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QB HOUSEの社内カットスクール「ロジスカット」は、なぜ業界内で唯一無二に成り得たのか。~誕生10年の軌跡~

著者: キュービーネットホールディングス株式会社

1996年11月の1号店オープンのQB HOUSE。ヘアカット専門店というジャンルを生んだビジネスモデルに続き、2012年9月に誕生し10周年を迎えたQB HOUSEの社内カットスクール「ロジスカット」は卒業生を561名を輩出、規模的に業界内で唯一無二の存在になるまで拡大しました。技術がお家芸の日本において技術継承や後継者不足が問題化、人不足は今や業界問わず日本の大問題です。そこで、現社長の北野が推し進めた「ロジスカット」の10年の軌跡を広報担当の私、平山が関係者の声を織り交ぜながらお伝えします。



【「ロジスカット」ホームページ】 https://qb-recruit.com/logithcut/

海外ノウハウを逆輸入し、人材教育でもブルーオーシャンを

「10分1,000円ヘアカット専門店」という新たなジャンルを世に生み出したQB HOUSEは2007年に国内来店客数1,000万人を突破、そのビジネスモデルはブルーオーシャン戦略の成功事例として、ビジネス書や教材、テレビ番組などに広く取り上げられ、一目置かれる存在となりました。一方で、「技術は見て盗め、そして将来は独立を」という職人気質かつ師弟関係の強い理美容業界。手取り足取り後輩に教える風習はありません。教わっていないから教え方も分からない。教えてもらってないから成長に時間がかかる。負のスパイラルなわけです。


実際、理美容業界専門の転職サイトの情報などによると、若い人が業界を去る大きな原因のひとつは技術が上達する環境が整備されていないこと。そこが整備されればより強い組織に成り得る。その事実に現社長・北野は10年先、20年先を考え、業界の代表としてQBこそがそういった教育の場を作るべきであると考え、業界を去っていく「理容師」「美容師」のために絶対に人を育てるしくみを構築しようと決意します。


しかし、それまではQB HOUSEもカット技術を持った熟練スタッフのみを採用してきており、一見、QB HOUSEにもその教育の場をつくりあげるノウハウがないように見えたものの、北野はQBの海外事業にその勝算を見出していました。


実はこの広い地球の国と地域の中で、「理容師」「美容師」といった資格制度がある国は日本含め数か国のみ。資格制度のない海外において、いかに10分でヘアカットできる人材を育てあげるのかは永遠の課題であり、まさに事業の成功と表裏一体となっていたわけです。そうした人材教育ノウハウがQB HOUSEにはあり、それを日本へ逆輸入することで、日本においても人を育てあげることの出来る組織を目指そうとしたわけです。こうして2009年、人材教育版ブルーオーシャン戦略「ロジスカット計画」がスタートするのです。

説得に約2年。立ちはだかる社内の壁

しかし、この計画を本社ならびに現場のマネージャークラスに話すと、「技術だけ盗んで辞めてしまうだろう」「QBのオリジナルカット技法が流出してしまう」など否定的な意見が多く聞かれました。「そもそも誰が教えるのか?」そんな問題も出ていました。もちろん地域毎に〝教育係〟は存在していたものの、それはあくまでもカット技術を習得済のスタッフに、よりうまくなるようにコツなどを教える係であって、カット未経験者にゼロから教えるという係ではなかったのです。


議論が紛糾する一方で、年間40店舗ほど新規オープンをしていた当時の出店スピードから、いよいよ人の採用が追い付かなくなる厳しい現実も表面化していきます。働く人、お客様、いずれをとっても「人」が全ての理美容業。働く人もお客様もこの日本全体から確実に減少していく将来について、人口推移の予測資料を用いながら膝を突き合わせて根気よく説明し、理解を求めていきました。2年ほどを要したのち、ようやくその現実を真摯に受け入れたマネージャーから、「とりあえずやってみよう」「やってみないと分からない」という人が現れ始めます。


時を同じくして北野は1都3県の店舗をまわり接客や技術を自身の目で確かめ、教育指導者へのスカウト行脚に出ました。ただ、教えるだけではなく、最後まで諦めずに根気よく人と向き合い、人を育むことが出来る人物であるかどうかといった人間性を見極めるため、自ら動くという行動力に私は驚きました。最終的に、海外で人材育成に携わった者を校長として、現「FaSS」ブランドの旧ブランド名「Quatre Beaute(キャトルボーテ)」から1名、QB HOUSEから1名を社内カットスクールの教育指導者に招き、「ロジスカット計画」がついに動き出すことになります。

研修全額無料。異例のカットスクール「ロジスカット」誕生

教育指導者が集まったあとは、研修の全体像作りや教育カリキュラム作りがスタート。教える風習がない分、1日セミナーや1週間程の短期集中講座のカットスクールは業界に存在していましたが、当然授業料は有料で数万~数十万するものまで規模も授業料もバラバラ。ならばどうするか。そこは理美容業の常識を破りヘアカット専門店という新たなジャンルを生み出したQB HOUSE、ここでも理美容業界の常識を破ることとなります。正社員として雇用し給与を支給、研修は全額無料、通常2年はかかるという技術習得期間に対し6か月でのカットデビューを可能とし、卒業者は全員QB HOUSEで無期限雇用という、当時の業界ではありえないしくみを構築したのです。

当時、私はこの「ロジスカット」の研修に入っていただく「理容師」「美容師」を集める業務を担当していましたが、応募者の全員が全員、「正社員雇用され、入社日から社会保険加入で給与支給、研修無料で6か月後にはカットデビューって本当ですか」という質問をされました。理美容業界以外の方からするとあたりまえでピンと来ないかと思いますが、それほど理美容業界では異例中の異例だったわけです。


北野の構想から3年の月日をかけた後の2012年9月1日、ついにQBの社内カットスクール「ロジスカット プロフェッショナル スタイリスト スクール」(略称「ロジスカット」)が東京・渋谷でスタートします。「ロジスカットスクール」とせずに「ロジスカットプロフェッショナルスタイリストスクール」と名付けたのは、カットを教えればいいのではなく、プロとしての“人”を育てあげるという北野の熱い想いが込められています。念願の第1期生は7名、業界では「アシスタント」と呼ばれる、シャンプーや先輩の補助に入っていた見習いで、概ね3年以内で前職を退職した人たちでした。以後、2か月に1度に新たにカット未経験者を受け入れていくプログラムは、着々と実績を積んでいきました。


  「ロジスカット」研修風景

卒業生が次々と退職。スタートから3年、表面化した組織課題

2015年あたりになると、配属して1~2年のロジスカット卒業生が次々に退職するというゆゆしき事態が発生しました。「やっぱりか」という雰囲気も一部であったものの、原因を調査すべく、ロジスカット卒業生本人および本人を受け入れる既存店スタッフの双方から話を聞いていきました。すると、微妙な教えの違いであったり、その地域独自のルールが存在していたり、教育指導者であるトレーナーによるメンタル面のフォロー不足、そして多忙ゆえのコミュニケーションの不足といった会社として至らない点が次から次へと見えてきたのです。


店舗展開をしている企業ではよくあることとは思いますが、特に「人」が全ての理美容業界、全員のベクトルが同じ方向を向いたチームワークがなければ、店舗の運営はうまくまわっていきません。死活問題としてこの問題に真っ向から取組み、会社として改善を図っていきました。


まず、既にカット技術のある店長やベテランクラスといった受け入れる側にもロジスカットの教えを共有、さらに卒業生の受け入れ方などちょっとした心配りや常に目をかけていくという配慮を強化しました。また、トレーナーについては、技術ではなく配属後のメンタル面までも後押しできるよう店舗巡回を実施、現場に出た後に気づく自身の不足を補うためのフォローアップ研修がスタートしました。さらに、上司からの定期的な人事評価だけではなく、技術力を高めていくことで試験に合格すれば昇給を自らの力で実現できる「チャレンジ制度」までもつくりました。


また「ロジスカット」の取り組みを発端とする「人材教育強化」を全社レベルに広げ、勤怠状況に問題なければ研修と試験合格によって店長になることができる「店長育成制度」など、人事評価や昇格制度の見直しを全社レベルで実施し、サービスの質、人間力向上、働く環境の改善という3つの点であった課題を線に変え、改善をすすめていきました。


店長育成研修の修了試験の様子

評判が評判を生み、ついに「63歳の新入生」が

こうしたQB HOUSEグループの真剣な取組みに対し、ロジスカットの評判が研修生や卒業生を通じて人づてに広がり、一時は入社をお待ちいただくほど入社希望者は増えていったのです。具体的にその魅力についてロジスカット研修生に聞いたデータがこちら。



研修生の多くが好意的に捉えており、中にはトレーナーや会社に対して恩や感謝の想いが強く、当初、心配された「技術を習得してすぐに退職する」ということは問題になりませんでした。この結果はトレーナーはじめ、受け入れ先の現場総出でロジスカット卒業生を迎え入れた結果と言えるのではないでしょうか。


私の印象に強く残っているのは60歳で一般企業での定年を迎え、そこから美容専門学校に入学し卒業、63歳でロジスカットに入られた男性です。「63歳の新入生」として社内でも話題になりました。個人的にその方のチャレンジ意欲に圧倒されましたが、このように教わる側に諦めない気持ちがあれば、教える側にも諦めずに育てあげる「ロジスカット」にも自社ながら凄味を感じました。そんな「ロジスカット」の教育責任者である江藤校長のコメントを紹介させていただこうと思います。


講義中の江藤校長


10年を振り返れば、最も大変だったのは「ロジスカット」の最初のスタイルを生み出すところであり、第1期生を受け入れた際に「本当に6か月で教えきれるのか」と不安になったことを思い出します。研修生は十人十色、様々な人生を送られた方が入られますが、共通しているのは心がピュア。単に学ぶ環境に恵まれなかっただけなんです。なので、常に本人のことを思ってきちんと話し、意思を尊重し、自分は相手に対し結論を出さないことを心掛けていますね。また、研修生から学ばせていただくことも多く、それがあるからこそカリキュラムも我々もスキルアップ出来ているんです。これからの10年も、卒業生は1,000名を超えてくると思いますが、人を育てあげる場をつくり続けていきたいですし、そうしていかないといけないという使命感にかられています。

「ロジスカット」が社会に与えたもの

2022年9月、「ロジスカット」は誕生10周年。2012年9月の誕生から、2022年8月末までの卒業生の数は実に561名。彼らを「ロジスカット」がなければ理美容業界で活躍することが難しかった人たちと考えれば、まさに業界に金字塔を打ち立てたと言えるでしょう。それを証明するがごとく、第三者評価として受賞歴も多く、代表的な2つを紹介します。


【評価ポイント】

圧倒的な利便性の向上で、昼休みや仕事帰りに髪を切るという消費行動が生まれた。模倣にさらされたが、スタイリストの自社育成を始めとする活動の内部化と改善によって模倣困難性を高め、競争優位を維持。海外事業も成長し、収益貢献している。

 https://www.porterprize.org/pastwinner/2017/12/05170653.html


【評価ポイント】

ビジネスモデルに甘んじることなく、働く「人間中心の組織運営」にも注力し、その骨格となる技能面について教育のあり方を見直し、そのことが社員の定着はもとより採用にまで影響を与えている。このことは日本の人手不足への根本的な対策や組織のあり方の提言として大きなインパクトを持つ。

 https://kaikaproject.net/awards/history/2018_qbhd


10年前から真剣に未来を見据えていたQB HOUSE。そこから生まれた「ロジスカット」は業界唯一無二の存在となり、現在、全国に7拠点を構えるまでに成長しました。裏を返せば、それだけニーズがあり、必要とされているということが言えるのではないでしょうか。



「後輩に物事を教えない」という古めかしい業界であるだけでなく、結婚・出産もしくは転職などで一旦業界を離れると、「技術も固定客も持たない理美容師は不要」と言わんばかりに復帰が困難であった理美容業界。そうしたいわゆる“休眠理美容師”にいち早く光を当てて、戦力として業界に呼び戻すことができたことは、本人にとっても、QB HOUSEにとっても幸せなことと感じます。


理美容はどこの国にもありますが、私たちは常に変化し進化し、社会、世界と繋がっていきたいと考えており、さらには理美容師のみなさんが多様な価値観を吸収し、生涯現役で働きたいと言える業界に変えていきたいと考えています。


― QB HOUSEの進化は止まない。



【QBハウスの研修制度】ロジスカットスクールについて

~知られざる業界の裏情報やどのような人がロジスカットに通うのか、詳細をご紹介~

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【初出し】ついにQBハウススタイリストデビュー!ロジスカットの修了式に密着!

~社長・講師陣と卒業生との振り返り。カット以外に学べるものが沢山ありました~

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