印鑑屋から「こころをひと押し」企業へ。親子の絆をひと押しする、新商品「みちてらす」開発。
2021年3月15日に創業100周年を迎えたサンビー株式会社。創業以来、人を尊重する組織文化の中で、印鑑という商品を通して人々のコミュニケーションのきっかけを提供し、その「こころ」をより良い方向に「ひと押し」してきました。今回、3月24日にリリースされた新商品「みちてらす」は、人生の大切な局面で、大切な我が子のこころをひと押しできるようにという想いでつくった実印に最適な印鑑です。親の想いのこもった「名前」を、我が子の多幸を願い、今まで育ててきた長年の想いとともに、人生の節目に実印として改めて贈る。そんな今までにないコンセプトの「みちてらす」の開発の背景には、数々の決意や苦労がありました。印鑑廃止論も提唱されているこれからの時代に、どのような想いでこの「みちてらす」を生み出したのか。そして、今後はどのように進んでいくのか。同社の代表取締役社長・山本忠利氏にお話を伺いました。
みちてらす 商品HPはこちらから:https://www.sanby.co.jp/michiterasu/index.html
100周年を前に迎えた、「印鑑廃止」の波と転機。
サンビーの始まりは、1921年、大正時代にさかのぼります。奈良市で印材製造業として創業し、その後山本仙治商店、山仙商事株式会社と成長を遂げました。昭和の時代には、回転印、浸透印(朱肉なしでも押せるスタンプ)、数字やアルファベットが自由に変更できる連結式のスタンプ、日付印など、当時としては画期的な数々のアイディアヒット商品を生み出し、時代を切り拓いてきました。現在も、全国各地の印章店・文具店・量販店などを通して、サンビー商品が日本中で使用されています。オフィスやレジのカウンターなどで、グリーンとアイボリー色のサンビーのスタンプを見かけたことがある方も少なくはないのでしょうか。
しかし一方で、近年はオンライン化・ペーパーレス化が急速に進み、各所で印鑑廃止論が叫ばれるようになりました。この問題は政府でも取り上げられ、印章業界には逆風が吹きはじめました。その当時の心境について、サンビーの現・代表取締役社長(当時は専務取締役)の山本忠利氏はこう振り返ります。
代表取締役社長 山本忠利氏
山本:「印鑑の需要が減っていく中で、今までその製造・販売を行なってきた自分たちは、これからどこに向かっていくべきなのか。自分たちは何を強みとし、どのように時代に合わせて進化をしていくべきなのか。改めて、自分たちの『使命』は何なのかを明確にする必要がある、と感じました。」
そこで、サンビーの歴史やDNAを振り返りながら、改めて自社の使命を紐解く「ASITA PROJECT」がスタートしました。
人の気持ちに、誰よりも寄り添ってきたサンビー。
「ASITA PROJECT」には、山本氏を中心に複数名の役員や社員が参加し、サンビーで長年ご活躍されたOBの方々にもご協力いただきながらサンビーの歴史を紐解き、議論を進めていきました。内容について、山本氏はこう語ります。
山本:「サンビーの過去を紐解いていくと、フロンティア精神やアイディア力が強みだったことが分かったのですが、何より特徴的だったのは、サンビーが昔から人を中心に考え、人を大切にしてきたことです。山仙商事時代の社是の一つが『人間尊重』で、1970年代にも『心ゆたかなコミュニケーションづくり』というスローガンがつくられたほど。印章というツールを通して、お互いの気持ちを伝え合い、尊重し合う、そんな社会をつくりたいというDNAが昔からありました。数々のアイディア商品も『使う人が少しでも楽しく、ラクに、長く使えるように』と人を想ってつくられたものばかり。ですから、これからもサンビーが大切にしていくべきなのは『人の気持ち』なのではないか、と皆で考えたのです。現代には、手軽で便利なコミュニケーションツールはたくさんありますが、残念ながら誤解やすれ違いはなくなりません。人と触れ合う機会も少なくなってきています。だからこそ、サンビーの商品をきっかけに、例えばありふれた日常にちょっとした会話が生まれたり、相手のあたたかい気持ちが感じとれたり、自分自身の気持ちが少し上がったり、そんなシーンがつくれるといいな、と思いました。」
「人」に想いを馳せて企画された、サンビーの数々の歴代ヒット商品
また、人を中心に考え、人を大切にするという考え方は、山本氏自身の基本姿勢でもありました。
山本:「私は事業承継には珍しく、新卒でサンビーに入社したんです。いきなり外からやってきてイニシアチブをとっていくタイプの社長にはなれないと思ったからです。最初は工場の製造ライン作業からスタートして、営業、企画など、ほとんど全ての現場を経験しました。どの現場でも大切にしていたのが、日頃から社員さんと話をしたり、話しかけてもらいやすい存在になることでした。相手の気持ちをまず知りたい、という思いは子どもの頃からあります。小学生の頃、将来は社長になりたいと思っていたことがありました。社長は人を幸せにできる職業だというイメージがあったから。人を幸せにするには、まずその気持ちに向き合うことが大切だと考えています。」
社内のどの部署の人も共感できる言葉にしたいという山本氏の想いのもと、プロジェクトメンバーでは幾度も議論が重ねられ、最終的にサンビーのミッションは「モノづくりを通じて、気持ちをひと押しするシーンをつくる」に決定。そして新しいスローガンは「こころをひと押し」になりました。そして令和2年7月21日。山本忠利氏が、同社の代表取締役社長に就任。サンビーとして新たな一歩を踏み出した瞬間でした。
印鑑屋から「こころをひと押し」企業になるために。
しかし、ミッションやスローガンなどの理念ができただけでは、まだスタートに過ぎません。大切なのは、その理念をどのように体現していくかでした。また、時代に合わせたビジネスモデルやターゲットも、新たに探していく必要があります。そこで、2020年8月、翌年の100周年記念に向けて、サンビーの理念「こころをひと押し」を体現する象徴商品の開発が始まりました。
企画会議には、理念づくりにも携わっていたサンビーの管理部長・西村浩司氏、企画開発室係長 ・立花公嗣氏、関連会社である株式会社東京製版の常務取締役・遠藤章光氏がプロジェクトメンバーとして参画。新商品企画の難しさについて、山本氏はこう語ります。
山本:「新しいアイディアはどんどん出てくるのですが、それを最終的に一つのコンセプトにまとめるのは非常に難しかったです。本当にサンビーがやる意味があるのか、社会にとって必要とされるものなのか、会社都合で考えていないか、という判断軸が重要でした。弊社は今までずっとBtoB企業で、どちらかというと自社の技術力を起点にした“シーズ発想”で事務用商品の開発を行なってきた会社です。なので、使い手である一般消費者のニーズとなるシーンを想像し、どんな商品であれば喜んでもらえるのか、“顧客の体験価値” を中心に考え企画していくのは、慣れない経験でした。」
使い手のシーンを知るために、プロジェクトメンバーのご家族や知人など、何人にもヒアリングを行ないました。すると次第に、印鑑は家の購入や結婚など、人生の大切な節目に使われていて、そのための一本は、高価なものを購入していた人が多いことがわかりました。また、特定の人気のある印鑑ブランドを指名買いするわけではなく、販売店舗やネット店であまりブランドにはこだわりを持たずに購入している人が多いことも分かってきました。そして、今後、事務的な印鑑の需要は減っていくかもしれませんが、人生に大切な節目で使用する一生に一本の実印には、まだまだ可能性が秘められているのではないか、という仮説にたどり着きました。
印鑑が必要になるのは、一人暮らしをはじめたり、新社会人になって「ひとり立ち」をするタイミング。その時に、我が子を送り出す親が、想いを込めて子どもの人生を「ひと押し」できるような印鑑をつくれないか。そんなアイディアが出てきました。
山本:「プロジェクトメンバーが、私も含めて全員『父親』だったので、リアルに考えることができました。普段は母親の方が子どもと接する機会が多く、私たち父親はなかなか自分の想いを伝えきれていません。そもそも、想いをストレートに伝えるのは、恥ずかしくてなかなかできないのかもしれません(笑) そこで、印鑑を贈ることで、さりげなく想いが伝わるといいなと思ったのです。そうすれば、父親の気持ちも、子どもの人生も『ひと押し』できると思いました。」
親が子の幸せを願い、様々な想いを込めてつけた「名前」。その「名前」が刻まれた実印に、我が子を育てた長年の想いを込めて、新たな門出のタイミングで贈ることで、その先の人生の多幸を願う。そんな商品コンセプトが決定しました。
100周年記念商品開発プロジェクトメンバー (右上から時計回りに/管理部長・西村浩司氏、企画開発室係長 ・立花公嗣氏、株式会社東京製版常務取締役・遠藤章光氏、山本氏)
想いがそっと伝わる、特別な一本をつくりたい。
贈り手である父親の心をくすぐり、さらに贈られたお子様に喜んでいただける印鑑にするため、材料選びからネーミング、ロゴデザイン、印鑑のフォルムやケース、外箱まで、一貫したストーリー性にこだわり、検討をしていきました。
山本:「古くから高級な印鑑に使用されているのは象牙。木材では柘(つげ)材。最近ではチタンも増えています。ですが、今までにない素材で、親が我が子の一生の多幸を願うのにふさわしい材料にしたいと、ゼロから考えました。調達の責任者でもあった西村が奔走し、仕入れ先様のお力添えもあり、最終的にはとても希少な伊勢ヒノキを使用することに決まりました。一生モノの一本ですから、長く使えるもの、ずっと大切にしたくなるものにしたかったのです。」
伊勢ヒノキは、古来より伊勢神宮の建て替えにも使用されてきたという歴史を持つ、由緒正しいヒノキです。 伊勢神宮の天照大神と、印鑑を通して親が我が子の「道を照らす」という意味をかけ、商品名は「みちてらす」に決定しました。さらに、プロジェクトメンバーの遠藤氏の一言がきっかけで、そのストーリーから商品ロゴや印鑑のフォルム、外箱の仕様も一つひとつにこだわり何度も議論して決めていきました。
山本:「特にこだわったのは印鑑のフォルムです。大切な場面で押す印鑑なので、押しやすい形で、かつ見た目も洗練されたものにしたい。そう考え、社内からアイデアを募り、設計に知見のある立花と試作品を何個も作り、ミリ単位で調整しました。また、お子様の個性に合わせて2種類のフォルムが選べるような仕掛けもつくりました。」
3月24日のリリース日が迫るなか、ぎりぎりまで商品のブラッシュアップが続けられ、ついに受注開始の日を迎えることができました。
「こころをひと押し」しつづける企業として。
商品が決定し、3月24日から先行予約が開始されましたが、実際にお客様に届くのはもう数ヶ月先のこと。ここからが正念場になります。
山本:「今回は、サンビーの原点に戻り、改めて『心のつながりをつくる』という『シーンづくり』ができたのではと思います。ですが、初めての挑戦なので、期待と不安、どちらもあります。お客様に喜んでいただきたい、こころをひと押ししたいとつくった私たちの想いが届くと良いなと思います。そして、お客様からの反響をしっかり今後のプロジェクトに還元していきたいです。」
そして、挑戦は今回の「みちてらす」だけにとどまりません。サンビーとして「こころをひと押し」ができる新しい市場の開拓、既存の枠を超えた新規事業・新商品開発に、今後も挑戦を続けていきます。
山本:「まだジャストアイディアですが、サンビー本社のある上本町は有名な文教地区なので、子どもたちの学習や未来づくりに役立つようなツールの開発でお役に立つことができるかもしれない、と考えたりもしています。印鑑・スタンプ・事務用品という枠を越えて、社外のたくさんの専門家の方、異業界の方とも交流しながら、様々な分野で新しい可能性を探っていきたいです。」
そして最後に、これから新たな100年を歩んでいくにあたり、サンビーの代表取締役社長として、決意していることがありました。
山本:「サンビーという会社を大きくしていきたいというより、皆が誇りを持って働ける会社にしていきたいです。『自分の携わっている仕事が、こんな風に世の中の人のこころをひと押しできたんだ』という実感を従業員一人ひとりが持てるように、情報発信やお客様の声のフィードバックなど、積極的にしていきたいです。何より、社内の仲間にも、世の中の一人ひとりにも、優しいサンビーでありたい。事業を通して、こころとこころがつながり通じあう豊かな人生に、少しでも貢献できたらと思います。」
みちてらす 商品HPはこちらから:https://www.sanby.co.jp/michiterasu/index.html
会社概要
会社名:サンビー株式会社
所在地:大阪市天王寺区石ヶ辻町13番10号
代表者:代表取締役社長:山本 忠利
事業内容:印章用品および事務用品の販売ならびに製造。各種ゴム印の製造ならびに販売。
TEL:06-6773-2141(本社)
URL:https://www.sanby.co.jp
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