ハイヤー乗務員が「秘書検定」を受けるのはなぜか? 独自の社員教育に取り組む日本交通ハイヤーサービスの裏側
ハイヤーとは自動車で目的までお客様をお送りする個別輸送機関です。タクシーと似ていますが、タクシーが流し営業をするのに対して、ハイヤーは完全予約制となっている点が異なります。そのため様々なビジネスシーンで、VIP送迎に用いられることが多いサービスです。
国内最大手のハイヤーブランドである日本交通では、ハイヤー運行に従事するためには、約半年間にわたるハイヤー乗務員研修を要件としています。安全教育、接客教育はもちろんのこと、日常的な健康管理の徹底、車両点検・清掃活動(愛車デー)の実施によって、VIP送迎に相応しい乗務員の育成が行われます。
中でも日本交通独自の乗務員教育として行われているのが、ハイヤー乗務員による秘書検定の資格取得です。一見、運転業務と関係のなさそうな秘書検定に、なぜ全社的に取り組むのか、日本交通株式会社 ハイヤー部ハイヤー研修センター教官 川井高士がお話しします。
9割のハイヤー乗務員が秘書検定資格を取得!団体優秀賞の表彰も
日本交通は1928年に1台のハイヤー営業から創業しました。当時から経営方針として「誠実とサービス」を第一に掲げ、安全で丁寧な運転を目標としておりました。日本交通では2012年9月にハイヤー乗務員教育の専門機関として「ハイヤー研修センター」を発足させ、専任教官による乗務員教育制度を整備しています。現在の教育制度は、創業93年にわたるノウハウの集大成といえます。
その中で、乗務員教育の一環として2012年11月より秘書検定(秘書技能検定試験)一般受検への挑戦が始まりました。翌2013年6月には公益財団法人実務技能検定協会より認定を受けて、団体受検の開催がスタートしました。現在は、ハイヤー乗務員養成プログラムの中で秘書業務の勉強が組み込まれており、年3回(6月、11月、2月)社内で団体受検が開催され、毎回60名~100名の社員が参加しています。日本交通では、この秘書検定に合格しなければ、一人前のハイヤー乗務員になることはできません。
2021年6月現在、約1,500名いるハイヤー乗務員のうち、秘書検定3級が1,110名、2級が211名、準1級が4名と、約9割は資格保持者となっています。
このような日本交通の取り組みと成果は、おかげさまで同協会からも高く評価され、2013年度に「団体優秀賞」の表彰をいただいてから、直近となる2020年度まで毎年、連続8年で「団体優秀賞」の表彰をいただいています。
多岐にわたる乗務員研修の傍らで資格取得に取り組む
本採用までの間にハイヤー乗務員は現場研修を行っています。一人前のハイヤー乗務員となるためには、運転技能はもちろんのこと、地理の知識、法規や営業規則の習得、接客マナーの習得、万が一の際の対応など、多岐にわたります。秘書検定の勉強は各自がハイヤー乗務員としての研修の合間を見つけて行わなければなりません。また、組まれた出番によっては、年3回しかない団体受検のタイミングに合わないケースもあり、日程調整に苦労をしながら行われています。
ハイヤー乗務員をサポートする教官側も、知識の習得、レベルアップが欠かせません。検定協会が定期的に開催する講師側の勉強会への参加は欠かせません。秘書検定受検を通じてハイヤー乗務員には、単なる知識の暗記を求めるわけではありません。問いに対して何故そのような正答となるのか、ちゃんと理解し納得してもらえるように説明してあげる必要があるためです。
これから求められるスキルは、運転技術だけではない
日本交通のハイヤー乗務員は、なぜここまでの取り組みをするのでしょうか?
昨今のビジネス環境は大きく変化し、お客様の移動ニーズも多様化しています。ハイヤーにおいても、これまでの単なる移動手段、もしくはステイタスとしての乗り物からの進化が求められています。
ハイヤーの大きな特徴は、運行のカスタマイズ性です。完全予約制で、事前に運行の打ち合わせが行われますので、ご乗車のお客様一人ひとりに合わせてきめ細かな対応が可能です。今やハイヤーは走るプライベートオフィスとして、お客様の時間を作り出し、パフォーマンスを最大化するビジネスパートナーの役割を果たしています。安全で正確な運行は当たり前として、単なる移動手段だけではない、最高の快適さが得られるサービスコミュニケーションの場なのです。
そうなると、これからのハイヤー乗務員は第一線の秘書ドライバーでなければならない、と考えています。お客様の秘書と当日のスケジュールを打ち合わせしたり、状況に応じて臨機応変なスケジュール変更に対応したりと、お客様の秘書と円滑にコミュニケーションし、最適なハイヤー運行を行うには、秘書業務への理解は欠かせません。
何より、ご乗車のお客様がその場で何を求められているか理解し、最適解を導き出すにも、ドライバーとしての視点だけでなく、秘書的な視点も求められます。刻々と移り変わるビジネスシーンにおいて、同じお客様対応でも、ドライバー視点では正しくても秘書の立場から見たら必ずしも正解ではないケースもあり得ます。広い視野で総合的な判断ができる乗務員の存在が重要なのです。
人でなければ創り出せないサービスを求めて
ビジネスシーンに適したコミュニケーションスキルは、ハイヤーに移動以上の付加価値を与える重要な要素なのです。そしてこれは「最高峰のホスピタリティ」を追求する日本交通ハイヤー乗務員のプライドでもあります。
自動車の自動運転技術の進展に伴い、「ハイヤーやタクシーの乗務員は必要なくなるのではないか」という声が聞かれます。しかし日本交通では、決して乗務員の存在が無くなることはないと考えます。自動運転技術はお客様や乗務員の安全性を高めてくれますが、一方で「機械ではできない、人でなければ創り出すことの出来ないサービス」は依然として残り続け、一層求められていくはずです。
乗務員の業務は、運転からホスピタリティへシフトしていくことになるでしょう。その具体的な一歩が秘書検定です。今後は秘書検定取得者を増やすだけでなく、3級から2級へ、さらにその上へ、スキルアップに取り組んでいきたいと考えています。日本交通のハイヤーはこれからも「人」を磨き続けていくことで、豊かでハートウォーミングな社会の実現をお手伝いしていきます。
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