10月から「新パパ育休」スタート!だけど男性の育休取得って進んでいるの?育休中のママたちが男性育休のリアルについて聞いてみた~育休取得したパパとその会社社長に聞いてわかった「育休の思い込み」~
2021年6月に「育児・介護休業法」が改正され、2022年10月からは新たな「産後パパ育休制度」が始まります。また今年6月に、東京都では「育休」を「仕事を休む期間」ではなく、「社会の宝である子供を育む期間」と考える社会のマインドチェンジに向けて「育休」の愛称を「育業」とする名称変更が発表されました(※2)。このような変化に伴い、社会における育休の認識も変わりつつあります。
しかしながら制度は整い育休を望む人は増えてきているものの、男性の育休取得は期待されている程進んでいないのが現状です(2020年の男性の育休取得率は12.65%、かつ大部分は1週間前後の短期)。
産・育休中メンバー限定のオンラインコミュニティ「MIRAIS」で活動中のメンバー約100名の中でも、夫婦で長期間育休を取得したのはたったの3名。男性の育休取得がまだ身近ではないことが伺えます。
一昔前よりは「男性育休」や「パパ育休」という言葉を耳にする機会が多くなったように感じますが、なぜ男性の育休取得はなかなか進まないのでしょうか?
周りの声を聞いてみると「育休を取りたいけれど会社に申請しづらい」「育休中の生活イメージが湧かない」など様々な迷いを抱きハードルの高さを感じている方が多いようです。
男性育休に対するアンコンシャスバイアス(無意識の偏見や思い込み)は何なのかを探るべく、育休コミュニティ「MIRAIS」に所属するママたちが「育休を取得したパパ」と「会社の社長」にインタビューを行ない両者の本音を深堀してきました。
■登場人物プロフィール
育休パパ / 山脇さん(写真右)
株式会社JALUX保険サービスに勤務、コールセンターを軸とした保険代理店のバックオフィス機能が担当業務。妻、娘との3人家族。育休取得は初めての子が産まれた2021年11月から。期間は3カ月半(月齢1ヶ月~5ヶ月の間)。育休取得時の役職はスーパーバイザー(係長、以下SVと略)。会社で初めての男性育休者。
妻は育休コミュニティ「MIRAIS」8期に所属。
社長/ 藤木さん(写真左)
株式会社JALUX保険サービス社長。2008年にJALUX保険サービス立ち上げに携わる。株式会社JALUXにて人事担当の後、現職。社会保険労務士の資格を有している。
育休コミュニティ「MIRAIS」メンバー(ママたち)
MIRAIS広報チームのメンバー。(8期生:2022年4月~9月に活動)
「Change the Mindset ~育休の「思い込み」をメディアを通して変えていこう~」をミッションに掲げて広報活動をしている。メンバー自身にも「男性育休って取りづらそう」「育休はママがとれるならそれでOK」という思い込みがあることに気づき、今回のインタビューを実施。男女問わず「有意義な育休」が取れることを目指したいと思っている。
「育休を取ろう」と決めて、妊娠3カ月で会社に報告。社長から言われた言葉は「1週間などの短期ではなく長期でとりなさい」
MIRAISメンバー:
私たちは、みんな育休取得中です。「母親」だからこそ「普通」に育休を取っているのですが、「父親」だとまだ「普通に育休をとる社会」ではないですよね。そんな中、山脇さんが育休を取りたいと思ったきっかけは何ですか?
山脇さん:
元々、育休は取りたいと漠然と思っていましたが、妻から「育休取らないの?」と言われたことから真剣に考えるようになりました。子どもの成長を近くで見ていたいという想いに加え、産後の女性の体は完全にリカバリーできていないと聞いていたことから、妻と子供のために自分が育休を取ることは必要だと考えました。
ーいつ頃、会社に育休を取りたいと伝えたのですか?
山脇さん:
どのタイミングで誰に話そうかということに対しては迷いがありました。最終的には、妻から「早いんじゃない」と言われたものの、妊娠3ヶ月の時点で社長をランチに誘って「実は・・」と話をしました。当時は複数のミッションを抱えていて、ギリギリに伝えると業務に支障が出そうだなと思ったためです。
ー山脇さんが育休を取りたいと言った時、社長はどう思いましたか?
藤木さん:
私個人としては、どんどん積極的に取ったらいいよという感覚だったので、応援したいと思っていました。会社の立場からすると、SVとしての重責を担う山脇さんの代わりの者が社内にいるかという危惧もありましたが、男性育休者向けの助成金等で国が積極的に利用推進していることもあって奨励する姿勢でした。しかし、月末に少しだけ有休を使って休むパターンが多い実態を見ていて、産後の妻を助けたり子どもと一緒にいる時間を大切にするという本来の育休の在り方に近づけるために、1~2週間ではなく1~2ヶ月程度の期間、育児に専念することが大事であると考えました。会社としてもバックアップすべきところだと思っていたので、山脇さんにもそれを伝えました。
MIRAISメンバー:
たしかに「男性育休をとった」と聞いてもほとんどの人が1~2週間だけというパターンは多いですよね。「本来の育休の在り方」について考えると、私たちママ目線から見ても長期間で取ってくれるとありがたいかもしれません。会社として、それを後押ししてくれるのは嬉しいですね。
男性育休を長期間でとるとなると、周りの同僚などに伝える時に躊躇してしまいそうですが、実際はどうだったのですか?
山脇さん:
女性と違い、男性が育休を取得した前例がないとなると、上司や周囲に言い辛いとは思いました。私の場合は相談先として身近に経営者の方がいたのでラッキーだと思います。社長なら「取ったらいいよ」と言ってくれると思っていたので。社員と経営側が近いのは良かったと思っています。
ー育休取得について周囲の反応はどうでしたか?
山脇さん:
社内では、女性の比率が高いので、とても好意的な反応でした。いつからいなくなるのかを心配されることもありましたが、「今しかないから取りなさい」というワーママ先輩の後押しはとても大きかったです。取引先の方も「ぜひ、素敵なことだから育休取得しててください、仕事はどうにかなりますよ」と背中を押してくれました。
藤木さん:
ネガティブな反応は全くなかったと思います。男性の育休取得者は初めてだったので、「男性も取っていいんだ」という認識の変化に繋がったと思います。また、短期間ではなく長期で育休を取ることへの抵抗感も薄れたのではないかと思っています。実際に、山脇さんが取得した後に、1年間の育休取得中の男性社員もいます。
仕事の面からすると、人をまとめるSVをやってもらっているので、そこの仕事(管理的役割)をどう埋めようかというのは社内でも話をして対応しました。
男性育休の認識を変えるには「先駆者」をつくるべき。初めての男性育休対応は部署を超えたフォロー体制で乗り切った
MIRAISメンバー:
私たちママ育休者も、育休に入る前はお休み中の仕事をどうしようか悩むことが多いです。最近は管理職になる女性も多いので、タイトルホルダーの休業は男女問わず多くなっていきそうですね。今回は会社としてどんな準備をされたのですか?
藤木さん:
まずは、SVとしての用務をどう補完していくかということで、誰がどうやるかというのを組織的に考えました。後は人材の確保です。管理用務については、他の社員や上司がフォローする形で。それ以外は派遣社員さんを雇って対応しました。
ー男性が育休を取得する場合、会社としてはいつ頃報告が必要ですか?
藤木さん:
会社として考えた場合、早め早めがありがたいです。特にタイトルホルダーの場合は、同じ部署の従業員にアドバイスや業務の進行管理をしているという問題があるので、フォロー体制を考えるにも、少しでも早い方がいいですね。
ー山脇さんが育休で不在の間、どのように業務を回しましたか?
藤木さん:
派遣社員を1名採用しました。SV用務については、他の社員や上司がフォローしていました。ちょうど繁忙期が重なったり、SV用務が大変だったこともあり、正直社内が少し混乱しました。しかし、全社で対応しようという方針の基、各組織から応援をお願いするなど、部署の垣根を超えての応援体制でした。
ー世の中の男性育休に対する認識を変えるにはどうしたらいいと思いますか?
藤木さん:
まずは、先駆者がいることだと思います。今回、山脇さんがしっかり取ってくれたことは会社にとっても良かったと思います。一方、会社の制度にも課題はあります。例えば、育休を取得することで昇格に必要な経験年数が足りずに昇格が少し遅れたり、退職金の算定期間に影響があったりなどのマイナスな側面があります。それに対して、育休を取得したとしてもキャリアを止めない、昇給や昇格に影響しないなどの一定の制度改革は必要だと思っています。これは、男女ともに一緒ですけれどね。
MIRAISメンバー:
「先駆者」ですね。最近では、初めてのことに挑戦する「男性育休者」に「ファーストペンギン賞」を贈る取り組みもあると聞いたことがあります。勇気がいる一歩ですが、一人ひとりの一歩が「男性育休が一般的になること」へ繋がるんですね。
「キャリアを止めない」ことは私たちママ育休者も常々考えています。育休コミュニティ「MIRAIS」に参加して、新たな学びを得たり、切磋琢磨する仲間をみつけて、今後につながるキャリアを描くようにしています。
藤木さん:
キャリアを止めないという点では、この「MIRAIS」の活動はとても面白いなと思っています。仕事には、一人で行う事務的な能力だけではなく、人間関係やコミュニケーション能力も求められるため、上下関係のないフラットな関係性の中で活動しているというのはよい取り組みだなと思いますね。
育休中は自己研鑽をしようと思っていたのに…目を向ける時間軸はそちらではなく娘だった。育休を通して見つけた価値観は『会社員』から『社会人』になること
MIRAISメンバー:
育休中は仕事から離れて家族との時間をたっぷりとれそうですが、家庭での過ごし方はいかがでしたか?
山脇さん:
日中も一緒にいられるので娘の成長を直に感じられたのは大きかったと思います。また、初めての子どもだったので、妻と二人で初めての事に対して、どうしようこうしようと相談しながら育児をできたのは、気持ち的にも時間的にもゆとりを持てました。とても有意義な時間でした。
ー育休中に自己研鑽をしたかったと伺いましたが、どうでしたか?
山脇さん:
育休中は自己啓発の勉強など時間が取れるだろうと思っていました。でも、実際に育休に入ってみるとなかなかその時間は取れず・・勉強をするより、娘の様子を見ていたかったんです。目を向ける時間軸がそちらではなかったということが育休を取得して分かりました。事前に思っていたのとは全然違う過ごし方になりました。ある意味子育てに24時間対応しないといけなかったので、自分の為に勉強などをやる余裕はなかったです。
ー育休をとって心境の変化はありましたか?
山脇さん:
自然と子ども中心の生活になりました。娘も1歳になり、親としても1歳になるので、夫婦の時間やそれぞれ自分の時間も確保できるようにしていきたいなとは思っています。
ー育休を取って、仕事をする上では、変化はありましたか?
山脇さん:
会社員であることが自分の軸でしたが、「MIRAIS」のような会社以外のコミュニティなど社会と接することが大切だと感じました。もっと広い意味で、『会社員』から『社会人』になりたいなと思っています。またワーママって本当にすごいなと思っていて、限られた時間の中での効率的な働き方は見ていてとても勉強になっています。それが結果として組織全体の効率化に繋がれば、会社にとってもいいステップが踏めるのではないかなと思っています。
ー職場復帰をした今、仕事に対する気持ちの変化はありましたか?
山脇さん:
家と会社という二つの場が日々の生活の中にあると思うのですが、図書館や児童館を調べたり、利用することで社会の見え方が変わったりすることがあると思います。地域のコミュニティやボランティアなどにも目を向けていくことで視野が広がるかなと思っています。
ー育休を終えて復職した山脇さんに変化はありましたか?
藤木さん:
山脇さんは、いい意味で変化はなかったです。業務面ではすぐにキャッチアップしていたようでしたので、キャリアを止めないという工夫をしていたのではないかと思います。子育てを通じ、より多角的に物事をとらえられるようになったのでしょうね。個人的には、一時期でも家庭に入って子育てをされていたということで、雰囲気的にいいお父さんになったなと感じています。家族で一緒に子育てをしたということで、人として成長するんだろうなというのは感じましたね。これが会社の中でのコミュニケーションにも繋がっていくんだろうなと思っています。
共通目標やベクトルを合わせて、育休中のチームワークも万全に。男性社員の育休取得でメリットも。「これからは男性社員も育休を取るべき。」
MIRAISメンバー:
山脇さんの「男性育休取得」で、人としての成長を感じられたとのことですが、会社として今後も男性育休の取得を進めていきたいですか?
藤木さん:
積極的に進めたいと考えています。男性社員に子どもが生まれるのであれば「取ったほうがいいよ」という話はしていますし、取るべきだと思っています。会社側の役割としては、社員一人ひとりと向き合うということが大切だと思っています。ベースとなるのは家庭生活。ワークライフバランスを応援していくのが会社の責務であると思っています。
ー会社として育休を取得させるメリットは何ですか?
藤木さん:
仕事の面でいうと属人化の防止ではないかと思ってます。仕事はチームで行うものなので、対応できる状況を作っておかないといけない。それから一人がいなくなることで、他の人が補完していくことになるので、チームワークの醸成もできると思っています。そこの二つが大きなメリットだと思っています。
ー女性の育休との違いはありますか?
藤木さん:
女性の育休との違いについては根本的な違いはないと思っています。育児は夫婦ともに介在するべきですし、仕事については男女の差は関係ないと考えていますので、育休取得については周囲の認識の差が大きいと思っています。
ー社員が育休中にフォローし合える「チーム作り」をするために心掛けていることは?
藤木さん:
共通目標やベクトルを合わせないといけないと思っています。会社としては利益の追及以外に違う目標もそれぞれあると思うので、それをしっかり持っていれば、一人欠けようが育休に入ろうが、方向性には問題ないと思います。業務が滞ることはどの会社も嫌がると思いますので、そこをどうクリアしていくかがチームワークの課題なのではないでしょうか。大事なのは、役割をきちんと明確化すること。思考や文化や習慣などは人によって違うから、そこを尊重し合うことがコミュニケーションの第一歩。目標さえ定まっていれば、そこに向かって個性を尊重しながら、同じ方向に向かっていけるのかなと思っています。
MIRAISメンバー:
ありがとうございました。「男性育休って取りづらそう」と思っていましたが、インタビューを通して会社にとってもメリットがあり、経営層や人事は育休の取得を進めたいという気持ちがあることもわかりました。社会の雰囲気も育休を推進する流れとなっているので、育休を「取得したい」と言えるパパが多くなると良いですね。
あと「育休はママがとれるならそれでOK」と思っていましたが、育休を取って育児をする権利はママだけでなくパパにもあるんですよね。これまではママだけがその権利を行使していたのかもしれませんね。(反省)
今日夫が帰ってきたら、「一緒に育休とる?」と聞いてみようと思います。
MIRAISとしても、夫婦ともに有意義な育休を過ごせるよう、今後も働くパパとママに向けた活動や情報発信を行っていきます!!
※ 1 育児・介護休業法の改正について(p24-31)
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000851662.pdf
※ 2 育休の愛称決定と応援企業/東京都(2022年7月)
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2022/06/29/09.html
<会社概要>
会社名:株式会社JALUX保険サービス
事業内容:損害保険・生命保険代理店業、フィナンシャル・コンサルティング業 他
代表者:代表取締役社長 藤木 英憲
設立:2008年10月23日
所在地:東京都品川区東品川2-5-5 ハーバーワンビル6F
URL :https://www.jaluxhs.com/
<育休コミュニティ「MIRAIS」について>
団体名 : 育休コミュニティ MIRAIS
代表者 : 栗林 真由美
発 足 : 2018年8月
URL :https://www.ikukyu-mirais.com/
2018年8月に代表 栗林真由美氏が「なんとなく過ごす育休」をなくしたいをミッションに立ち上げた産育休者のコミュニティ。オンラインを中心に、イベントや企業コラボレーションなどの活動を行い、未経験分野にチャレンジしたり、育休をともに過ごす仲間と交流したりと「有意義な育休を過ごす」場を提供してきました。これまでの参加者は延べ800名以上(2022年4月時点)。
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