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倉庫業界の「掟破り」から生まれたサービス minikura

著者: 寺田倉庫株式会社


今よりも寺田倉庫という会社の知名度が低かった頃。倉庫業界の画一化された市場から抜け出そうとローンチしたサービスが「minikura(ミニクラ)」です。利用方法は至ってシンプルで、Web上から保管用ボックスを注文し、ボックスが届いたら荷物を詰めて集荷を申し込む。すると、預けたアイテムをスタッフが写真撮影してリスト化、パソコンやスマートフォンで確認することができるというもの。その名のとおり”小さな倉”のように手軽に利用でき、手続きは全てオンラインで完結します。2012年9月にサービスを開始し、現在の登録ユーザー数はリリース初年度のおよそ10倍です。業界の先駆者としてひた走る本サービスの誕生秘話を紹介します。



月森正憲 執行役員/minikura担当

1998年寺田倉庫に新卒入社後、約7年間倉庫現場にて庫内オペレーションに従事する。その後、営業を経て企画担当へ。2012年に、ユーザーが預けた荷物をWEB上で管理できる宅配型トランクサービス「minikura」をリリース。2013年に、倉庫システムをAPI化し様々な企業と新規事業を共同で創出。また、倉庫・物流に悩むスタートアップ6社をこれまでに支援し、うち3社では社外取締役を務める。



同業他社と“戦わない”ビジネスへ

今をさかのぼること2010年。当時の寺田倉庫は、中堅倉庫会社として大きな壁にぶつかっていました。当社はそれまで、取り扱い数量の多い法人顧客に向けて保管・物流事業を展開してきたのですが、ロジスティックスの大手企業と肩を並べていくと価格競争にさらされ、中堅企業であるわれわれの良さが失われてしまうという危機感がありました。さらには個人向けトランクルーム事業の流行に伴い、不動産業界など異業種も参入してきたのです。そこで、ライバルがやらないことに挑戦する、新たな倉庫ビジネスに大きく舵を切りました。



業界常識の真逆をいく

まず、われわれは当時主戦場の一つであった法人向けの物流サービスを縮小し、個人向けサービスと法人向けであっても預かるモノを特化する事業モデルへ転換していきました。その中で、個人顧客からお預かりした荷物の箱を開けるという、業界のタブーに挑みました。


きっかけは、トランクルームの課題点に着目したこと。利用者がトランクルームまで足を運ばないと荷物の出し入れができず、預けたまま中身が何か分からなくなったり、契約自体を忘れてしまったりするケースが少なくなかったのです。


そこで、「顧客の代わりに、持ち物を1点1点管理するサービスを開拓できるのではないか」という考えから、今まで培ってきた物流ノウハウにITを掛け合わせることで、預かっているモノを個別に可視化したのです。オンラインで個品管理することで、利用者と当社の双方にメリットがあるオンラインサービスが誕生しました。



パートナーと広める

まだ世にないサービスを恐る恐る開始した後、倉庫会社であるわれわれはマーケティング・プロモーションが苦手だという現実にぶち当たりました。(苦笑)

寺田倉庫の認知度が低い中、サービスを必要としている方に向けて、どうやってアプローチしていくべきか。そして、個人顧客が倉庫を使うという意識付けとそれを促すマーケティングが戦略の肝となりました。しばらく運用していくと、多種多様なニーズや荷物を1社で集めるより、タッグを組んで集める方が効率的なのでは、と考え始めました。


そこで、minikuraのシステムと外部の企業やサービスとの連携を可能にするAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)を構築しました。その物流プラットフォームを他のWebサービス企業に販売するというビジネスモデルを考えたのです。株式会社サマリーの「サマリーポケット」、株式会社BANDAI SPIRITSの「魂ガレージ」などに機能提供を行い、現在までに計10社(2021年6月時点)とのビジネスアライアンスを組んでいます。協力会社の物流を担いながら、その中でminikuraを広めてもらう、いわゆる「パートナー戦略」が事業の急成長を大きく支えてくれました。今やminikura関連事業の年平均成長率は104%(2020年時点)です。




外で培ったノウハウを社内にも

他社との協業を進めるうちに分かってきたのが、この仕組みは「“1点モノ”という概念で扱うモノと相性がいい」ということ。これを社内で他の保管サービスに活かすことはできないものだろうか。そうして生まれたサービスのひとつが「TERRADA WINE STORAGE ONLINE」です。当社は1970年代からワインセラー事業を展開しており、ワインに関する保存保管のノウハウは十分にあります。そこで、minikuraの仕組みを活用し、ワインを最適な環境で保管するストレージと保管中のコレクションをオンラインで管理するサービスを掛け合わせて「次世代のワインセラー」を作りました。







お預かりしたワインは、当社が検品・撮影・ワイン詳細データの手入力を行い、マイページ上にユーザーだけのワインノートが自動的に生成される仕組みです。出入庫もスマートフォンひとつでOK。例えば、「お子様の生まれ年のワインを預けて、お子様が成人したときに一緒に味わう」といった素敵な需要もじわじわと増えています。


このように、寺田倉庫にはminikuraのAPIを応用して生まれた個品管理サービスが数多く存在します。API・専門品保管、それぞれに強いエキスパートが1つの会社に存在したからこそ、なし得たことといえます。



感動ナンバーワンのサービスに

今後は思い立ったらすぐにモノを預けられる世界をもっと追求しつつ、その先のフェーズとして、モノを預かった「後」に着目し、ユーザーにより価値を感じてもらえる機能を拡充していきたいですね。例えば、長期間預かっているモノをレンタルできる機能や、24時間いつでも荷物を出し入れできる機能が実現すれば、よりローカライズされたロジスティクスが構築できるかもしれません。今後もモノをお預かりする技術にテクノロジーを組み合わせることで生活を改新させ、ユーザーの価値となるサービスを生み出し続けていきたいと考えています。そしてminikuraを感動ナンバーワンのサービスに成長させることに挑戦していきます。


【minikura】

https://minikura.com/




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