すべての人が、もっとファッションを楽しめる社会をつくりたい!アダストリア発のインクルーシブファッションプロジェクト「Play fashion! for ALL」
「Play fashion!」をミッションに掲げる株式会社アダストリアが、社内事業提案プロジェクト「Project A」で一人の社員が提案した、インクルーシブファッションサービス「Play fashion! for ALL」を発足しました。
インクルーシブファッションとは、障がいの有無や年齢、性別、国籍などに関わらず、すべての人を孤立させず、包摂することを目指すファッションのこと。「Play fashion! for ALL」は、「スタンダードを、変えていこう、広げていこう。」をコンセプトに、さまざまな立場の人の視点や想いを大切にしたファッションを生みだしていきます。
本プロジェクトを立ち上げたのは、マーケティング部でビッグデータ分析を担当する坂野 世里奈(ばんのせりな)。マーケティング部に所属する彼女がサービスを立ち上げるまでの経緯や、そこに秘めた想いについて語ってもらいました。
いつだって、誰だって、
ファッションを楽しめる社会をつくりたい。
父の介護生活を通じて改めて実感。
――インクルーシブファッションに関するサービスを立ち上げようと思った経緯を教えてください。
きっかけは2017年5月に他界した私の父の介護経験です。父は20年以上にわたって闘病生活を続けており、病院への入退院も幾度となく繰り返していました。
ちょっとミーハーで、オシャレが好きで、アクティブな性格だった父。元気な頃は一緒に映画や旅行に行ったり、ポロシャツをプレゼントしたりと、自他共に認める仲良し親子でした。私が結婚して子どもを生んでからは、良きおじいちゃん。娘、息子ともよく遊んでくれました。
しかし、他界する半年ほど前に要介護5の認定を受け、完全に寝たきりの介護生活へ。最後は会話もできない状態でした。父の症状が悪化するにつれ、新しい洋服をプレゼントする機会はなくなっていきましたね。それができる状況ではなかったというのもありますが、そもそも、寝たきりの父が着られるような洋服も見つからなかったんです。
インクルーシブファッションについて考えるようになったのは、父の他界からしばらく経ってから。ようやく介護生活中のことを振り返られるようになったとき、「もっと私にできることはあったんじゃないか。もっとファッションを楽しむ方法を考えれば良かったんじゃないか」と思うようになりました。
私が働いているアダストリアのミッションは「Play fashion!」。このメッセージを、もっともっとたくさんの人に広めたい。そして、誰もが、どんなときでも、ファッションを楽しめる社会をつくりたいと思い立ったんです。これが、「Play fashion! for ALL」が生まれた背景ですね。そこからは、行動あるのみ!でした。
個人の想いを実現するチャンス。
社内事業提案プロジェクト「PROJECT A」に参加。
――自分の想いをどうやってプロジェクト化へとつなげたのでしょうか。
アダストリアには、会社に所属する誰もが自由に企画やアイデアを発表できる社内事業提案プロジェクト「PROJECT A」があります。私は、そのチャンスを通じて自分の想いを実現したいと考えました。
決意した後は、行動あるのみでした。グループ会社である「アダストリア・ゼネラルサポート」の各営業所を尋ねて、実際にファッションで困っていることがある当事者の人たちの声をヒアリングしたり、プロジェクト化した際の具体的な事業案などをまとめたり……「PROJECT A」の決勝プレゼンでは、社内外の審査員の前で事業について発表もしました。事業提案は初めての経験でしたが、とにかく、一心不乱に頑張りました。
プレゼン時に主張したのは、「今私たちが販売している服は、高齢者の方や障がいや持病を抱える方にとって着づらい点がいくつもある」ということ。「社会には、さまざまな人がいます。年齢や性別をはじめ、好みも、ライフスタイルも、体型も、一人ひとり違うのが当たり前。誰もが“同じじゃない”ということを、もっともっと考えたサービスが必要なんです!」と訴えたのを覚えています。
それから、「すべての人がファッションを楽しめる社会を、アダストリアが率先して築いていくべきだ」とも話しましたね。30以上のブランドを国内外で約1,400店舗出店している私たちだからこそ、社会を変える力があるという確信がありました。
――坂野の想いが伝わり、「Play fashion! for ALL」はサービス化に向けて2020年12月より本格的なプロジェクトがスタート。障がいのある従業員が約200名働くアダストリアグループの特例子会社「アダストリア・ゼネラルサポート」より3人のメンバーをプロジェクトに迎え、3DCGデザイン「VIRTUAL CLOTHING™(バーチャルクロージング)」の技術を持つ繊維専門商社の豊島株式会社と協同しながら、企画・制作を進めました。
ファッションの楽しさを叶えるため、
一人ひとりの声を大切に。
全行程フルリモートで進行。
――プロジェクト化が決まり、どのように商品制作を進めたのでしょうか?
「Play fashion! for ALL」に参加してくれたメンバーは、膠原病(こうげんびょう)という持病を抱え、何度も入退院を繰り返している小林さん(群馬県勤務)。事故をきっかけに車いす生活を送る鈴木さん(山形県勤務)。身長約110cmの伊勢坊さん(茨城県勤務)の3人。同じアダストリアグループの仲間として、そして、私の想いに賛同してくれた同志として、このプロジェクトに参加することを快諾してくれました。
それぞれ遠方に住んでいますし、コロナ禍という状況下だったので会議はすべてリモート体制で実施。まずは3人から「ファッションに対する悩み」をヒアリングし、「どうすればファッションをもっと楽しめるか」を一緒に考えました。
何度も話をする中で、私自身も気づかなかったこと、考えたこともなかったような意見をたくさん聞くことができました。平均よりも握力がないからボタンが外しづらい、車いすを漕ぐときに服が汚れてしまう、上着を脱ぐときに裾が床にこすれてしまう……など、どの悩みもハッとさせられてばかり。父ともまた違った悩みが知れて、改めて「一人ひとり違う」ことを実感しました。
そこで出たアイデアをもとにデザインやパターンを制作しました。3DCG(VIRTUAL CLOTHING™)を活用して3人それぞれの体型データから3DCGアバターをつくり、実際の着用イメージをチェックしながらパターン修正を行いました。3D上だと360度、どの角度からでも検証ができるためファーストサンプルの仕上がりの精度も高かったですね。その後、実際に着用してみた様子をオンライン上で確認するなど、丁寧に品質チェックを進めていきました。
ひとりのニーズを叶える服は、
いつしか、みんなの願いを叶える服になる。
――実際に完成した商品について教えてください。
【1】わたしに寄り添う入院パジャマセット
何度も入退院を繰り返している小林さん。病院内ではずっとパジャマで、中々おしゃれを楽しめないという悩みがありました。そこで、おしゃれで、ラクに過ごせるパジャマをつくることに。点滴を打つ際にまくりやすいようトップスの袖部分にループをつけたり、パンツのウエスト部分にもループをつけたりして着脱しやすくなるような工夫を凝らしています。また、空調などの温度変化にも柔軟に対応できるガウンや、必需品を持ち運べるポーチもセットで制作。検査時、移動時、就寝時……どんな入院シーンも快適に過ごせるようにしました。
【2】車いすユーザーのこだわりカジュアル
昔からオシャレするのが大好きで、着るものに妥協したくないという鈴木さん。車いすユーザーにとって着脱がラクな服は、自分の好みではないということに悩んでいました。そこで、トレンドを効かせたカジュアルデザインでありつつも、「擦れる」「捲り上がる」「汚れる」といった車いすユーザー特有の悩みを解消できるポイントを至るところに取り入れました。
【3】低身長さんのカジュアルセットアップ
身長約110cmの伊勢坊さんの悩みは、「自分のサイズに合う服が売っていない」ということ。ときには子ども服を着たり、成人向けのTシャツやパンツを自分で切ってサイズ調整したりしていたそうです。ボタンの位置、全体のシルエットなどにこだわりつつ、伊勢坊さんの考える「着やすさ」をしっかり重視しました。日常のどんなシーンにも似合うよう工夫を凝らしています。
協力してくれた3人との話し合い中、誰かが「ボタンの着脱がしづらい」と言うと「わかる、私もそうです!」と共感する声が出てくるのが印象的でしたね。抱えている障がいや持病はそれぞれ違いますが、似たような悩みを感じている人は多いのかもしれません。また、「課題を持つ一人を起点にした服づくり」という実例は社内ではまだ多くなかったので、そういった意味でもお客さま視点でのものづくりができたのはいいチャレンジにつながったと感じています。
これから、ここから。
“すべての人”に向けてできることを。
――「Play fashion! for ALL」全体の感想やこれから取り組みたいことは?
これまでずっと、アダストリアでデータ分析の仕事に取り組んでいました。そんな私がここまで服づくりに深く関わったのは今回が人生で初めて。明確な想いがある、目指したいゴールもある。でも、服づくりについては初心者同然……そんな私を助けてくれたのは、「人とのつながり」でした。プロジェクトをかたちにするまでに、本当にたくさんの人が助けてくれました。関連部署のみなさんのもとへは何度も相談しに行きましたが、誰もが快く話を聞いてくれ、「どうすれば実現できるのか」「足りないものは何か」など、親身になって答えてくれたんです。参加してくれた3人のメンバーをはじめ、関わってくれた多くの人たちが私と同じ熱量を持ってこのプロジェクトに関わってくれたから、ここまで辿り着けたんだと思います。
でも今は、ようやく「最初の一歩」が踏み出せた状態。もちろん、まだまだ課題はあります。でも、やりたいこと、つくりたいもの、話を聞きたい人、まだまだたくさん思い浮かびます。こんな風に前を向いて次のチャレンジへと進んでいけるのは、「Play fashion! for ALL」を実現したい!という想いを共有できる仲間がたくさんできたからです。
今回の商品制作で得られた意見は、必ず、他の誰かの悩みを解消するアイデアになっているはず。こうした「インクルーシブ」な目線を取り入れた服づくりの機会を増やすことで、本当の意味で「すべての人が、ファッションをもっと楽しめる社会」を目指したいと考えています。
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▼「Play fashion! for ALL」特設ホームページ
https://playfashion-forall.jp/
▼「Play fashion! for ALL」関連プレスリリース
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