ニチリウ永瀬式オープンイノベーションの課題と未来(前編)
ニチリウ永瀬のオープンイノベーションプログラム「Co Creative Project」の発足から1年。担当者はどんな思いで事業を推進してきたのか、プロジェクトの経緯と成果についてインタビューしました。
Member
ニチリウ永瀬 事業戦略本部 DX推進部 部長 山村 尚史
ニチリウ永瀬 経営企画部 部長 林 大輔
<オブザーバー>Zero-Ten 常務執行役員 栗原 聡
「Co Creative Project 」について
農業園芸商社であるニチリウ永瀬が推進している共創プログラム。西日本最大の農業園芸商社だからこそのネットワークを活かし、外部パートナーと共に、ビジネスアイデアの実現とサービス拡大を促進する取り組みを実施。「農業」「食」「暮らし」に関わるキーワードをもとに、未来の暮らしのあり方を考えます。2020年6月に本格始動。社外のビジネスパートナーを発掘し、共創による新規事業立ち上げを目指しています。
オープンイノベーションは「百人組手」年間100社以上の企業とセッションして
プロジェクト発足の背景を教えてください。
《栗原》 当時社外取締役だった疋田氏から「オープンイノベーション」について何かできないかと課題をいただき、共にプロジェクトを進める流れになったのが最初です。2020年の1月ごろに新部署を立ち上げられましたが、本格的に始動されたのは4月ごろだったと記憶しています。私たちZERO-TENは全国にコワーキングスペースを展開していたので、そのネットワークを生かして何かできないかと、お声掛けいただいたんです。
《林》私は途中から参画したので詳しい経緯はわからないのですが、山村さん、どのような感じでプロジェクトが進み始めたのでしょうか。
《山村》ニチリウ永瀬は勤続年数が20、30年以上の社員が多く、社内だけだと新しいアイデアが生まれにくい環境です。そこで、社外のパートナーと“共創”することで、新しい事業構築を強化していきたいと考えました。
《栗原》プロジェクトが動き始めた去年の春ごろは、新型コロナウイルスの影響はそれほどでもなかったので、リアルイベントをいくつか企画していましたよね。
《山村》そうでしたね。オープンセミナーやセッションを通して、福岡でオープンイノベーションと言えば「ニチリウ永瀬」、というポジションを取りに行こうとしたんです。栗原さんから「スピード重視ですか、それとも数重視でいきましょうか」と聞かれたので、「とにかく数重視。インプットと露出を増やしましょう」とお伝えしました。「共創」「インプット」「露出」は私たちが特に大切にしているキーワードです。
《栗原》リアルなイベントはコロナの影響で結局中止となりましたが、当初は「とにかくやってみれば、いろんな人が来てくれるのでは」という前向きな期待が強かった。今思えば、それほど簡単に人は集まらなかったでしょうけどね(笑)。その後、セッションを繰り返すなかで「新しいアイデアや出会いは、そう簡単に生み出されるものではないな」と実感することになりました。
《山村》率直に言うと、オープンイノベーションってけっこう大変なんです。初対面の相手と向き合って、自己紹介から始まり、リアルなビジネスの話から事業立ち上げの糸口を探る。領域の違う業界の構造を把握したうえで、1時間か2時間で何らかのアイデアを練る。そうしたセッションをこの1年間で100社以上。週に2回のペースで誰かに会っていたことになります。これはまさに「百人組手」だと思いましたね。
《林》あらためて考えると、ものすごいペースですね。
《栗原》最初は私たちのネットワークからいくつかの相手先をピックアップし、興味のある事業や企業をニチリウ永瀬さんに選んでいただきました。また、進めるなかで「こんな業界の人と会ってみたい」「この企業とつながりたい」という要望をいただいたり、初対面でゼロから扉を叩いたりしたパターンもあります。
《山村》社内には複数の部署があるので、「少しでも関連性があるなら」と思って、ただひたすら人に会っていましたね。
欲しかったブレイクスルーは思ってもみない時に起こる
印象に残っているセッションは?
《林》流れが変わったきっかけは、去年7月に東京で開催した成澤さんとのセッションだった気がします。動物病院の先生やお寺ワークを推進されてる方など、ユニークな方々が集まるカオスな状況で、正直「これで何か生まれるのか」と最初は不安だったんです。ところが、成澤さんのファシリテーションの巧さもあり、すごく良いセッションになった。私たちは「参加者の間に何らかのつながりがないとダメ」と思い込んでいたのですが、「共通点がなければ、つなげればいいんだ」とわかりました。
《栗原》一見関連がない集まりに見えても、実は接点がある。そう気づかれたのですね。
《林》あのセッションがきっかけで、認知症関連のプロジェクトが生まれました。ただの出会いの場が、「認知症」という予想外のキーワードでつながっていった。当時は認知症についてあまり詳しくなかったので、「社会のさまざまな分野にアンテナを張っておかなければ」と気づかせてもらえたのも大きかったですね。
《山村》「認知症の現実は甘くない」と実感し、事業を組み立てるなかで、社会課題に取り組む意義についても考え直しました。その時、最も強く感じたのは「あれこれと考えて動かないのは損だ」ということ。「成功の反対は何もしないこと」なんです。
《林》セッションではさまざまな分野の方々が10名ほど集まっていましたよね。私と山村さんは別々にグループに入り、それぞれのチームでセッションを進めました。
《山村》すごかったのは、集まった曲者たちをひとつにまとめた成澤さんのプレゼン能力です。そのセッションがきっかけで、成澤さんとニチリウ永瀬はアドバイザー契約を結び、月に1回セッションをしていただいています。
《栗原》成澤さんをご紹介した時、最初はどうなるかわからないと思っていましたが、うまく進んで何よりです。契約の話を聞いた時は驚きましたが、知らない相手や未知の世界を門前払いするのではなく、基本的に一度はすべて受け止めてくださるのがニチリウ永瀬さんのすごいところだと思います。オープンイノベーションには大切なマインドです。包容力のあるニチリウ永瀬さんだからこそ、私も「何かしら興味を持ってもらえそうな案件は、とにかく一度投げてみる」というスタンスを取っています。
事業成功に欠かせないスピードとコミュニケーション
新規事業を進めるのに重要なポイントは?
《栗原》金尾社長の肝入りで始まったプロジェクトで、社長に近いお二人が進められたので、意思決定や確認がものすごくスムーズで、かつスピード感がありました。
《山村》予算を握る上司やトップと認識をすり合わせておく事は大事ですね。中長期の観点で軸がぶれないように、常にコミュニケーションを取っておくことです。今は週1くらいですが、コロナ禍でリモート作業になる前は頻繁に話していました。
《林》今回学んだことのひとつに、「時間の大切さ」もあります。「社内外とのコミュニケーションを密に」という課題があるなか、以前は社内会議に多くの時間を割いていました。役員会や各部署との毎月のMTGに充てる時間を、4日から2日に短縮しました。
《山村》一方で、社内の各部署とのブリッジは今度の課題でもあります。私たちが先頭に立って動きながらも、社内全体の視座が高まっていくのが理想です。
《林》その前に、まずはわれわれが結果を出さなければと思っています。結果があれば、おのずと人もついてきますから。
《山村》現場があってこそ、新規開拓に集中できます。
《林》社内のいろんな部署やキャリアのメンバーが、新規事業開拓に加わってくれるとうれしいですよね。
《山村》さらに、事業のステージにもよりますが、売り手と買い手という既存のアセットに何かを乗せるだけでは、新規事業はうまくいきません。「新しい暮らしをプロデュースする」といった大きなテーマを持ちながらも、一つひとつの課題についてもっとスコープしていかなければいけないと考えています。
視座を高める出会いと変化が新規事業の種に変わる
オープンイノベーションに取り組んだこの1年間で、ご自身に変化はありましたか?
《林》きっかけがあれば、変われる人は変われる。そう実感した1年でした。昨年末、社内のメンバーで1年間を振り返った時に「今年の漢字一文字」を発表したんです。私は「変化」の「化」、山村は「変」の一字を選びました。
《山村》私も林も「化けた」んですよ。林は見た目もですが(笑)
《林》本当ですよ。去年は今の3倍くらいの体重でしたからね。
《栗原》3倍は盛りすぎでしょ!
《山村》サウナに行ったり、禁煙したりね。
《栗原》良い影響を受けて自身の行動に取り入れるオープンイノベーションのマインドが、お二人の中に自然と根付いた結果だと思います。日々そうした選択をするうちに、アウトプットが変わっているのも事実でしょう。
《山村》この習慣は、実は私たちの重要なパートナーの小澤さんという方がロールモデルなんです。「良い」と思ったことは何でもすぐに取り入れる。それが成功の近道だということに、私も林も気づいたんですよ。自分に合わなければやめればいい。時代に逆行しないことなら「とにかくやってみる」という行動力が、私たちの「進化」に必要なんだと実感しました。
《林》小澤さんに突然、「林くん、痩せないの?」と聞かれて、最初は「面倒くさい」と思ったんです。でも、私の行動は見られているはずだと考えて、打算的にダイエットを始めたんです。結果、やってみると楽しくて、さらには健康に気を使うようにまでなっちゃいました。
《山村》もう一つ言えるのは、新しいことを始める時は、それまでの自分を否定しなければいけないということ。これは、新規事業に必要な素養だと感じています。過去の成功体験に縛られていると、なかなかうまく事業が進みません。
《林》過去は変えられないけど、未来と自分は変えられる。過去は過去として受け入れて、否定まではしなくても、いったんリセットすればいい。
《山村》切り替えが大事ですよね。この認識は、1年間で随分と変わりました。
《栗原》変化上手なお二人でさえも、「まだ変化が必要だ」と思われているんですね。
《林》「上には上がいる」ということですね。この1年間ですごい人たちと出会えたことが、私たちの大きな財産だと思っています。素敵な人たちに出会うことで、自分たちの視座を高めることができた。
《山村》「視座」も私たちのキーワードのひとつですね。視座の高い人と定期的に出会い、彼らの真似をしたり壁打ちしてもらったりすることで、自身の視座を高めることができるんです。結果、会社の視座も高くなります。
《山村》質の高いインプットと出会いが自分の視座を高め、思わぬ形で新規事業につながっていく。そのスパイラルを体感できたのがこの1年間の最大の収穫でした。
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Co-Creativeプロジェクト | Application (nichiryunagase-co-creative.com)
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