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80代の著者さんもおられます。

世界でも宇宙でも「第一」に呼ばれる会社へ——中期経営計画とリブランディングを紐解き見えてくる、第一興業カッターの「あるべき姿」とは

著者: 第一カッター興業株式会社

創業以来、第一カッター興業株式会社(以下、DIC)は「切る」「はつる」「洗う」「剥がす」「削る」の5つの技術を駆使して老朽化した社会インフラの維持メンテナンスを行ってきました。古く傷んだ構造物を改修する仕事を、お化粧をする様子に例えて「インフラクレンジング」と呼んでいます。


2021年11月、DICは「中期経営計画(2022年6月期〜2024年6月期)」を発表しました。前中期経営計画(2019年6月期〜2021年6月期)の結果をもとに、より業界の発展に寄与できる会社になるべく、新しい舵取りを始めています。また、その方針をビジュアルで表現するために、ホームページリニューアルを含む「リブランディング・プロジェクト」を実施。時間をかけて、従業員有志と一緒に「DICのあるべき姿」を描きました。


今回の中経に込めたメッセージとは。リブランディングの狙いとは。DICのあるべき姿について、代表取締役社長 高橋正光さんに伺います。

「我々の仕事が社会に必要だ」と確信した3年間


——前中期経営企画の3年間を、高橋さんはどう評価されていますか?


改めて、「我々の仕事が社会に必要だ」と確信できた3年間でした。コロナ禍で多くの人が外出を避ける中でも、現場は止まることはなく、従業員は命懸けで仕事をしてくれました。社会の基盤を支える我々は、まさに「ソーシャルワーカー」なのだと強く実感したんです。

前中経では「人材採用・育成の強化・拡充」「営業展開の強化」「協力会社ネットワーク強化」「研究開発」の4つの戦略をたてました。この3年間ですべての数値計画を達成することができたことは、ひとえに従業員のおかげです。


——パンデミックの影響に負けない3年間を過ごされたんですね。特に大きな成果だと思うことはありますか?


ひとつは、インフラの種類ごとの売上構成比率を変え、コロナ禍においても売上高を伸ばすことができたことです。DICではクレンジングの対象となるインフラを「生活インフラ」、「輸送インフラ」、「産業インフラ」の3つに分けています。景気に左右されやすい「生活インフラ」の需要は落ち込みましたが、「輸送インフラ」と「産業インフラ」は増大しました。輸送インフラの増大には、コロナ禍でも高速道路の改修工事が続いたことが、産業インフラの増大には、火力発電所から原子力・水力発電所へのシフトが上手くいったことがプラスに働きました。



——社会情勢や時代の変化に合わせて、注力する領域を変えたことが功を奏した、と。


もう1つ、成果がでたのは研究開発の領域。特に阪神高速道路株式会社、飛島建設株式会社と3社で共同開発した「Hydro-Jet RD工法」を確立できたのは大きかったです。この工法では、交通に支障がでないかたちで、橋の桁と床板の接合部にあるコンクリートを部分的に取り除きます。従来、長期間にわたる交通規制を必要とした接合部の除去と床板を撤去・交換の作業を、半分の期間で可能にしたんです。現在この工法は、阪神高速の本線でも採用されています。


——利用者が助かる素晴らしい技術ですね。DICがそうした新しい技術を開発する際に意識していることはありますか?


トップダウンで開発をせず、現場で働くエンジニア(職人・技能労働者)や営業担当、開発担当の意見を積極的に取り入れることです。新しい技術は目の前のお客様に向き合うことによって生まれるもの。現場の声が欠かせません。最前線にいる従業員が率直に意見でき、新しいアイデアが生み出せるような文化・仕組み作りを意識しています。



——大きな会社になるほど現場の声を聞くことが難しくなりそうですが、DICでは意識的に取り組んでいる。現場の従業員を大切にする文化は、昔から根付いているのでしょうか。


昔から創業者たちは、従業員に対する「優しさ」を持っていました。当時の建築業界は、病気や怪我で現場に出れない従業員を解雇するのが当たり前。しかし、DICはその人に対して別の役割を任せたり、新しい仕事を習得するサポートをしたりしていたんです。また、まだ私がいち従業員として千葉営業所にいた頃、本社にいる役員が名前で呼びかけてくれたことがありました。「しっかりと人を見てくれる会社なんだ」と、嬉しくなったことを覚えています。


——DICらしさが感じられるエピソードですね。


インフラクレンジング事業の根幹を担うのは、どこまでいっても「人」です。現場で働く従業員を大切にする気持ちは持ち続けていたいと思っています。そういう意味で、あえてこの3年間の反省点をあげるとしたら「教育」が計画通りにできなかったことです。コロナ禍で、人を集めることができず、育成・研修に課題が残りました。その反省点を踏まえて、この度、新しい中経を策定したんです。


「世界一のエンジニア集団」を目指して


——今回の中期経営計画に込めたメッセージを教えてください。


中心にあるメッセージは、広がり続けるインフラクレンジング事業のニーズと減り続ける従業者数の 「ギャップを埋める」です。 我々の対峙している社会インフラの老朽化は年々進み、クレンジングのニーズは拡大しています。 令和元年、厚生労働省の調査によると、全国で73万キロメートル走っている水道管の19.1%、約14万キロメートル分が法廷耐用年数(40年)を過ぎているんです。1年間で直せる水道管はたったの約5000キロメートル。工事をしているうちに次々と耐用年数を過ぎる箇所が増え、修繕が追いついていません。


※管路の経年化率と更新率(厚生労働省)


それにも関わらず、業界ではたらく人の数は減り続けています。2030年には、今の3分の1にあたる100万人もの職人が離職するといわれている。高齢化して現場に出られない職人の数は増加し、その負担が現場にいく悪循環になっています。


このギャップを埋めて、DICは拡大する市場の波に乗りたい。そのために、採用・育成の強化、性別や国籍によらず多様な人が活躍できる環境整備、既存技術の自動化・可視化、新規事業立ち上げ等の施策により、人を大切にしながら持続可能な成長を実現していきたいと思います。


——やはり「人」に対する意識が強いんですね。中経の中身にも「世界一のエンジニア集団」という言葉があります。


今回の中経には長期的な展望を盛り込みました。そのひとつが「世界一のエンジニア集団」です。我々は業界最大手として日本でも屈指の技術を持っていると自負しています。その技術を活かし、世界に貢献できる会社になりたいと思っているんです。


使用している機械は海外企業とさほど変わりませんが、日本人ワーカーが日々培ってきた繊細で丁寧な感覚は負けていません。世界には、日本と同じように地震に負けない耐震補強を求めている国々があります。特に住宅街が密集し、騒音や振動を抑えた工事が求められる地域にとって、我々の繊細な技術は役に立つはずです。名実ともに世界一を狙いたい。「世界一のエンジニア集団」には、そんな意気込みが込められています。


——ホームページには「街の道路から宇宙まで」と書いてあります。世界一を目指し、さらに宇宙にも進出しようと思われているんでしょうか?


まだまだ先のことかもしれませんが、将来、月からでも依頼が来るような会社になりたいという夢があります。宇宙で撮影したような集合写真を掲載しているのも、そうした思いから。今はその一歩目として、北海道と大分県で計画されている「宇宙港」に携わりたいと考えています。空港のメンテナンスに使う技術が応用できるはず。そのくらい大きな理想を持ったほうが、ワクワクしながら働けるでしょう。

誇りをもって働ける「格好いい」会社に


——素敵な夢ですね。人を大切にしながら、世界一、宇宙一を目指すDICの今後が楽しみです。今回の中経を策定するのと同時にリブランディング・プロジェクトも敢行されましたね。会社の「見え方」を変えようと思ったきっかけはなんだったのでしょうか?


きっかけは5年前、社内で使っている「茶色い封筒」でした。ありきたりな封筒にDICのロゴが印刷されているのを見て「ダサいな」と感じたんです。当時、高齢化や人口減少の影響もあって採用に苦労していた時期でした。それなのに、人に興味を持ってもらうための努力を怠っていたことに気づいたんです。


もしかしたら、都合よく建設業の立ち位置に甘えていたのかもしれません。多少外見が悪くても建設業だからしょうがないよね、と。その諦めが建設業のイメージを落としてきた要因のひとつだと反省しました。


私は、DICの従業員の働く姿が格好いいことを知っています。今回のリブランディングの狙いは、その姿をしっかりと発信し、周りの人や家族に知ってもらうこと。そして、外から「格好いい人たち」と見られることで、中にいる私たちの言動をさらに磨いていくことです。


——トップダウンではなく、公募した社員さんと一緒にプロジェクトを進めたのはなぜですか?


従業員のみんなに、自分の意見が反映され会社が変わっていく実感を持ってもらいたかったんです。そうすれば会社が自分ごとになり、仕事のやりがいも大きくなります。また、会社の目指す姿を周りに伝える「伝道師」を増やす意図もありました。結果、中堅から新卒まで38名が名乗りをあげてくれました。


リブランディングの成果が現れるのはこれからです。期待しているのは、会社に与えられた計画を実行するだけではなく、何のために自分たちがいて、どう社会に役立っているのかを理解しながら働ける人が増えること。どうせ働くなら、自分たちの仕事を誰かに誇れるようになって欲しいと願っています。


平時も有事も社会インフラの安全を守り、安定した社会を支える


——3年後のDICはどんな会社になっているでしょうか。


お客さんから「ここ一番で頼れるのはDICだ」と言ってもらえる会社になりたいですね。また、我々と付き合っていることを、取引先が誇りに感じられるような関係性を築いていきたいです。そうして目の前の人たちを大切にすることを積み重ね、持続的な成長を実現し、社会に貢献できる範囲を増やしていきたいと思います。


また、震災の多いこの国で、地震や災害の復興に役立てる会社でありたいです。先の東日本大震災は、我々にとっても大きな出来事でした。改修しなければならない範囲が広く、少なからず放射能への不安もあったなか、協力会社さんと「国のために頑張ろう」と励まし合いながら働くことができたんです。


戦時中でもないのに、そうした気持ちが自然と湧き出てくることに驚きました。その時感じたものは、「お金や、やりがいのため」を通り越した使命感。常にその状態で働くのは難しいとしても、自分たちや会社のためだけではなく、社会や日本ひいては世界の役に立ちたいという志は持ち続けていたい。


リブランディング・プロジェクトでは、DICのあるべき姿を「日常も、いかなるときも 社会インフラの安全を守り、安定した社会を支える。」としました。そこに向かう挑戦は、まだ始まったばかりです。計画をひとつずつ実現していくことで、掲げた目標への思いはさらに強まるでしょう。3年後には、従業員が自信に満ちた顔で「3年前よりもいい会社になった」と誇れるような会社でありたいと思います。






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