3兆円規模が見込まれるDX市場を主戦場にするコンサルティング会社がレザーグッズブランドを立ち上げた理由
DXコンサルティングを提供するKeepAlive株式会社は、2021年6月にレザーグッズブランド「Onemiler & Detrans」(ワンマイラー&デトランズ、以下 O&D)を立ち上げました。
クライアント企業のDXを推進する会社が、なぜレザーグッズを制作するに至ったのか?O&Dに込めた思いと開発の裏側をお伝えします。
デジタル一辺倒のIT業界と古い商習慣がはびこるファッション業界。双方の課題感が起点になった
O&D開発プロジェクトの中心人物は、KeepAlive株式会社 CEOの成田敦とクリエイティブディレクターの鮫島雄貴です。
2020年はコロナ禍による行動変容が急激に進み、DXにさらなる注目が集まった年でした。
成田は、「リアルとテクノロジーが融合して、お客さんの商材や現場、顧客を大胆に変革することこそがDX。IT会社がシステムやツールを開発して提供するだけでは変革は起きません。オンラインだけで完結するのではなく、リアルを変えていくことがDXの本質です」と話します。
大規模システムの企画構想と全体アーキテクチャの設計に豊富な経験を持つ成田ですが、デジタルのみでは解決できない領域の存在を認識し、DXにおける課題感を抱えていました。
「デジタルはビットで扱う以上、0か1かの型にはめ込みがちになってしまう。対するアナログは例えるならば、無段階変速。ギザギザの変速ショックがなく、滑らかでスムーズです。モノでいえば経年による変化を味と呼んだり、質感を温かみと表現したり。デジタル一辺倒でDXをやろうとすると、そうしたアナログの良さを潰してしまう。デジタルな考えだけが加速すると、窮屈な世の中になってしまうと懸念しました」。
とかくデジタルでの変革と捉えられがちなDXにおいて、成田はデジタルとアナログのバランスが大事との考えを強めていったのです。
一方、クリエイティブディレクターの鮫島は、15年間に渡りデザイナーとして携わってきたファッションとレザーグッズの業界に閉塞感を感じていました。
人手による棚卸しを行ったり、古いPOSシステムが刷新されることなく使われていたりと、ITに投資する意識は低かったと言います。体質も保守的で、百貨店から顧客の信用を損なう可能性があると判断された商品は置いてもらえませんでした。
「染色した革は、摩擦によって色落ちすることがあります。経年変化が風合いであると説明するブランドもありますが、たいていは『お客様の持ち物が汚れたら困る』という百貨店の言われるまま。変化のない商流習慣や文化のままでは、客も商品も若返らないのにと不満でした」と鮫島は言います。
鮫島は5年間勤めた創業100年を超える老舗メーカーを退職しました。
互いの業界で課題感や閉塞感を抱えていた2人が出会ったのは、ちょうどその頃。
「課題を打破して新しい発想でモノを生み出したい。それをユーザに届けることで古い慣習・堅苦しい業界に新たな風を吹かせて、解決策を見出そう」。2人の意見が統合するまでに時間はかかりませんでした。
「新しい方向への転換を実現する」意志を込めて企画構想を進める
KeepAliveはDXを推進する独自のフレームワーク「>>switch」を策定し、それを基にしたコンサルティングサービスを提供する企業です。
先行して自社のDXを進めながら、「>>switch」フレームワークを使い自社内での新規事業創出にも取り組んでいます。
アナログプロダクトにテクノロジーの視点を掛け合わせて進化させる「Nexing Project」(Nexingは“Next”と“thing”をかけ合わせた造語)も、「>>switch」の一環。
構想に3カ月以上の時間をかけ、鮫島の得意領域であるレザーグッズにおける企画「Onemiler & Detrans」がNexing Project第一弾として生まれました。
ブランドコンセプトは「Best 1mile. ワンマイルの自由を楽しむ。」です。
コロナ禍で人々の行動圏は狭まりましたが、KeepAliveは「>>switch」に基づいてポジティブな価値観とスタイルを提案。
自分の好きな街や愛する地域である「自分のワンマイル」を気持ちよくおしゃれに楽しむ人を「ワンマイラー」と名付けました。そこに、Design の De と Trans(Transport/輸送する、Transit/通過する、Transform/変形するという、何かが移動したり変わったりといった意味合いを含む接頭辞)を掛け合わせた造語をブランド名としました。
「今ある状況からの脱却」や「新しい方向への転換」を実現することへのKeepAliveの意志が込められています。
“ワンマイラーが使いやすい機能美に優れたトートバッグやショルダーバッグ、財布などのラインナップを揃える。その上で、ストラップやスマートフォンケース、エアタグ用キーリング・チャームなどを自由に着脱できるようにして、シーンや気持ちに合わせた最適な組み合わせを可能にしたい。ボディにはイタリア・トスカーナ産の最高級牛革、ハンドル部分やネックストラップには姫路産のエンボス加工を施した牛革を使い、リラックス感がありながら最高にリュクスなアイテムにしたい“。
企画構想をリアルなアイテムへと具現化するアクションを急ピッチで進めました。
コロナ禍による混乱でサンプル品到着が遅延。相次ぐ困難に見舞われる
いよいよ制作開始です。しかし新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は、材料の仕入れに大きな影響を及ぼしました。
通常ならイタリアから複数の見本革を取り寄せ時間をかけて選ぶことができるのですが、コロナ禍の混乱のなかでは難しい。スピード感を重視して、どの革にするかを決めた上でサンプルをオーダーするというイレギュラーな対応を取りました。
それにも関わらず、遅延に次ぐ遅延でファーストサンプルがなかなか届きません。職人を待たせてしまうことから、これ以上の遅れは許されない。最終リミットが迫ります。
鮫島はフィレンツェの革輸入業者に工場を訪れてもらい、直談判をお願いすることに。するとコロナ陽性者が出たため、行政からの指導で工場が閉鎖されていることがわかりました。
焦りましたが閉鎖が解除されるのを待ち、ギリギリでどうにか調達することができました。
その後も混乱は続きます。通常ならば、フィレンツェ→香港→成田の輸送ルートなのですが、コロナ禍による減便の影響で、フィレンツェ→パリ→フランクフルト→香港→成田という非常に時間がかかるルートとなりました。
それを見越してスケジュールを立ててはいたものの、予想を上回る流通の混乱があったと鮫島は振り返ります。
成田は納品やデリバリーに関するアパレルの難しさを体感しつつ、DXでやるべきことはどこかを見極め、課題をあぶり出せたと言います。
自らのリアルな体験をノウハウとして、実業のコンサルテーションやソリューションに落とし込む。これこそが他社にはない、KeepAliveならではの強みです。
完成形ではなく現在進行形。ブランドが見据える未来
混乱を乗り越えて、ついにO&Dは完成を迎えます。
2021年5月末から6月初めにかけて、KeepAlive WorkingBase 新宿御苑で全20種類以上の商品展示会を行いました。
無名のブランドながらコンセプトや使い方を丁寧に説明することで、多くの人に関心を持ってもらえることを実感。実際に来場者からは、相当数の発注がありました。
一般消費者へ向けた展開のスタートは2021年11月を予定しています。自社ECでの販売の他、シリコンバレー発の体験型ストア「b8ta Tokyo」への出展など、O&Dのコンセプトを理解してもらえるアプローチ方法を計画しています。
本格展開を目前に控えるO&Dですが、完成形ではありません。
今後市場に出るO&D商品には、NFCチップを埋め込みます。QRコードのように情報を読み込む目的にも使える他、NFCアプリと連動すれば位置情報や他アプリの起動など、さまざまな機能を実現することができます。
オフラインからオンラインへの架け橋が可能になり、KeepAliveがNexingProjectで目指す「デジタルとアナログが融合したプロダクトの進化形」を示すことができるのです。
テクノロジーを纏ったO&Dを身に着けることでワンマイラーは、様々な情報を得たり交流が生まれたりと、新たな世界に触れられるようになります。
そしてそこではサービスの可能性が広がり、ビジネスが生まれます。
ここまでの流れについてプレゼンテーションばかりでなく、実在するモノとして触れて体感することで、より理解が深まると思いませんか?
KeepAliveは、新規事業・製品・サービス等の企画をゼロベースから立ち上げるためのワークショップ「switch0⇒1」(スイッチゼロワン)を開催しています。
O&D立ち上げまでのノウハウをモデルケースとして紹介し、参加者へのノベルティグッズとしてO&Dを活用することも計画中です。
O&Dの立ち上げが、KeepAliveにとってプロダクト販売だけに留まらない意義を持つことをご理解いただけたのではないでしょうか。
私たちが取り組むのは、DX推進のコンセプト「>>switch」の啓蒙であり、R&DをベースにしてクライアントのDXを支援すること。
KeepAliveはDX業界をリードする企業となり、お客さまはもちろん投資家からも評価される存在を目指しています。
「Onemiler & Detrans」公式サイト
https://www.instagram.com/onemilerdetrans/
行動者ストーリー詳細へ
PR TIMES STORYトップへ