「東京都の食料自給率は0%?!」 目指すのは東京で実現する“地産地消” ~ホテル ザ セレスティン東京芝の新たなる挑戦~ 朝食ビュッフェを舞台に“東京産野菜”を世界へ
東京都の食料自給率が0%※と言われていることをご存じですか。
しかしそれは、東京で食材が生産されていないということではありません。量は少なくて自給率に反映されないけれど、信念を持って東京で食材をつくり、届けている人たちがいます。
ホテル ザ セレスティン東京芝では、知る人ぞ知る「東京食材」に注目し、朝食ビュッフェで“東京産野菜”を提供する取り組みを今春開始しました。
きっかけは、“東京産野菜”を広めるために奔走する生産者と、東京で地産地消を叶えたいと常々検討を重ねていたホテルの総調理長との出会いから。なぜ、今、“東京産野菜”なのか。メニュー開発の裏側について、本プロジェクトの中心メンバーである元小出氏と峯岸氏の熱い想いをお届けします。
※農林水産省調べ。令和2年度カロリーベースの都道府県別食料自給率
野菜はやっぱり鮮度がいのち
「新鮮でおいしい“東京産野菜”を届けたい!」
(ホテル ザ セレスティン東京芝 総調理長 元小出 満 / 以下、元小出)
当ホテルは薩摩藩上屋敷の跡地に建ち、鹿児島にゆかりがあることから、鹿児島産の食材を使ったメニューの開発に積極的に取り組んできました。一方で、東京産の食材を取り入れたことはほとんどなかったんです。調達方法などに課題があり、難しいと思っていた。でも、長年「地産地消」をテーマにメニュー開発を進めていて、いつか「鹿児島」の食材と「東京」の食材をコラボさせたメニューを作りたいと。
そんな話をある時友人にしたところ、「東京産の野菜を販売する会社(コロット)と団体(東京NEO-FARMERS!)があるよ」と、コロットの峯岸さんを紹介されました。
正直なところ、峯岸さんと会ってお話するまでは、東京でこんなに多くの野菜が生産されているとは知りませんでした。実際に食べてみて、びっくり。個性的な野菜もあるし、味わいも力強い。「東京にこんなに新鮮でおいしい野菜があるのに、知らないのは本当にもったいない!早速、使ってみたい!」と、直観的に思いました。
また、価格が非常に良心的なのも決め手のひとつでした。まずはディナーのメニューとして取り入れてみたのが始まりです。
(左)メニュー開発者:元小出 満
(右)採れたての“東京産野菜”
東京は、日本全国あるいは世界各国の食材が手に入る場所。それでも価値を感じる「東京産野菜」
(株式会社corot代表取締役 峯岸 祐高 / 以下、峯岸)
これまで多くのシェフの方とお会いしてきましたが、元小出さんは本当に食材に対する想いの強い方で、「東京産野菜を使いたい」というより「使うんだ」という意志を最初から明確に持っておられました。実際に食べてみて、東京産野菜の良さを実感いただいたことで、「やりましょう!」と、着々と採用に向けて進んでいきました。
東京は、日本全国あるいは世界各国の食材が手に入る場所です。そのため、わざわざ東京産食材にこだわらずとも料理はできます。逆に、東京産野菜を使うことのほうが通常の野菜を仕入れるより、ずっと手間が掛かることだと思います。量の問題、デリバリーの問題等、まだまだハードルが高いのは事実です。
しかし元小出さんには、そのようなハードルを越えてでも「東京産野菜を絶対に取り入れたい」と言っていただきました。その言葉の中に、ただ「美味しい料理を作りたい」という想いだけではない、同じ価値観や方向性を共有している同志だと感じました。
(左)農薬を使わず栽培された川崎さんの人参
(中央)彩りがまるでブーケのような奥薗さんのケール
(右)甘味とホクホク感が味わえる永易さんのジャガイモ
新規参入、コロナ禍…厳しい環境の中でもひたむきに農業と向き合い
“東京産野菜”の生産を担う人たちと支援する人たち
(峯岸) 私がご一緒する農家の方のほとんどは、東京で新しく農業をはじめたいわゆる新規就農者と言われる方々です。東京で農業をはじめるのは、簡単なことではありません。日本の農家は、代々農業を営み、受け継がれる農地を持っておられる場合が多いのですが、新規就農者は、農地を貸してくださる土地の所有者を探すところから始まります。
広さ、場所はもちろんですが、農地を借りる際の条件や農地の土の状態もさまざまで、まったく手入れがされていない状態の土地を、一から耕すということもあります。希望の農地を見つけられたとしても、期限付きの契約であることも多く、将来的に同じ土地で農作物を育てていけるという保証もありません。
また農業は畑さえあればできるというものではなく、収穫した野菜を洗ったり、選別したり、出荷の準備をしたりする作業場のスペースも必要です。しかし新規就農者は、作業場を農地の近隣にもてないことも多くあります。畑で収穫した野菜を自宅に持ち帰り、台所で洗っているという話は、彼らからよく聞くエピソードのひとつです。
そのような厳しい環境の中でも、「農業」という職業に魅力を感じ、「東京産の野菜を、ひとりでも多くの人へ届けたい」そういった想いで、生産者はひたむきに農業と向き合い、日々野菜を作っています。
(左)前職はキャンプ場勤務。“食を通じて幸せを届けたい” はらぺこ農園の川崎さん
(中央)家具職人から新規就農 清水ご夫妻
(右)“環境”をキーワードに農業の世界へ 永易ファームの永易さん
(峯岸) そんな彼ら新規就農者の支援を行っているのが、一般社団法人東京農業会議という組織です。東京都の農地の情報を管理し、条件に合う土地を紹介するなど、新規就農者が農業を行う上での様々な支援を行っています。そして東京農業会議を通じて新規就農したメンバーたちが集うのが東京NEO-FARMERS!です。私は、その応援団の一員として、彼らが作った野菜の販路開拓やマルシェの企画など、売り先の営業部隊としての役割を担っているというわけです。
“東京産野菜”は、まだまだ認知されていません。「東京で採れる野菜が本当にあるの?」そんな質問を受けることが日常です。生産者や尽力してくださる多くの方のために、“東京産野菜”を流通させ、東京都食料自給率0%をたとえ1%にでもいいから引き上げたいという想いで日々活動しています。
青梅市で農業に新規で取り組まれている生産者と峯岸氏
―コロナ禍で大変な時に元小出さんと出会った
(峯岸) 生産者さんとは、20~30種の野菜を指定品目としており、ここに該当するものを野菜が収穫できたタイミングで収穫した分だけ出荷できる契約形態にしています。指定品目の中から、生産者が得意なものを選んで育て、収穫して当社に卸します。品目ごとに購入する価格も公開していて、指定品目以外でもチャレンジングな野菜を買い取る場合もあり、生産者さんにとってはメリットのある仕組みだと思います。
生産者から卸された野菜を販売する、私たちの取引先の多くは、店舗を構えるレストラン。コロナ禍になり、一回目の緊急事態宣言の時は売上がゼロだったこともありました。
当社は農家と契約して野菜を作ってもらっているので、売れないからといって買わないわけにはいきません。冷蔵庫は常に野菜で満杯、という状態がしばらく続きました。
その厳しい時期は「準備期間」としてとらえ、色々な方にお会いしたり、マルシェを実施したり、サンプルなどお渡しするなど認知を上げることに注力しました。元小出さんと出会ったのも、そんな時でした。
―峯岸さんと出会ったことで知った東京産野菜の課題
(元小出) 峯岸さんと話をしていく過程で、東京NEO-FARMERS!さんの取り組みや、新規就農者のことを知りました。販路を見つける厳しい現実があること、コロナ禍で行き場を失った野菜があるということも聞き、野菜を購入させていただくことで、僅かながらでも力になれたらと思ったんです。
(峯岸) レストランチェーンでサラダバーの取り組み実績がありますが、ホテルの朝食で大々的にコーナーを作っていただくというのは初めての試み。東京にお住まいの方はもちろん、日本中に東京産の野菜があるということを知っていただく、というのがまず第一の目的です。さらには、食に携わる職業の方に一人でも多く、東京で採れる食材があるというのを知っていただきたいと思います。
「食」は、世界とつながる一丁目一番地
東京産野菜を世界に向けて発信できる「ホテル朝食」
(峯岸) ホテルは海外からも毎日多くのゲストを迎え入れる場所ですので、世界に向けても発信が出来ると考えています。海外の方にも、日本には素晴らしい食材がたくさんあるということを知ってほしいのです。熊本のトマトや北海道のとうもろこし、じゃがいもだけではなく、ミニトマトやバターナッツカボチャ、カラー人参など、東京でも採れるものがたくさんあると知っていただくことが、非常に価値のある取り組みなのです。「食」は一丁目一番地。「食」を通して「東京」を感じていただくことの意味は、とても大きいと思っています。
(元小出) 峯岸さんにお話しいただいたように、東京産野菜を海外の方にアピールするには、当ホテルの朝食は絶好の舞台だと思います。朝食の利用人数は、毎月3,000~4,000人。そのうち約7割が海外の方なので、かなりの世界発信に貢献できるのではないかと考えています。
(左)“東京産野菜”を使ったサラダバー(朝食時提供)
(右)薩摩藩ゆかりのホテルならではのメニュー 鹿児島奄美大島の郷土料理 TOKYO鶏飯(朝食時提供)
いつでも好きな時に“東京産野菜”を
ホテルと販売者、そして生産者にとっての新たな挑戦
(元小出) 朝食だけでなく、ディナーでも東京産野菜を一部採用しています。また、今後は1階のラウンジにてランチやカフェタイムも、東京産野菜を取り入れたメニューの展開を検討しています。ホテルのレストランとして、どの時間帯でも東京産野菜をお召し上がりいただけるように、取り組みを広げていきたいと思っています。
(峯岸) 毎日提供される朝食の食材として採用されたわけですから、安定的に野菜を供給できなくてはなりません。今回の取り組みは、販売者である私にとっても、生産者にとっても大きな挑戦です。「もっと作らないと」という嬉しいプレッシャーを彼らとともに感じながら、今後も挑戦を続けたいと思っています。
ホテル ザ セレスティン東京芝の朝食は、お客様と生産者が繋がるひとつの場所であると同時に、新規就農者である彼らの“新たな挑戦の舞台”だとも言えるのです。
■今回お話を聞いた人
ホテル ザ セレスティン東京芝 総調理長 元小出 満
【プロフィール】
横浜市内のホテルやフレンチレストラン、都内ホテルなどを経て、2008年にセレスティンホテル(現:ホテル ザ セレスティン東京芝)へ入社。現在は、総調理長として料飲部門を統括している。「料理で人を幸せにしたい。」料理の道を志した頃から変わらない想いを胸に、伝統を大切にしながらも、常に新しい挑戦を続けている。
株式会社corot代表取締役 峯岸 祐高
【プロフィール】
”自然に寄り添う事業を通じて時代の流れを作り、関わる全てにいい影響を与える”こと。をミッションに掲げ、2010年9月に株式会社corotを設立。東京の新規就農者団体東京NEO-FARMERS!とともに、東京の地産地消に取り組んでいる。東京産野菜を農家から仕入れ、レストランや販売店などに販売するなど販路の開拓や東京産農産物のブランディング、営業活動に従事。古民家付き農園corot、地域内流通ころいち、イタリア料理ナチュール、駒沢大学ベジ山なども経営。
■”東京産野菜“が味わえる
ホテル ザ セレスティン東京芝 朝食のご案内
【提供時間】
平日 7:00〜10:00(最終入店9:30)
土日祝 7:00〜11:00(最終入店10:30)
【料金】
大人(中学生以上)3,100円(税込)
小学生 1,550円(税込)
未就学児 無料
※宿泊のお客様はもちろん、外来の方もご利用いただけます。
※時間帯によっては、混み合う場合がありお待ちいただく可能性があります。お時間に余裕をもってお越しください。
【提供場所】
ホテル ザ セレスティン東京芝
1F セレスティンダイニング ラ プルーズ東京
(写真)ビュッフェスタイルで多彩なメニューを提供するホテル ザ セレスティン東京芝の朝食
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