“企業は社会の公器” 創業者の想いを受け継ぎ、プロスポーツ施設を中心とした総合提案で地域に貢献 「創業60周年。感謝と挑戦を胸に」商品編(6)
パナソニック ホームズは2023年、創業60周年を迎えました。工業化住宅の商品開発者たちに受け継がれる熱い想いや、お客様の憧れを形にする設計者・営業担当者の取り組みを全6回でご紹介します。
パナソニック ホームズは、住宅建築以外にも、2,000棟※を超える医療・介護施設に加え、ホテルやスポーツ関連施設など、それら施設を利用するお客様の快適性、利便性、安全性などを考えた大型施設も数多く手がけてきました。
※2023年3月末時点の受注実績(累計)
商品編第6回目は、ラグビーリーグワンの埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、呼称 埼玉ワイルドナイツ)が埼玉県熊谷市への本拠地移転にあたり整備された施設「さくらオーバルフォート(SAKURA OVAL FORT)」の事業スキーム構築による地域貢献の取り組みについて、スキームの設計からクラブハウスのデザイン、関係者の調整を担ったパナソニック ホームズの細谷 啓祐(埼玉支社)のインタビューを通じて紹介します。
戦場に向かう野武士軍団のコンセプトをかたちに
2023年5月20日、連覇を狙う埼玉ワイルドナイツが国立競技場で行われたジャパンラグビー リーグワン(JAPAN RUGBY LEAGUE ONE)の決勝で接戦を繰り広げ、惜しくも準優勝でシーズンを終えました。その埼玉ワイルドナイツの本拠地は埼玉県熊谷市の県営熊谷スポーツ公園内に置かれています。パナソニック ホームズは、リーグワンのスタートに合わせ2021年8月に完成したクラブハウスを含む施設「さくらオーバルフォート」の建設だけでなく、一般社団法人埼玉県ラグビーフットボール協会を事業主体とした施設の運営管理の枠組みから、選手、地域、ファンのことを最大限に考えた施設のあり方までをトータルで企画しました。
「野武士軍団が、熊谷に砦をつくり、城を築いた訓練場で鍛錬し、戦場へ向かう!」。この言葉に、さくらオーバルフォートのコンセプトが凝縮されています。ラグビー専用の芝が敷かれたグラウンド(訓練場)を挟むように、「城」と位置付ける宿泊棟、「砦」であるクラブハウスが配置されています。ホームで開催される試合の日、フィフティーンがクラブハウスから百メートルほどしか離れていない「戦場」(熊谷ラグビー場)へと、ファンの声援に押されながら向かう姿は、戦いに挑む高揚感を掻き立てます。
さくらオーバルフォート(練習用グラウンドを挟み、左側に宿泊棟、右側にクラブハウス)
埼玉パナソニックワイルドナイツのクラブハウス外観
▶ご参考(プレスリリース):
「埼玉パナソニックワイルドナイツ」の新本拠地施設『さくらオーバルフォート』を竣工
地域貢献の想いの先に実現したクラブハウス「オレンジキューブ」
さくらオーバルフォートの構想にパナソニック ホームズが関わることになった経緯を語るには、13年ほど前に時計の針を戻さなければなりません。
パナソニック ホームズ埼玉支社では、様々な地域貢献活動に取り組んでいましたが、その一つに2007年より参画しているJリーグのプロサッカーチーム 大宮アルディージャへのスポンサー協賛がありました。当時、大宮アルディージャはクラブハウスを建設する構想を持っており、競争入札の結果、パナソニック ホームズ埼玉支社が受注を獲得することができました。評価されたポイントは「クラブハウスは家でありファミリーが集まる場所」というコンセプトを掲げ、住宅事業で開発してきた重量鉄骨ラーメン構造の部材や、そこで培ってきたノウハウを施設に転用したことです。
2012年12月に完成したクラブハウス「オレンジキューブ」の中央に配したロッカールームは選手同士がコミュニケーションを取りやすいようにロッカーを円形に配置し、吹き抜け構造で中央に光が当たるようにしました。建物外壁にはパナソニック ホームズで人気の高い光触媒外壁「キラテック」を使い、今なお新築時と同様、外壁は輝きを放っています。クラブハウスのバルコニーからは練習グラウンドを眺めることができ、サポーターと交流できるファンゾーンも設けました。家づくりで培った暮らしやすさのDNAがスポーツ施設でも生かされています。選手が快適に過ごすことができ、ファンとの交流も大切にした考え方はそれまでのプロスポーツのクラブハウスの概念を変えるものでした。
大宮アルディージャのクラブハウス(上:外観、下:ロッカールーム)
▶ご参考(プレスリリース):大宮アルディージャのクラブハウス『オレンジキューブ』を竣工
薄氷を踏む思いで実現したスキーム
話をラグビーに戻すと、2015年ラグビー界では2019年ラグビーW杯の日本誘致が決まり、大きな変化の時代を迎えようとしていました。熊谷ラグビー場は全国12の開催地の一つに選ばれ、2万4千人収容の”ワールドカップ”仕様に改修されました。埼玉県から「W杯後もラグビー場を継続的に活用していくためワイルドナイツの本拠地移転を働きかけてくれないだろうか」とパナソニック ホームズに打診があったのは6年ほど前のことでした。埼玉支社がそれまでに築いていた人脈をたどって当時のワイルドナイツ(現 埼玉ワイルドナイツ)の幹部に会い意向を尋ねたところ、ワイルドナイツ自身も新リーグの発足、プロ化を見据え、飛躍のきっかけとなる新たな場所を探していたことを知ります。「優れた施設を整備すれば、埼玉県、ワイルドナイツ双方にとってウインウインになる」。それは2019年3月の埼玉県、パナソニック、熊谷市の本拠地移転に向けた包括協定締結へとつながっていきます。
スキーム図(イメージ)
しかし、公共性が求められる県営の敷地に民間の施設を整備することはできないという規則が難題として立ちはだかりました。そこで細谷は、埼玉県ラグビーフットボール協会を施設のオーナーにするアイデアをひねり出します。そして、協会が事業主体となって地元金融機関から融資を受けて施設の建設費を負担します。グラウンドやクラブハウスを使うワイルドナイツやホテルなど入居する6つの運営事業者が最長35年の定期借家契約を結び、その賃貸料で収益を得るスキームを練り上げます。ただ、県の保有物に対し土地、建物を担保に取ることができないため金融機関が難色を示しました。細谷は、同協会と管理棟に併設されたカフェおよび宿泊棟施設の借主の間にパナソニック ホームズ不動産を立て、一括借上の仕組みを導入することで金融機関を説得します。「パナソニック ホームズにとっても初めての試みだったため、会社からのゴーサインを得るのも難しく、すべての関係者を合意に導くまではまさに薄氷を踏むような思いでした」と細谷は振り返ります。その後も何度となく協議を重ね、埼玉県より設置管理の許可をいただき、着工へと辿り着きました。
隣接するホテルのベランダから眺めた景色。奥がクラブハウス。その隣に熊谷ラグビー場
クラブハウスの横の銅像「覇者」は本拠地移転の際に、移設されたもの。
熊谷ラグビー場グラウンドから見える方角に設置され、選手を鼓舞している
プロスポーツチームの新たな施設像を提示
新たに建設されることになった施設は、これまでの国内ラグビーチームが持つ施設とは考え方も規模もスケールが異なり、「スポーツをする、観る」だけでなく「泊まる」「食べる」「買う」「集う」「学ぶ」ことができる、地域に開放された施設群です。新クラブハウス・練習場をはじめとする施設の建設はパナソニック ホームズが埼玉ラグビーフットボール協会から請け負うこととなり、新クラブハウス・練習場の名称については、公募の結果「さくらオーバルフォート」と名付けられました。
クラブハウスの設計に当たっては、埼玉ワイルドナイツのヘッドコーチであり、世界的名将でもあるロビー・ディーンズ氏の求めに応じ、ロビー氏自身がヘッドコーチも務めた母国ニュージーランドの名門ラグビーチーム、クルセイダーズなどのクラブハウスを見学に訪れ、直線30メートルの走路も備えたトレーニングルームはそのままに再現しています。1階のロッカールーム、ミーティングルーム、2階の食堂、チームルームなどすべての部屋から練習用グラウンドに出ることができます。
クラブハウスに隣接する屋内運動場
トレーニングルーム
隣接する屋内運動場は、この土地の特有の強風を受けないようにつくられ、2メートル近い身長の選手たちがラインアウトの練習もできるよう天井は8メートルの高さが確保されています。また、クラブハウスと宿泊棟の間に位置する練習用グラウンドは、本番と同じ環境で練習できるよう熊谷ラグビー場と同じ芝が使われています。
宿泊棟に入る「熊谷スポーツホテル パークウイング(PARK WING)」には、シングル、ツインのほかにボックスベッドの計204室があり、練習場に面した各部屋からはバルコニーが付いており、グラウンドを見渡すことができます。試合時に選手やスタッフが宿泊するのに使われるほか、熊谷スポーツ文化公園には陸上競技場なども備わっているため、スポーツ合宿で利用する小中学生などの利用も多くあると言います。大小のセミナールームは地域のグループの定例行事や企業の展示会などに利用され、ガラス張りの1階レストランからは選手たちの練習風景を間近に見ることができます。1階には埼玉ワイルドナイツのチームオフィシャルグッズショップも併設されています。
熊谷スポーツホテル パークウイング外観
地域住民、ファンに利用される施設を目指して
埼玉ワイルドナイツを支えるための施設はこれだけにとどまりません。その一つが、熊谷スポーツ文化公園に隣接して建つ整形外科・リハビリテーションの「ワイルドナイツ クリニック」です。普段は地域住民に開放されたクリニックとして近隣の方が通院していますが、埼玉ワイルドナイツと連携し、スポーツドクターが練習や試合中にけがをした選手の治療に当たります。以前、ワイルドナイツが群馬県太田市に本拠地を置いていた時は、けがをしてもチームドクターが遠距離にいるため通うのに時間がかかりましたが、ここではすぐに検査、診断が可能です。サントリーでラグビーをしていたキャリアを持ちクリニックの運営管理に携わるイービストレード株式会社の髙野 貴司氏は、「普段から埼玉ワイルドナイツのトレーナーさんが頻繁に来てコミュニケーションをとっているので、すぐに受け入れられる信頼関係ができています。選手は受傷してからリハビリをして復帰するまでのめどをすぐに知りたいので、近くにあるがゆえに迅速に対応、判断できることが喜ばれています」と話します。クリニックの横には薬局も併設されています。クリニックは当初、クラブハウスに隣接して整備することを考えていましたが、都市公園内にそうした施設を建てられないことがわかり、細谷が急きょ施設周辺の不動産所有者を当たり、土地の手当てを行いました。
ワイルドナイツ クリニック外観
クリニックの2階に設けられたリハビリスペース
クリニック内の表示にラグビー関連のイラストを使用し、楽しい雰囲気を演出
ファンや地域の人が交流できる場所として「ワイルドナイツ サイクルステーション&カフェ」も整備しました。カフェに置かれた3台の大型モニターでは埼玉ワイルドナイツの試合を流し、ファンの憩いの場となっているだけでなく、多くの市民も利用しています。練習後に選手がやってくることも多く、ヘッドコーチのロビー氏は常連とのこと。マネージャーの児玉 伸太郎氏は「選手が来店しているときに、明らかにファンだとわかるお客さんには、サインをもらえるように間に入り、色紙もプレゼントします。ただ飲食していただくだけでなく記憶に残る演出をしたいですね」と語ります。
カフェのマネージャー兼シェフの児玉 伸太郎氏
サイクルステーションは、パナソニックの電動自転車を扱う専門店としてオープンしました。併せてシェアサイクルサービスを展開しており、熊谷市内に約100台を常備しています。「熊谷駅と熊谷ラグビー場を結ぶバス便は運航頻度が多くないため、試合の日には100台分がすぐになくなります」と、サイクルステーション チーフエンジニアの武笠 貴太氏。現在、自転車を自由に乗り降りできるサイクルポートは熊谷市内に23カ所にまで増えています。15分88円という料金も相まって、市民の普段使いの利用も着実に増えつつあります。この「ワイルドナイツ サイクルステーション&カフェ」は、熊谷市内の有力企業であるゴトーグループが運営を行っており、細谷はその交渉も行いました。
ワイルドナイツ サイクルステーションで働く武笠 貴太氏(左)眞船 政宜氏(右)
地域貢献を第一に、事業サポートも含めて関わり続ける
細谷は実はパナソニックホームズの肩書とは別に埼玉県ラグビーフットボール協会施設課長の肩書も持っています。さくらオーバルフォートのオーナーである協会や埼玉県から「施設の完成後も運営が軌道に乗るまでは関わってほしい」との依頼があったからです。細谷は、月に1回、さくらオーバルフォートのテナントが集まるミーティングを開催し、そこで出てきた課題の調整やプロモーションにもあたっています。細谷は入社当初から、戸建住宅だけでなく、協業会社の賃貸住宅販売を行うなど幅広い事業を経験してきました。
「賃貸事業を経験する中で、オーナー様の建物を単に建てるだけではなく、事業サポートを通じていかに寄与できるかを考え、取り組んできました。また、私が所属する埼玉支社では地域があってこそ自分たちの存在意義があると考え、プロスポーツだけでなく埼玉県ママさんバレー協会のスポンサーなどを通じて様々なステークホルダーと信頼関係を構築してきました。今回のさくらオーバルフォートにおいても、こうした信頼関係を大切にしながら、官民連携事業としてより一層、周辺地域の街づくり活性化へとつなげていきたいと考えています」と今後の抱負を語りました。
パナソニック ホームズは、グループ会社も含め、地域でのお役立ちを目指して様々な地域貢献活動を行っています。建築のプロフェッショナルとして建築を建てた後も、メンテナンスや事業サポートを通じて、これからもお客様に寄り添い続けていきます。
▶”商品編” 第1号
▶”商品編” 第2号
▶“商品編” 第3号
▶“商品編” 第4号
▶“商品編” 第5号
次号は、新テーマ「空調設備による生活の質向上」に関する記事のご紹介を予定しています。(2023年6月23日公開予定)
◎パナソニック ホームズ株式会社について
パナソニック ホームズ 創業60周年特設サイト:https://homes.panasonic.com/60th/
商品ページ:https://homes.panasonic.com/
企業情報ページ:https://homes.panasonic.com/company/
公式Twitter:https://twitter.com/panasonic_homes
行動者ストーリー詳細へ
PR TIMES STORYトップへ