

https://www.instagram.com/cotonoha.kitakamakura/




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