職人が手作業で作る、100の花壇を組み合わせた大花壇は必見!花と緑を1つにつなげる「ガーデンネックレス横浜」
「ガーデンシティ横浜」を目指す横浜市のチャレンジ
「わっ……!」
色とりどりの花々に、みな息を止め、感嘆の声を漏らす。職人が手作業で作り上げた大花壇だ。ここは横浜市旭区の里山ガーデン、市内最大級の約10,000㎡の広さを誇る「横浜の花で彩る大花壇」。竹林を縫うように設けられた空中散歩道を抜け、広いデッキに着くと、その花壇はある。毎年開催されるイベント「ガーデンネックレス横浜」のメイン会場の1つ、里山ガーデンでのワンシーンだ。会期中、横浜市内は花と緑で包まれる。
ガーデンネックレス横浜は2017年以降、毎年行われており、今年で5年目に入る。2021年春も「ガーデンネックレス横浜2021」と題し、3月27日(土)から6月13日(日)まで開催される予定だ(里山ガーデンを会場とする里山ガーデンフェスタは3月27日(土)から5月9日(日)まで)。
写真は2020年のもの。会場ではガーデンネックレス横浜の
公式マスコットキャラクター、ガーデンベアが出迎えてくれる。
「2017年の春、横浜で『第33回全国都市緑化よこはまフェア』が開催されました。『全国都市緑化フェア』は都市緑化の推進を目的とした全国的なイベントで、毎年、主催都市が変わります。この年は横浜を舞台に行われ、延べ600万人を超えるお客様に来ていただけました」。そう語るのは横浜市環境創造局の大浦康史だ。「延べ600万人」とは、当時にして過去最高の入場者数だったと言う。
横浜市 環境創造局
みどりアップ推進部
みどりアップ推進課 担当係長
大浦 康史(やすひと)
「実はこの全国都市緑化よこはまフェアの際につくられた愛称が『ガーデンネックレス横浜』なんです」(大浦)
「里山ガーデン」と、山下公園やみなとみらいを含む「みなとエリア」をメイン会場とし、市内に設けられた大小さまざまな会場をつなぐ。横浜全域に花と緑の巨大なネックレスが飾られる、というわけだ。
画像は「ガーデンネックレス横浜2021」資料より。
「『街をつなげる』というのはもちろんなのですが、2017年の全国都市緑化よこはまフェアでは、多くの市民のみなさま、企業のみなさま、たくさんの方と一緒に作り上げることで、『人とのつながり』も強く感じられました」(大浦)
こうして大盛況に終わった全国都市緑化よこはまフェア。この成果を一過性のものとして終わらせないよう、横浜市は新たなブランディング・コンセプト「ガーデンシティ横浜」を打ち立てた。横浜らしい花や緑のある豊かな自然環境を作り上げることで街の賑わいを創出していこうという取り組みであり、そのリーディングプロジェクトとして、「ガーデンネックレス横浜」の愛称を引き継いで開催を続けることが決まったのだった。
100の花壇、100通りの演出の花々
里山ガーデンの「横浜の花で彩る大花壇」
取材が行われた2021年2月末。3月27日から開催される「ガーデンネックレス横浜2021」のため、メイン会場の1つである里山ガーデンでは準備が着々と進んでいた。里山ガーデンフェスタの運営を務める横浜市環境創造局の柴田壮一朗は言う。
「秋の会期が終わったらすぐ、再利用できる花は市内各区の公園などへ配布し、春の開催に向けて、肥料を混ぜて耕耘しての土づくりです。土づくりが終わったらすぐに種を蒔き、11月末までにはチューリップなどの球根を植え始めますね。そして、ちょうど2月下旬から花苗が入ってきて、いまの時期は、それを植えている最中なんです」。半年がかりで行われてきた準備が終盤を迎えているというわけだ。
横浜市 環境創造局
公園緑地部 動物園課 担当係長
柴田 壮一朗
「花苗を植える植物もあれば、種や球根から育てる植物もあるんです」と言うのは里山ガーデンの維持管理を行う横浜庭苑の松尾真吾。2017年の全国都市緑化よこはまフェアから里山ガーデンの造園に関わるベテランだ。
松尾とともに働く古川歌凜が続ける。「里山ガーデンの大花壇は、細かく約100の花壇に分かれているんです。この花壇にはこの種、この球根との組み合わせ、と複雑に設計がされているので、なかなか大変な作業です」。古川は入社3年目のまだ若いスタッフであるが、松尾の信頼は厚い。
(写真左)
横浜庭苑株式会社
取締役
造園事業部 副事業部長
松尾 真吾
(写真右)
横浜庭苑株式会社
造園事業部
古川 歌凜(こがわ・かりん)
「こちらが全体の設計図です」と柴田。「この一つひとつの花壇はこの色の植物をメインにして、この分量で植える、といった指示書ですね。この設計図をもとに綿密な作業をしてくださっているのが横浜庭苑さんなのです」
里山ガーデン、大花壇の設計図。約100ある花壇はそれぞれ複雑な形をしている。
「一つひとつの花壇を花びらのデザインにしています。上から見ると花びらが舞っているように見えるんです」(大浦) とのことだ。
写真は2020年のもの。細かくデザインされた図面をもとに大花壇は作られている。
来場客を楽しませるための「見るたびに違う景色」は
日々の丁寧な仕事から生まれる
花壇が100あれば、植える植物の組み合わせもさまざま。黄色をメインにした花壇、青をメインにした花壇と、植える植物が決まっていく。たとえば、この花壇はベースとして桃黄のパンジーと白のワスレナグサ、淡黄のビオラなど数種、アクセントとして白のキンギョソウに黄緑のバーベナなど数種、メインとしてチューリップを数種……といった具合だ。中には、球根を植えたその上に種を蒔くという花壇もあるという。
「球根は土の深いところに植えます。その上に種を蒔くという作業もしています。球根の花が咲き終わっても種の植物が育ち続け、会期中、ずっとお花を楽しめる。そういう仕掛けですね」(松尾)
「『一面の〇〇花畑』というような風景は全国でよく見られますが、このように多種多様な組み合わせでさまざまな花々を愛でることができる見せ方は珍しいと思います。色もさまざまですが、チューリップひとつとっても、早く咲くチューリップ、遅く咲くチューリップと、いろいろ。一斉に全部が咲くというわけではないんです」(大浦)
「2週間後にもう一度行ってみると今度は別の花が咲いています。花の色味が移り変わるので、訪れるたびに景色が変わるんです」(柴田)
「いつ来ても美しい風景が見られる」という景観を作るには、咲き終わった花をしっかりと摘み取る作業が大切になる。見た目の話だけでなく、この作業が次の植物の生育にも影響するからだ。なるほど、イベントの初日を迎えたら仕事が終わるということではないらしい。
「もちろんです」と柴田。「1カ月の会期がありますから、会期途中で咲き終わってしまう植物もあります。そういった植物は閉園後の時間を使って植え替えをしていただいていたりもしてるんです」
当然、日々の手入れも欠かせない。開園から閉園までの時間帯は大がかりに水やりをすることができないため、松尾をはじめとするスタッフは、会期中は開園前の朝6時から水やりを行う。会場が開いている時間は花がら摘みの作業などを行い、植物の植え替えや、車両を入れる必要のある作業は閉園後。朝から晩までの大変な仕事だが、彼らの仕事があるからこそ、里山ガーデンの大花壇は常に美しさを保っていられるのだ。
「大変なことだらけではないんですよ」と松尾。「実は私、数年前に難病を患いまして。当時は造園土木施工管理などの総合的な業務をしていたのですが、後遺症が残り、そういった仕事に復帰するのは難しいかな、と……」。ちょうど同じタイミングで、横浜庭苑が全国都市緑化よこはまフェアでの造園を手がけることが決まった。「手作業が中心のお花の仕事ならできるかなということで、担当させていただきました」と松尾は振り返る。
「でもね、お花の力ってすごいですよ。癒されて。お客様から『素敵なお花を見せてくれてありがとう』と声をかけていただくこともありますし。お花の仕事を始めてから、どんどん元気になっていくんです」。自然が作り出すカラフルな色味がそうさせるのか、それとも芳しい香りのせいか。いずれにしても、ぜひ会場で「花の力」に触れていただきたい。
加えてこの大花壇、その多くには横浜産の苗が使われている。「1回の会期で、約6万ポットの苗を使用します。そのうち、約5万5000ポットを横浜市内の花卉(かき)農家さんが育てたものです」(柴田)。花壇の設計が決まり、どんな植物をどのくらい植えるのかが決まった段階で花卉農家に依頼する。横浜庭苑のスタッフが準備に奔走するのと並行して、市内の花卉農家も苗の準備を進めるのだ。「横浜ならではの花壇」はこうして作られているのである。
ガーデンネックレス横浜の公式YouTubeチャンネル。
過去の開催の様子も映像で楽しむことができる。
https://www.youtube.com/channel/UCiU6A1aeU73XYgTeoc7xdsw
メイン会場の1つ、里山ガーデンでは
周辺の施設を巻き込んでの新たな展開も
実は、ここ里山ガーデンもまた、2017年の全国都市緑化よこはまフェアの際に整備された場所だ。近年、ここでは新たなチャレンジが行われている。
「Park-PFIを活用した取り組みです」(柴田)
Park-PFI(パーク ピーエフアイ)とは、2017年の都市公園法改正によって設けられた「公募設置管理制度」のこと。民間の活力を最大限に活かして、緑・オープンスペースの整備・保全を効果的に推進し、緑豊かで魅力的な街づくりを実現しようというコンセプトのもと、都市公園などの公園施設内で民間事業者が事業を行う仕組みである。
2019年に里山ガーデン内でオープンした「フォレストアドベンチャー・よこはま」は、横浜市内で初めてPark-PFIを活用して設置されたものだ。ここでは、特殊な道具を使用して地上約9mの高さからネットに向かって飛び込む「ターザンスイング」、約12mの高さから樹上から地上へ滑空する「ジップスライド」など、スリリングな体験ができる。大人も楽しめる、本格的な自然共生型アウトドアパークだ。さらに翌2020年には、敷地を拡張する形で「トレイルアドベンチャー・よこはま」をオープン。マウンテンバイク(MTB)や電動モーターバイク(E-BIKE)で森の中を駆け抜ける新感覚なアウトドア施設だ。初めての人でも楽しめ、早くも人気を博している。
フォレストアドベンチャー・よこはま
https://fa-yokohama.foret-aventure.jp
トレイルアドベンチャー・よこはま
https://trailadventure.jp/access/yokohama
「里山ガーデンフェスタに来てくださる方は比較的、年齢層の高い方が多いんです。もちろん、ズーラシアが隣接しているので、これまでもファミリー層のお客様にも楽しんでいただけていたのですが、フォレストアドベンチャー・よこはま、トレイルアドベンチャー・よこはまのオープンによって、より一層、さまざまな世代の方々にお越しいただいています。新しい人の流れができたような気がしています」と柴田は言う。
「2027年の国際園芸博覧会の開催に向けて
ガーデンネックレス横浜をずっと続けていきたい」
ガーデンネックレス横浜で横浜市内全域に人の流れが生まれ、メイン会場の1つである里山ガーデン周辺にも、新しい人の流れが。さらに大花壇にフォーカスすると、ここにもまた、温かな人の流れが生まれていた。
笑顔を浮かべながら古川が言う。「ガーデンネックレス横浜でのお仕事を何度か経験させていただきましたが、会期中、花の手入れをしている時に来場者の方から声をかけられることが多くて。『このお花は何ていう名前ですか?』『横浜にこんな素晴らしいところがあったんですね!』って。同じ方に半年後、またここでお会いできたこともありました。ご近所の方がお散歩中にこちらに立ち寄ることもあって、その時にちょっとした会話を交わすことも。地域の方とのつながりを強く感じます」
横浜市は2027年、国際園芸博覧会の開催を控えている。オランダのハーグにある国際園芸家協会の認定を受けて開かれる国際的な博覧会であり、日本では過去、1990年に大阪で開催されて以来の大イベントだ。
国際園芸博覧会は2027年3月〜9月に開催が予定されている。
「2017年春に全国都市緑化よこはまフェア。翌2018年から毎年開催しているガーデンネックレス横浜。そして2027年に国際園芸博覧会。まだ6年ほどありますが、それまでずっとガーデンネックレス横浜を続けていき、国際園芸博覧会に向けての機運を高めていきたいと思っています」と力強く大浦は言う。
「6年後ということは、古川さんが脂の乗り切った時期ですね(笑)。『私に着いてこい!』くらいのリーダーシップで現場を率いていってほしいです」と期待を込めるのは柴田だ。このアットホームな現場がガーデンネックレス横浜を作り、ひいては、近い将来、「ガーデンシティ横浜」を実現させるのであろう。
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